検査を毎回やれば良い管理なのか ── 池端副会長、中医協総会で
2026年度の診療報酬改定に向け、生活習慣病管理料の見直しなど「外来(その2)」の議論に入った厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「患者さんの状態や負担などを全体的に管理して、いかに良い生活習慣病管理をするかが我々の技術であり、それが私たちの醍醐味である」との認識を示し、「検査を毎回やったから良い管理をしているわけではない」と理解を求めた。
厚労省は10月17日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)総会の第621回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
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厚労省は同日の総会に「外来(その2)」と題する76ページの資料を提示。①かかりつけ医機能、②生活習慣病、③外来機能の分化の推進──の3項目について論点を示し、委員の意見を聴いた。
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6か月に1回も算定がない
生活習慣病の管理等について厚労省は、血液検査の頻度に関するデータを提示。「6か月に1回も算定がない患者も一定数を占めていた」などのデータを紹介した。
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その上で、厚労省は「生活習慣病に関連するガイドラインでは、定期的な検査の必要性や、合併症等を予防するための治療継続の重要性について言及されている」と指摘したほか、「生活習慣病管理料の6か月ごとの継続算定率は、医療機関ごとにばらつきがあった」などの課題を挙げた。
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論点では、「生活習慣病に関連するガイドライン等に沿った標準的な診療の推進」「質の高い生活習慣病管理を評価する観点」などを挙げている。
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個々の患者にテーラーメイドな治療を
質疑で、診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「生活習慣病のコントロールに難渋する患者さんもいる」とし、「個々の患者さんに対するテーラーメイドな治療選択が求められており、その結果として、受診や血液検査の実施頻度にバリエーションがあるのは当然」との認識を示した。
その上で、江澤委員は「他の医療機関の検査結果、あるいは特定健診や人間ドックの検査結果を活用して診療することもしばしばある。つまり、生活習慣病の管理という点で重要なのは、個々の患者さんの状況に応じた管理が可能となるように評価の在り方を柔軟にすることだ」と強調した。
次期改定に向けて江澤委員は「例えば、前回改定で導入された療養計画書の記載内容や頻度における個々の状況に応じた柔軟な対応や、文書の提供方法も必要な内容が含まれていれば各種手帳や電子的手段の活用を認めるなど、もっと緩和すべきであり、あるいは疾患管理に直接関係のない医師の署名を不要とすることなどを認めるべき」と主張した。
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江澤委員はまた、「生活習慣病管理料の中に生活習慣病とは関係のない『悪性腫瘍特異物質治療管理料』など多数の項目が含まれてしまっている点など、包括範囲の設定が広すぎる点も、1つの医療機関で患者さんを幅広い視点で管理することを阻害する要因になっているので、そうした点も手直しが必要である」との考えを示した。
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医療資源の投入量で適正化を
血液検査の頻度について、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「6カ月にわたって検査なしの患者も結構いる。あまりに頻回な検査は問題だが、療養計画書を4カ月ごとに交付する必要があるので、ガイドラインに沿って適切なタイミングで検査を実施することは、質の高い生活習慣病の管理を行う上で非常に重要な視点だ」と指摘した。
松本委員はまた、検査料等が包括される生活習慣病管理料(Ⅰ)について「受診期間が長く、検査があまり行われない患者ほど、管理料(Ⅰ)の算定が多い」とし、「管理料(Ⅰ)については、検査をはじめとする医療資源の投入量を少し詳細に分析して、実態に合った評価に適正化することを強く求める」と述べた。
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その上で、松本委員は「先ほど江澤委員から、人間ドックや健康診断の結果を活用しているという話もあったが」と切り出し、「それは患者自身、あるいは事業主、保険者が別途、費用を負担しており、点数を据え置くという理由にはならない」と反論。さらに、外来管理加算の廃止を主張し、「一部の(医療)機関で、適切な検査や療養計画書もなく、いわば薬を処方するだけの状況が強く疑われる」と苦言を呈した。
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質の高い生活習慣病管理を評価する
支払側からは、同様の発言が相次いだ。鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「生活習慣病対策についてガイドライン等で定期的な検査や治療継続の重要性が指摘されている一方、算定頻度や継続率、検査の実施頻度にばらつきがあることが判明している」と指摘した。
その上で、鳥潟委員は「患者さんの健康のためにも、適切な頻度での診療や検査が行われるようにしていく必要がある。コントロールできている患者さんに対する適切な受療頻度と、それに対応した評価という点も検討していく必要がある」と述べた。
佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は「血液検査を毎月のように行っている場合もあれば、6カ月間行っていない場合もあるので、適切な検査などの実施という点も含め、論点にあるとおり、質の高い生活習慣病管理を評価する方向で見直しすることが必要」と述べた。奥田好秀委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)も「検査頻度の実態を踏まえ、医療資源投入量に応じた評価とする方向で検討すべき」と賛同した。
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プロフェッショナルな「匠の技」で
こうした意見に江澤委員が反論。「個々の患者さんによって状態は全くそれぞれ異なっており、状態がいろいろ変化する中で、1人の患者さんについて固定的に受診間隔を決めていることは全くない」とし、「患者さんのために何ができるのかを考え、専門性を生かしてやっている。ここは、かかりつけ医の醍醐味にもあたる部分であって、まさにプロフェッショナルな『匠の技』とも言えるものだ」と述べた。
池端副会長は「生活習慣病の高血圧症・糖尿病・脂質異常症の3つが全て同じではない。糖尿病は頻繁に血液検査が必要になる可能性があるが、脂質異常は少し時間がある。高血圧症は全身状態等を含めて診察が非常に重要になる」と指摘。「検査をしたから良い管理をしているわけではない。疾患によって違う」と説明した。
外来の議論に続いて、同日の総会では「個別事項について(その1)」も議題に挙がり、後発医薬品・バイオ後続品の使用体制、服用薬剤調整支援等の評価について意見を交わした。池端副会長はポリファーマシー対策などについて意見を述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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生活習慣病管理料の包括範囲について
[池端幸彦副会長]
30ページ。「生活習慣病管理料(Ⅱ)に包括される主な医学管理料」の資料の丸2つ目に、「糖尿病を主病とした場合は、他疾患に対して在宅自己注射指導管理を行う場合であっても、在宅自己注射指導管理料を算定できない」とある。
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また、表の②によると、生活習慣病とは直接的な関係の乏しい疾患に関する医学管理料が全て併算定できない状況にある。これは、生活習慣病の本来の趣旨から考えて、少し変更の余地があるのではないか。
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生活習慣病の血液検査等について
生活習慣病に関する1号側の意見に対して述べる。まず37ページ。生活習慣病について血液検査回数等の兼ね合いが議論されたが、生活習慣病には高血圧、糖尿病、脂質代謝異常があり、これら3つが全て同じ土俵に上がっているわけではない。
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血液検査ということで言えば、やはり糖尿病が一番、頻繁に血液検査が必要になってくる可能性があって、脂質代謝異常はむしろ少し時間がある。数カ月、3カ月、4カ月ごとでも十分対応できる方が多い。高血圧症に関しては、むしろ血圧が高い、低い、あるいは全身状態等を含めて、その診察が非常に重要になる。
したがって、こういうことを含めて、生活習慣病管理料の中に入っているということ。「医療資源投入量」という話があったが、検査をしたから良い管理をしているというわけではない。しかも、それは疾患によって違っているということをご理解いただきたい。
健診データを使うことについても意見があった。療養計画書を立てて、それを3疾患に対して療養計画のもとに指導していくのが、この管理料の主な趣旨であり、これは医師の技術料である。検査をすることが療養管理計画書の作成ではない。例えば、特定健診のデータ、あるいは企業の健診データを持っていらっしゃる方がいる。そして、マイナ保険証で見られるようになってきている。そういうデータも使いながら管理するということが非常に重要なことであり、それが出来高で取れたか取れなかったかは関係がない。
患者さんの負担を考え、「健診データは先月に取りました」ということであれば、「じゃあ、今月はやめましょうか」ということになる。当院は生活習慣病管理料(Ⅱ)を取っている。管理料の(Ⅱ)は出来高算定で取れるので毎月取ってもいいのだが、患者さん負担を考えればそうではない。この患者さんにはどのくらいのペースで、ヘモグロビンA1cを調べたらいいのか、糖尿病の重症度にも関わるので、健診データなども取り寄せながら判断する。
そして、全体的に管理して、いかに良い生活習慣病管理をするかということが我々の技術であり、それが私たちの醍醐味であるというところがあって、それを患者さんに返して、アウトカムにつなげる。患者さん自身にも良い管理をしてもらう。決して検査を毎回やったから良い管理をしているわけではないということを、ぜひご理解いただきたいと思っている。そのための包括的な生活習慣病管理料ということで、(Ⅱ)だから、全部取れるから毎月取っている方もほとんどいないし、(Ⅰ)だから全く取っていない方もいないはずである。もちろん、多少の外れ値はあるかもしないが、そういう考えのもとでやっている。管理料というのは、そういう意味での医者の技術料だと理解していただきたい。
療養計画書を立てるのは面倒だが、データをもとに患者さんとお話しすると良い結果につながる。「今月は頑張って週3回20分、運動しましょう」と書いて渡す。次の診察時に「できましたか?」「先生、ごめんなさい。週2回しかできませんでした」と話す。そういう材料になるので、面倒だけど、非常にいいことがある。そういうことで一生懸命、外来をやっている。検査を毎回やったから良い管理ということではないことを理解してほしい。
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後発医薬品の使用促進等について
後発医薬品の使用促進については、現状はまだ不安定供給が続いている。むしろ悪化しているという声もあるぐらいの状況なので、そこをしっかり押さえながら、引き続き加算等々をしっかり付けていかなければいけないのではないか。
バイオ後続品については、先日の薬価専門部会でバイオAGの脅威というような意見が出ていたと思う。私の理解が足りないかもしれないが、今回の資料には言及がない。バイオ後続品を促進する上で、そういう課題があるのかどうか、事務局のお考えがあれば、お聞かせいただきたい。
【厚労省担当者の回答要旨】
脅威があるかどうかは、まだ1品目しかないので明確には言えないが、前回のプレゼンテーションの中では、バイオAGという先発品とは全く同一、小分けみたいなものがある。バイオシミラーという似ているもの。臨床的には同一ということで、臨床試験をしているが、その市場がほぼなくなってしまうので、新しいバイオシミラーが開発できないというようなこと。それから、バイオAGが存在していることによって、バイオシミラー自体が開発されない。そうすると、バイオ先行品、先発品自体がずっと市場を取っていくのではないかというような恐れなども指摘されていたので、今後、薬価専門部会等で慎重に議論していただいて、ご意見をいただこうと思っている。
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ポリファーマシー対策について
42ページにあるように、高齢者に関わる多剤服用の具体的問題等がある。医薬局の「高齢者医薬品適正使用検討会」で数年にわたり議論し、「高齢者の医薬品適正使用の指針」の「総論編」「各論編(療養環境別)」という冊子が出ている。
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この指標がまだ十分に伝わっていないように思う。この指針には、療養環境別にどういう対応をしたらポリファーマシーを改善できるかが詳しく出ているので、これに準拠して、この指針も使用しながらポリファーマシーを進めていただきたい。医療課として、これに準拠するということを書いていただけると、より進んでいくと思うので、もし可能であればお願いしたい。
2025年10月18日










