医療提供体制、「柔軟に対応できる仕組みを」── 池端副会長、中医協総会で

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2025年6月25日の総会

 令和8年度診療報酬改定に向けて「医療提供体制等」をテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「全て病院を差別化すればいい、機能分化すればいいということでは済まないところが特に地方ではある。柔軟に対応できる仕組みを議論していただきたい」と述べた。

 厚労省は6月25日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)総会の第610回会合を都内で開催し、当会から池端幸彦副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「医療提供体制等について」と題する156ページの資料を提示。医療提供施設や医療従事者の状況などについて「現状と課題」を示し、委員の意見を聴いた。

 池端副会長は、病床利用率と経営状況との関係や地域格差の問題、薬剤師の偏在是正などについて意見を述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

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医療提供体制等について

[池端幸彦副会長]
 入院医療に関して1つ質問と、薬剤師の偏在などについて意見を述べる。まず、21ページ「病院数の年次推移」について質問したい。
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「病院」が8,112で、「療養病床を有する病院」が再掲として3,403と出ているが、この「療養病床を有する病院」というのは療養病床を1つでも持っている病院の数という理解でよいか、確認したい。

 なぜかと言うと、これを見ると療養病床がまだまだ十分にあるのではないかというイメージが出てしまうが、療養病床はかなり減ってきているからだ。
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 実際には23ページ(病院病床数の年次推移)。「一般病床」「精神病床」「療養病床」「結核病床」の4種類の病床があって、この中で「療養病床」は減少傾向にある。これが現実だということを理解していただきたいので、先ほどの解釈で正しいのかどうか、確認させていただきたい。
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03スライド_P112

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 その上で、112ページ(近年の入院受療の推移)を見ていただくと、利用率が下がっただけで経営が厳しくなったのではないことがわかる。
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 一方、152ページの「今後の医療提供体制」の所に、「急性期病床の稼働率の低下等により、医療機関の経営への影響が見込まれる」との記載がある。病院の経営が厳しいのは利用率が下がっているという指摘だと思うが、先ほどの112ページからわかるように、確かにコロナ禍でかなり利用率が下がったが、その後、特に急性期病院は持ち直している。

 それでもなお、経営が厳しくなっているということ。決して利用率が下がっただけで経営が厳しくなったのではない。112ページの折れ線グラフの持ち上がりで理解できると思うので、そういうことも理解していただきたい。

 また、先ほど長島委員、太田委員もおっしゃったように人口規模によって医療提供体制の在り方は大きく違う。現在、老健局所管の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会で議論されているが、地域における人口減少・サービス需要の変化に応じ、全国を「中山間・人口減少地域」、「大都市部」、「一般市等」と主に3つの地域に分類して介護サービスの提供体制を検討している。
病院も同じように、人口規模に応じて、分けて考えなければいけない。

 もちろん全国一律の診療報酬点数は維持しなければいけないが、地域によっては、例えば急性期も回復期も慢性期も、1病院で持っていなければいけないこともある。そういう病院のニーズを理解した上で、そういう病院が地方では必要だということも理解した上で考える必要がある。

 全て病院を差別化すればいい、機能分化すればいいということでは済まないところが各地域で、特に地方ではあるのだということも、ぜひ理解していただき、柔軟に対応できる仕組みを今後、中医協でも議論していただきたい。

 つまり、高度急性期というのは一定程度、収斂されていく可能性があると思うが、それ以外の包括的な機能というのは、いろいろな機能を併せ持つことが地域のニーズに合った病院になっていくのだということを強調しておきたい。

 最後に、薬剤師の問題について72ページ。
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 先ほども意見があったように、薬剤師は毎年養成されているにもかかわらず、病院薬剤師は一向に増えていない。72ページのグラフが如実に表していると思う。実際に、病院の薬剤師がいなくて本当に困っている。福井県は薬学部がない県で、全国で沖縄に次いで最下位に近い。実は福井県では、薬局の薬剤師も少ないし、病院薬剤師はもっと足りない。全然いないという状況になっている。

 こうした偏在をどのようにしてなくせばいいか。前回改定と同様に、次回改定でも重要な課題として取り上げていただきたいと思っている。もちろん、保険局医療課で、この中医協で議論できることと、できないこともあると思う。医政局マターのこともあるし、薬剤師養成のための薬学教育は文科省マターの問題である。

 さらに言えば、薬学部を6年制に延ばした一方で、研修期間が短いように思う。例えば、医師の場合は病院で研修を受けながら、その病院の様々な良さを理解して、そこの病院に勤めようかと考える。そういう点で、薬剤師の研修期間が非常に短いことも1つの問題点ではないかと思う。
 
 特に、これから薬剤は非常に複雑化していくので、本当に専門性を持った薬剤師が病院で働いていただくことが非常に重要になってくると思う。その辺を含めて、これは中医協マターだけではなくて、他の部局あるいは他の省庁とも協力しながら、薬剤師の偏在問題を検討していただけるといいと思っている。まずは、この中医協で議論していただけるとありがたい。

【厚労省担当者の回答】
 21ページの「療養病床を有する病院」について、今、原典にまでたどる余裕がなかったが、私どもも委員と同じ理解であり、療養病床を1つでも持っている病院と理解している。

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