「他の業界との協業を」 ── 介護人材の議論で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

2022年10月17日の介護保険部会

 介護人材の確保策などが議論になった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は「他の業界との協業をしなければ成り立たない現状がある。介護業界の中だけでやりくりするのは限界」と述べた。

 厚労省は10月17日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)の第99回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について」と題する資料を提示。「総合的な介護人材確保」や「経営の大規模化・協働化等」について論点を示し、委員の意見を聴いた。

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01_【資料3】介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について_20221017_介護保険部会.

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 「総合的な介護人材確保」については、「多様な人材の更なる参入に向けて、どのような方策が考えられるか」などの論点を挙げた。

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09_【資料3】介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について_20221017_介護保険部会.

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 「介護現場のタスクシェア・タスクシフティング」については、「介護助手の方が現場の担い手の一員として存分にその役割を果たしていただくために、その確保も含めて、どのような方策が考えられるか」との論点を挙げた。

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10_【資料3】介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について_20221017_介護保険部会.

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 「経営の大規模化・協働化等」については、「社会福祉連携推進法人制度の普及・活用に向けて、どのような方策が考えられるか」などの論点を挙げた。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 介護人材の確保策について
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 資料に「介護助手」という言葉が出ている。私どもが運営している介護施設では、介護福祉士資格の有無にかかわらず介護士として働いている。介護助手の仕事を分けるということだが、介護士として働いている職員を国家資格ある介護福祉士と、資格のない介護助手に分けるという理解でよろしいだろうか。これが1つ目の質問である。
 現状、資格ある介護福祉士と、資格のない介護士が混在して働いているが、人材不足でなかなか来ていただけない。介護士の高齢化がとても進んでおり、65歳になっても退職せずに、もう少しお願いしている状況である。
 そうした中で、介護福祉士はなかなか来てくれないので、「資格がなくてもいいです」「ヘルパー講座を受けるだけでもいいです」という募集を今まで何年もやっているが来てくれない。こういう状況なので、「介護助手」という名前で募集したとしても、特に地方などでは人材が集まらないのではないかという思いがある。
 実際、今までいろいろやってきた。仕事を分ける、資格も分ける、もっと言えば給与も分けるということをしたとしても、介護助手は果たして来るのか。元気高齢者の人やフリーランスの人などと言われているが、地方ではとてもそんな人に来ていただけない。有料ボランティアで来ていただける元気高齢者の方は、例えばお花の先生とか詩吟の先生とか、そういうボランティアならば来ていただけるが、掃除をしたり洗濯をしたりする人に来ていただくと言っても、そういう人たちはいない。それが現状ではないか。
 介護助手ということで、ある程度は集まるのではないかというお考えのようだが、現状はそうではない。なかなか難しいと思う。私どもはもう何年も前からそういう人たちを集めているが来ない。
 そこで私どもが実際にどうしたかと言うと、業者さんに頼るしかないということで、掃除専門の業者さんにお願いした。今まで廊下やロビーなど主に居室外だけの掃除だったのをルームキーパーに入っていただき、部屋の中も掃除してもらう、シーツ等も変えるベッドメイキングをしてもらうとか、洗濯の業者さんにお願いして、今まで施設内で洗濯していたものを外に出して洗濯したり。コストはかかるが、他の業界との協業をしていかなければもう成り立たないという現状がある。同じ介護業界の中だけでやりくりしていこうと思っても、もう限界ではないかと私は感じている。

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【厚労省老健局高齢者支援課・須藤明彦課長】
 介護職員について介護福祉士の資格がある人とない人に分けて、資格のない人を介護助手とするのかというご質問であった。介護職員をどうこうするというわけではなくて、これはあくまで今、職員の仕事において直接的な業務と間接的な業務・行為が混ざっているところを役割を分担して、介護職員の方々には資格がある人でもない人でもしっかりと直接的な介護に、より注力いただいて、それ以外の間接的な業務については介護助手という方に間接的なところを担っていただいて全体として質を上げるというような趣旨である。今、考えている限りでは、介護職員を資格のありなしで分けて、ということではないということをまず申し上げたい。
 その上で、人材が集まらないという観点について、そこは非常に重要な論点であるので、介護助手という名称も含めて前々からいろんなご指摘をいただいているが、その概念と名称も含めてしっかりと整理した上で、やはり元気高齢者の人、フリーランスというだけではなくて、少しの短い時間をちょっと有効に働きたいというニッチなニーズもあると思うので、そういったところも活用しながら、こういった介護助手の働き方というものをしっかり考えていきたい。 
 外部発注という手もしっかり使うべきではないかというご指摘もいただいた。まさにそのとおりだと思う。この介護助手で介護現場の生産性が全て解決するとは考えていない。いろいろなICT、テクノロジーの導入から、ご指摘のあった外部発注、また介護助手といった働き方、こういったものを複合的にさまざまに取り入れながら全体として生産性を上げていく。そうした総合的な取り組みがやはり重要になってくるのではないか。そのような思いで政策を推進していきたいと、そのように考えている。

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■ 経営の大規模化・協働化等について
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 経営の大規模化・協働化等の推進について質問したい。これは同一法人の大規模化・協業化を想定しているのか、あるいは他の社会福祉法人等との協業も考えているのだろうか。
 というのは、今まで他の社会福祉法人等との連携はあまりないので、他の社会福祉法人と一緒に協業したり大規模化したりすると言ってもなかなか難しいのではないか。もしそうだとすれば何か別に工夫が要ると思うが、どういう法人との協働を想定しているのだろうか。同一法人の中だけのことなのだろうか。

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【厚労省老健局高齢者支援課・須藤明彦課長】
 大規模化に関するご質問については、決して同一法人だけでどうこうではなくて、もちろん同一法人の中で大きくするというのも1つ、その効率性という観点では重要だと思う。 
 一方で、なかなかそれだけでは対処しきれないという部分もあるので、さまざまな法人間で、それぞれのいいところ、強いところというのもあると思う。そのような意味で、全体でケアの質の向上等にもつながる部分あると思うので、同一法人だけではなくて、さまざまな法人間での連携、こういったものも含めて、大規模化・協働化というものを考えていく必要があるのではないかと考えている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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