出産費用の地域差、「分析が必要ではないか」 ── 出産育児一時金の議論で池端副会長

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池端幸彦副会長_2022年10月13日の医療保険部会

 出産育児一時金などの論点が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は出産費用の地域差について「どう平準化するかも含めて分析が必要ではないか」と指摘した。

 厚労省は10月13日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第155回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 今回の主なテーマは、前回に引き続き医療保険制度改革について。厚労省は同日の部会に「出産育児一時金について」「医療費適正化計画の見直しについて」と題する資料を提示。その中で主な論点を挙げ、委員の意見を聴いた。

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室料の差は理解できるが

 出産育児一時金については、厚労省の担当者が施設種別や費目、地域による出産費用の違いなどを説明した上で、「引上げを検討するに当たって、その額をどのように考えるか」との論点を挙げた。

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01_P24_【資料1-2】出産育児一時金について_2022年10月13日の医療保険部会

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 資料によると、出産費用には地域差があり、最も高い東京都は約56万円。これに対し、最も低い鳥取県は約36万円となっている。

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02_P10_【資料1-2】出産育児一時金について_2022年10月13日の医療保険部会

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 出産費用は東京と鳥取で約20万円の差があるが、「室料差額等を除く」としている。池端副会長は「都会と地方で室料に差があるのは理解できる」とした上で、「室料差額等を除いた出産費用について、このように差がある要因は何か、もう少し分析が必要ではないか」と指摘した。

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部局を越えて進めるべき

 医療費適正化計画の見直しについては、第3期(2018~2023年度)の進捗状況などを紹介した上で、第4期(2024~2029年度)に向けた論点を示した。

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03_P9_【資料1-3】医療費適正化計画の見直しについて_2022年10月13日の医療保険部会

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 主な項目は、①現行の目標、②新たな目標、③体制の構築──の三本柱。池端副会長はこのうち、①の「後発医薬品の使用促進」、③の「保険者・医療関係者との方向性の共有・連携」について意見を述べた。

 ①について池端副会長は「部局を越えて進めるべき」とし、③については「メンバーを増やせばいいのではなく、いろいろなステークホルダーを入れてしっかり議論すべき」と述べた。

■ 出産育児一時金について
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 資料1-2の10ページ(都道府県別の出産費用)によると、東京と鳥取では約20万円の差があるが、右下の注釈に「室料差額等を除く」とある。一般的に都会と地方で室料に差があるのは理解できるが、室料差額等を除いた出産費用について、このように差がある要因はいったい何なのか、もう少し分析が必要ではないか。この地域差をどう平準化するか、差額を整合化するかも含めて少し分析が必要ではないかと思う。
 出産費用の状況について、8ページに費目別の表が出ている。それぞれの都道府県ごとに、この費目の差が何かあるのか、ないのか。もし把握していれば、お聞かせいただきたい。もし今、お手元になければ、次回以降に可能であれば、お示しいただきたい。
 子育て世代の支援のために全世代で支えることには私も総論的には賛成したいと思うが、一方で、高齢者医療は保険者の支援で成り立っている制度なので、高齢者にも一定程度の負担を担っていただくためには、例えば、先ほど猪口委員がおっしゃったように、現役並みの所得を持っているところに限るなど、一定程度の所得以下の場合は、そこを外す、いわゆるセーフティネットを設けるなど、何らかのきめ細かい対応が必要ではないか。

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■ 医療費適正化計画について
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 後発医薬品の供給不足が非常に問題になっている。後発医薬品の使用促進は厳しい状況が続いている。後発医薬品の適正な価格が何か、原点に返って分析する必要がある。安定供給があっての普及だと思う。両輪で進めなければいけない。
 重複投与や多剤投与については、本日ここにいらっしゃる方々や患者さん、全ての方々が一致する項目であると思うので、さらに積極的に進めていく必要がある。
 「高齢者医薬品適正使用検討会」は私も委員の一員だが、かなり数年前から議論して非常に良い報告書やガイドラインを出している。しかし、それがまだ普及しているとは言えない状況である。せっかくいいものができているので、もっと普及できるように部局を越えて生活衛生局等とも連携し、さらに利用できるように、場合によっては中医協で議論していただいて診療報酬等にも組み込む。今でも少し組み込まれているが、そういうことを両輪で進めていくことが重要ではないかと思っている。
 医療費適正化計画の策定・実施主体である都道府県の取り組みについては、「保険者協議会への医療関係者の参画を促進し、都道府県・保険者・医療関係者が協力する場としてはどうか」との提案に私も賛成である。福井県では、医師会は医師国保という保険者として入っているが、医師会はあくまでもオブザーバーとしての参加である。これでは保険者の意見が中心になってしまう。せっかくこういう論点を挙げていただいたのだから、ただメンバーを増やせばいいのではなく、いろいろなステークホルダーを入れてしっかり議論し、県民のための良い医療、効率的な医療をどのように進めていくかという議論になるようなメンバー構成も必要ではないか。保険者協議会は根本的に何を議論するのかを広く伝えた上でメンバーを増やす等の指針を出していただくのがいいと思う。

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【厚労省保険局保険課・原田朋弘課長】
 ご指摘いただいた点については手元に資料がないので、資料の提出も含めて確認したい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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