オンライン資格確認、「5割を超えれば一気に増える」 ── 改定案の議論で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2022年8月10日の中医協総会

 マイナンバーカードの保険証利用などを進める改定案を審議した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「医療DXの基盤整備のためにオンライン資格確認の普及率が非常に重要な命題」と強調した上で、「5割を超えれば一気に進む。100%の普及を目指すため、みんなで頑張っていきたい」と期待を込めた。

 厚労省は8月10日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第527回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に、看護の処遇改善とオンライン資格確認に関する「個別改定項目」を提示。いわゆる「短冊」について各側の意見を聴いた上で附帯意見案や答申書案などについて了承を得た。答申書は同日、小塩隆士会長から佐藤英道厚生労働副大臣に手渡された。
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答申書手交_2022年8月10日の中医協総会
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 答申に先立つ議論では、複数の支払側委員から「10月からの施行は時期尚早」との声があった。池端副会長は「オンライン資格確認が医療DXの基盤となる。この基盤整備のために1日でも早く普及させる。そのために診療側も患者側も保険者側も行政側も皆さんが痛み分けして普及させよう」と呼び掛けた。
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2022年8月10日の中医協総会

【池端副会長の発言要旨】
 皆さんのご意見を踏まえた上で意見を述べたい。まず冒頭で長島委員がおっしゃったことについては私も同感である。全て賛成させていただく。  
 その上で、資料「総-8-4」の4ページ(オンライン資格確認のメリット)について述べる。1号側、2号側からオンライン資格確認のメリットについて意見があった。資料にあるとおり、患者側、医療機関・薬局側、保険者側、そして行政側等々にもメリットがある。
 ただ、患者代表の方々が「なかなかそのメリットを感じない」とおっしゃったが、実は医療機関も同じである。メリットを感じるという意見もあるが、医療機関側もまだメリットを十分に感じていない。なぜか。
 普及が遅れているからである。多くの委員が賛成しているように、オンライン資格確認は医療DXの基盤である。この一丁目一番地の基盤整備において、オンライン資格確認の普及率が全てだと思う。普及率が少なくとも8割、9割まで上がっていくことによって、患者側も医療機関側も保険者側もそれぞれが大きなメリットを感じ、そして、さらにいろいろなデータを入れ込むことによって広がっていく。 
 したがって、現時点ではオンライン資格確認の普及率をいかに上げるが非常に重要な命題であり、それは待ったなしではないだろうか。10月から始めるのは時期尚早との意見もあったが、来年4月の原則義務化まで半年間も遅らせることにどれだけのメリットがあるのか、私は非常に疑問に感じる。
 どちらが先か、鶏が先か卵が先かではなくて、いかに基盤を整備するか。患者さんの普及も医療機関側の普及も同時にやる体制が必要であると思う。そのために今回、補助金や診療報酬の見直しが提案されているのだと思う。
 資料「総-8-3」(医療情報化支援基金による医療機関・薬局への補助の見直し)にあるように、まず補助金を大きく見直していただいた。病院の持ち出しが多いことが統計的に出ているので、そこをきちんと把握して上限を上げていただいたことに対し、病院代表として感謝を申し上げたい。特に中小病院は非常に困っている面があるので、一定の普及に大きく貢献していくのではないか。 
 では、診療報酬でどのように普及を進めていくか。眞鍋課長からご説明があった。これまでの「電子的保健医療情報活用加算」から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」に変わる。まずは普及率を上げるために整備体制をつくる。そのための加算である。患者さんにとっても利用するメリットがある。少しでも点数が下がる、負担が減ることのメリットをまず感じていただこうという立て付けである。診療側としても賛成したい。 
 療担規則については、先ほど長島委員がおっしゃった。私は、原則義務化を療担規則に入れることに反対するものではないが、前回の総会で申し上げたように療担規則というのは医療機関にとって相当重い法律である。法律違反は即、営業停止になるということを考えなければいけないことになるので慎重な対応をしていただきたい。
 義務化の例外規定についても意見があった。現在、1人診療所が非常に高齢化している。紙レセプトしかないところに、いきなりオンライン資格確認システムを全て普及するようにというのは非常に難しいところがあるので、まずここを外すことに対しては、ご理解いただきたいと思う。やがて普及率が上がってくれば、さらにその方々にも普及していただく方策がいろいろ見えてくると思うので、そういう意味で、ご理解をいただきたい。
 オンライン資格確認が医療DXの基盤となる。この基盤整備のために1日でも早く普及させる。そのために診療側も患者側も保険者側も行政側も皆さんが痛み分けして、ちょっと我慢して、メリットはあまり感じないかもしれないが我慢して普及していこう。そのために一刻を争うので、この10月から始めることに対して私は賛成したい。まず始めることだ。そして続けること。続けることによって、どんどん普及して、一定の線、例えば5割を超えれば一気に進む。大きく普及させて100%普及を目指すとき、5割という線を超えれば一気に増えていくことはよく経験する。まずそこまでもっていくことをみんなで頑張っていきたい。そんな気がしているので意見として述べた。よろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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