人的資源の投入量に関するデータに期待 ── 入院・外来調査の議論で井川副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

20240614_入院外来分科会

 入院・外来医療等の調査案について議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「身体的拘束を最小化するために人的資源の投入量がどのぐらい増えたのかが非常に重要」と指摘した上で、「今回の調査では人的資源の投入量も含めたようなデータが出ればいい」と期待を込めた。

 厚労省は6月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和6年度第1回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。

 令和6年度改定の答申書附帯意見を踏まえ、厚労省は同日の分科会に「令和6・7年度入院・外来医療等の調査(案)」を提示。今後のスケジュールや調査項目、内容などについて委員の意見を聴いた。
.

01スライド_P4抜粋1

.

入院料通則の改定に関する影響も

 調査項目は、地域包括医療病棟の新設や回復期リハビリ病棟入院料の見直しの影響など8項目で、一部を除き令和6・7年度の2か年で調査を実施。賃上げに関する調査は「別途、提出された賃金改善計画書等で把握する」としている。
.

02スライド_P4抜粋2

.

 井川副会長は、調査項目(1)(4)に関して意見を述べたほか、入院料通則の改定に言及。身体的拘束の取り組みの強化に関して人的資源の影響を考慮に入れるよう要望した。

 ほかの委員からも入院料通則の改定に関する発言があった。厚労省の担当者は「入院料に関わる調査の中で、それぞれ質問項目を盛り込んでいきたい」と説明した。井川副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 救急患者連携搬送料の新設について
.
 救急患者連携搬送料は急性期側に加算が付いているので、急性期医療に対する評価の見直しの影響として同搬送料の調査をするのは理解できる。
 ただ、受け入れ先として多いのは慢性期、あるいは地域包括ケア病棟ではないか。われわれが大阪府下で実施している緊急搬送の連携システムでは、急性期から転院搬送される患者の約1割が短期間で療養病棟にも移っているという実態がある。受け側の病院の多くは民間病院であるため、短時間で転院される中には、大きなリスクを抱えてしまう可能性がある。
 どういうリスクがあるかと言うと、まず患者情報が不明確であること。他病等の様々な情報が入ってこないこともある。また、経営的な問題もある。家族構成や、支払い能力の問題もある。そうした情報が全くわからないうちに転院していただかなければいけない。こうした大きな課題、リスクを含んでいる。
 しかし、こうした問題をクリアしない状況で受け入れる側に対してインセンティブが付いていない。慢性期側には付かないのが現状である。したがって、「急性期から何日目にどこに転院したのか」をしっかり把握する必要があると思っている。

.
■ リハビリ・栄養管理・口腔管理の取組の推進について
.
 急性期リハビリテーション加算とリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の評価においては、退院時のデータが非常に重要である。急性期から慢性期に転院したときに、非常に良いADLの状態で来ていただいているかどうか。それによって、われわれ慢性期側の在院日数も当然、減ってくるだろうと思うので、ここの評価をしなければいけない。退院時のデータをよく把握できるようにしていただきたい。
 また、土日のリハビリテーションがどの程度されているかについては、前回と同様、しっかりと取っていただきたい。

.
■ 回復期リハビリ病棟入院料の見直しの影響について
.
 回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準において、FIMの測定に関わる職員を対象としたFIMの測定に関する研修会の開催が義務づけられた。FIMの判定に正確性を求めることが一番の課題であったと思う。正確性の評価というのは非常に難しいが、何らかの形で取っていただかないと、病院機能評価との違いは一体、何だったのかという話になってしまう。難題であるとは思うが、ぜひ進めていただきたい。
.
■ 入院料通則の改定の影響について
.
 今回の附帯意見に入っていない項目がある。入院料の通則である。今改定では、①栄養管理体制の基準の明確化、②人生の最終段階における適切な意思決定支援の推進、③身体的拘束を最小化する取組の強化──の3要件が新たに加わった。
 この中で、③については、入院基本料の所定点数から1日につき40点を減算するという非常に大きなペナルティがある。 
 こうした厳しい通則によって、身体抑制をできるだけ減らしていこうという方向に結びつく。ただし、そこで重要になるのは人的な援助であろう。身体的拘束を最小化するために、人的資源の投入量がどのぐらい増えたのかが非常に重要になる。抑制を外そうとすれば、その患者さんを見守る人材を増やさなければならない。
 前回の改定は医療資源投入量を中心に、いろいろな改定がなされたが、今回の調査では、人的資源の投入量も含めたような何らかのデータが出ればいいと期待している。

.
【厚労省担当者の発言要旨(抜粋)】
 井川委員から救急患者連携搬送料に関して、ご指摘をいただいた。実際に算定をしている急性期の病院から、どのような病院に搬送されているのか。そして、できるだけ早く搬送することによって、逆に、どのような課題が生じているのかという点もしっかり把握させていただきたいと思っている。ご指摘を踏まえて、質問項目をまた検討したい。
 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算などに関して、土日のデータは前回の調査でも把握して、ご議論をいただいた。比較対象は十分にあるので、今回の体制加算を導入して、どのように変わったのかについてもしっかり見ていきたい。
 身体的拘束を含めた通則に関する調査については、入院料の通則であるので入院料に関わる調査の中で、それぞれ質問項目を盛り込んでいきたいと思っている。当然ながら、この通則に関しては、かなり影響があると思う。その実態に関しては丁寧に把握していくべきだと考えている。
 FIMに関しても、ご指摘をいただいている。その正確性、妥当性、そのような点に関しては、その検証を踏まえてどうなのかということ。非常に調査設計が難しい部分だとは思うが、いろいろとご助言をいただきながら検討していきたい。

.
この記事を印刷する この記事を印刷する


« »