基本方針の継続的な見直しを ── 田中常任理事、介護給付費分科会で
令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が示された厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は、「介護崩壊は地域コミュニティの消滅を加速させる要因となる。介護はなくてはならないインフラ。ますます他産業と差が開くことがないよう基本方針の継続的な見直しを強く要求する」と述べた。
厚労省は12月19日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・東大大学院法学政治学研究科教授)の第251回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
これまでの議論を踏まえ、厚労省は同日の分科会に「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」を示した。委員からは「今回の取りまとめに異論はない」「加算の拡充に感謝を申し上げる」など賛同する意見が相次いだ。
田辺分科会長は「審議報告の取扱いについては今後のスケジュールも踏まえ、私と事務局とで相談させていただき、修文、その他必要な対応を行った上で皆さまにご報告するとともに、厚生労働省のホームページに速やかに公表することとしたい」と諮り、了承された。
田中常任理事は修文すべき箇所を指摘したほか、今後に向けた課題などを述べた。田中常任理事の発言は以下のとおり。
.
令和8年度改定に関する審議報告(案)について
[田中志子常任理事]
報酬改定合間の中間地点での見直しについて、はじめに感謝を申し上げます。2つ意見がございます。
まず1つ目。簡単なところというか文言なのですが、3ページの「配慮措置を踏まえた配慮措置を講じる」という表現は重複しているので、「配慮を踏まえた措置」というように言い換えてはどうかと提案いたします。
.
.
次に、処遇改善について、日本は介護報酬が公定価格で、改定までのタイムラグもあり、インフレ局面では実質価値が目減りしやすい構造です。加えて、介護は労働集約で、原価の大半が人件費。つまり賃金上昇を単価に転嫁しないと現場が破綻します。毎回、来るか来ないかハラハラしながら待つ補正予算だけでは持続可能な運営は困難です。国全体で考える局面だと思います。
1つは、介護離職の防止への課題です。2023年の経済産業省の資料では、年間約10万人が介護離職しており、その損失は約6,500億円と試算されています。40代から50代の管理職、ベテラン層が離職のコア層であるため、多くの企業にとっては単なる人材不足以上のノウハウの流出という大きなダメージになります。企業にとっては熟練社員の離職は採用、育成コストの損失まであり、ひいては介護サービスの充実は自社の人材を守る投資と位置付けられます。
次に、労働供給の確保という観点があります。介護職の処遇改善について、介護現場の人手不足によりサービスが受けられない介護難民状態になると、働く現役世代が家庭内での介護を余儀なくされます。介護職の処遇が改善されなければ人手不足は深刻化し、結果として企業の働き手が家族介護に時間を取られます。介護人材への投資は間接的に全産業の労働力確保につながります。つまり、介護人材を確保することは、他産業で働く方々の仕事と介護の両立を支えるインフラを整えることと同義ではないでしょうか。
さらに、地域経済の維持として、介護事業所は地方の主要な雇用主です。介護が崩壊すれば地方の消費市場も縮小し、地方に拠点を持つ企業の事業基盤が揺らぎます。人口減少が進む地方都市において、介護施設は製造業の工場などと並び、安定した雇用、特に女性やシニア層を生む重要な拠点となっています。介護従事者の給与は地域での消費に回り、事業所が維持されることで、その家族もその土地に住み続けられます。
介護崩壊は地域コミュニティの消滅を加速させる要因となります。2040年の新たな地域医療構想の中にも介護分野が組み込まれてきたように、介護はなくてはならないインフラです。このインフレ局面での人材流出に歯止めをかけることは必須です。したがって、物価・賃金に連動するスライド要素を入れ、今のように改定まで耐えるではなく、タイムラグに耐えられない事業所の崩壊を防ぐべく、速やかに対応すること。今後、9年度改定でも継続し、ますます他産業と差が開くことがないよう、継続的な基本方針の見直しを強く要求します。以上です。ありがとうございました。
2025年12月20日


