オンライン資格確認、「痛み分けをしながら進める」 ── 医療保険部会で池端副会長

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池端幸彦副会長_2022年5月25日の医療保険部会

 オンライン資格確認等システムの普及に向けた課題などが示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「周回遅れに近い日本のDX化をより促進するという意味では、私ども医療従事者も含めて国民、そして提供者側、支払側も含めて、それぞれのステークホルダーが少しずつ痛み分けをしながら進めていかなければいけない」と述べた。

 厚労省は5月25日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第151回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は同部会に、オンライン資格確認の「更なる対策」を提示。「令和5年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入について原則として義務化する」など3項目を挙げた。

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P17【資料1】オンライン資格確認等システムについて_2022年5月25日の医療保険部会_ページ_18

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 出席した委員からは、所属する各立場からさまざまな意見が出たが、池端副会長は「メリットが何かを言い出すと、今は大きくないかもしれないが、将来のメリットを考えれば非常に大きいことをみんなが共有して、それぞれ痛み分けをして進めていく事業ではないか」と述べた。

 池端副会長はこのほか、電子カルテの標準化に向けた課題や後発医薬品の供給不足問題について見解を述べた。詳しくは以下のとおり。

■ オンライン資格確認等システムについて
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 資料12ページに「オンライン資格確認推進協議会」で提起された課題が示されている。この中で、解決できそうなものとして、例えば「イニシャルコストが補助金上限額を超える場合がある」については、私自身も県の医師会を通じて確認している。また、「資格確認端末やそのほか必要な機材が入手できない」との課題について現状、不足していることも聞いている。
 これについて、事務局の皆さんがどこまで把握しているか、そして特に端末の入手は今はもう十分可能な状況になっているのか質問したい。
 次の13ページ(システム事業者導入促進協議会の開催)にあるように、揃える側と事業者側ということで事業者側も協議会を開催して大手20社を中心にこういう協議会をされているということだが、やはり端末のイニシャルコストが高い。この協議会に入っていないような小規模な事業者側からもそういう請求があるということを、各医療機関側でも確認している。そういうところへの働きかけで、本当にしっかりできるような対応が必要ではないかと考える。
 一方、17ページにオンライン資格確認の「更なる対策」が示されている。これら3つの方針は、スピードアップするためには義務化も含めて、やむを得ない対応ではないかという気もしている。IT化、DX化について、日本は周回遅れということは、ここにいらっしゃる皆さんも十分に感じておられると思う。特に、このコロナ禍において、例えばワクチンの接種対応、あるいは補助金の交付等も含めて、DX化がもう少し進んでいれば、いろいろなことがもう少しよりよく俊敏にできたのではないかと思う。
 そのため、周回遅れに近い日本のDX化をより促進するという意味では、私ども医療従事者も含めて国民、そして提供者側、支払側も含めて、それぞれのステークホルダーが少しずつ痛み分けをしながら進めていかなければいけないという気がしている。そういう意味では、今、メリットが何かということを言い出すと、なかなかメリットが見えないというところもあるかと思うが、今のメリットではなくて、近い将来のメリットを考えると非常に大きなものがあるということをみんなが共有して、そして、みんながそれぞれ痛み分けをして進めていく事業ではないかという気がしている。前向きに進めていくことについては大賛成である。 
 先ほど委員から、令和5年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入について原則として義務化するのであれば、そのイニシャルコストぐらいは全額補助を出してもいいのではないかという力強いご支援もいただいた。私もぜひそういう形で、できることは全てやっていくという体制でスピードアップしていただければと思っている。義務化について、私は最終的には必要であると思っている。そうしないと、なかなか進まない。100%にもっていけないと思う。 
 一方で、マイナンバーカードは任意になっている。ここを義務化するのは非常にハードルが高いかもしれないが、9割以上の方々がマイナンバーカードを持ちたいと思うような環境づくりを合わせてやっていかないと、端末だけを義務化してもなかなか進まないだろう。各委員がおっしゃったような取り組みをしながら、みんなで考えていければいいと思っている。

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【厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長】
 イニシャルコストについて、ご指摘を頂戴した。資料1の35ページに、現行の医療情報化支援基金による補助制度の概要を記載している。補助上限額を設けて、それに対して2分の1、4分の3など、そうした割合で補助している。この補助上限額は、現在どういったかたちで行われているか、そうした状況も踏まえながら設定したものである。 
 個別にそうしたものを超える事例があるというお声は、私どもとしても、三師会から現場の情報を収集していただいて、個別に情報を頂戴しているところである。 
 私どもとして、個別の価格設定の善し悪しまで何か言うとか、そういう権限、立場にはないわけであるが、一方で、そうした情報を把握した場合に、そうした説明、価格について、事業者側がきちんと説明責任を果たせるような状況になっているか、そういうことについては個別に注意喚起をさせていただく、そうした対応を行っている。 
 実際、個々の医療機関、薬局とシステム事業者とのやりとりの中では、いわゆるオンライン資格確認の導入に係る経費だけなのか、あるいは、それ以外の部分も含めたものなのかも含めて、個別の事例はやはり状況がさまざまだと思う。私どもとして、こうした医療機関、薬局とシステム事業者との間の契約について、価格設定を含めて、より透明なかたちで行われるように引き続き支援してまいりたい。
 また、機器についてもご指摘があった。これは資料13ページ。資格確認端末・ルータの不足については、これまでも経産省あるいは関係団体と連携しながら供給事業者への協力依頼を行っている。厚労省のホームページ上において、それぞれの供給事業者ごとに供給の見通しを公表することで、システム事業者と供給事業者、メーカーとのマッチングを支援したり、あるいは新規供給事業者の開拓等にも取り組んでいる。
 私どもとしては、全体として資格確認端末・ルータについて、一定の供給がある状況と思っているが、一方でシステム事業者によっては、特定の社の端末・ルータを扱っておられるところがあり、そうした事業者の中には、供給が滞っていることがネックになっているという状況もあるやに承知している。 
 私どもとしては、全体として、まずそういう供給のキャパシティが確保されるように取り組むとともに、ほかの事業者も含めて、システム事業者にもご紹介をしながら取り組んでいる状況である。

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■ 全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大について
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 電子カルテを導入されていないことに対して、今後は普及して100%を目指すということだと思うが、ここで質問したい。既にご承知の通り、電子カルテはいろいろなメーカーがいろいろな電子カルテを既に導入されていて、そこを標準化するのはなかなか大変である。 
 今回、「HL7FHIR」の規格で標準化しようということだが、一方で、これから導入する電子カルテというものは、もっと共有しやすい電子カルテが求められる。また、各病院や診療所では診療報酬改定のたびに数年に1回のバージョンアップに相当な金額のコストを要求される。いったんそのメーカーから導入すると、変な言い方をすれば、もう言いなりにどんどんお支払いしながらバージョンアップしていくしかない現状がある。 
 今後、特に小規模の診療所や中小病院で導入していく場合には、企業とも十分に話をしながら、より効率的で費用負担も少ない、そして利便性があり、共有しやすい電子カルテの普及に向けてアプローチしていただければいいと思う。この点について、方向性や考えなどがあれば、お聞かせいただきたい。

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【厚労省医政局医療情報技術推進室・田中彰子室長】
 まさに、さまざまなメーカーがあるのが大きな課題ということ。それから、今まで電子カルテを導入していない医療機関が今後、より安価に、そしてランニングコストを少なくして電子カルテが導入できる仕組みをつくることは非常に重要だと認識している。
 こちらの課題についてはベンダーとも、お話をさせていただいている。その費用をいかに下げられるか、いろいろな手段を国も考えていくということで今、取り組みを進めているところである。 
 電子カルテが普及しないと、まさにこの医療情報の基盤をつくっても医療情報が共有されないということであるので、引き続き、一生懸命、進めていきたいと思っている。

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■ 後発医薬品の供給不足問題について
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 私も現場の医療を預かる者として非常に危惧している。現状では、後発の医薬品だけではなくて、そこで先発品に切り替えると、かなり汎用されている有用で重要な薬が次々と不足問題を起こしている。 
 一説によると、戻るには数年かかるのではないかとも聞いている。それが少しでも改善できるような取り組みをしていただきたいと思う。現状について、事務局で何か把握されていることがあれば教えていただきたい。

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【厚労省保険局医療課・紀平哲也薬剤管理官】
 ご指摘いただいたとおり、後発医薬品については、現状、供給がかなり逼迫している状況にあり、それから先発医薬品も含めて供給について各企業で調整されていると伺っている。 
 医政局経済課でも、今後の供給の安定化に向けて、いろいろな取り組みについて、業界とも話を続けていると承知している。今後とも、こういった医薬品の供給状況については適宜、情報をお出しできるところは、お知らせできるようにしていきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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