費用対効果評価、「人材育成の進捗状況は?」── 池端副会長、中医協の専門部会で
医薬品や医療機器の費用対効果を評価する組織の体制について、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「高額医薬品等が目白押しになっている中で費用対効果評価制度は非常に重要」とした上で、専門家の人材育成について進捗状況を尋ねた。厚生労働省の担当者は「現在2つの大学で講座が開設されており、97名が修了。うち12名が公的分析に加わっている」と答えた。
厚労省は7月16日、中央社会保険医療協議会(中医協)費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東大大学院経済学研究科教授)の第70回会合を都内で開催し、当会から池端幸彦副会長が診療側委員として出席した。
費用対効果評価制度の見直しに向け、同部会は前回5月14日にキックオフ。今後の議論の進め方や検討スケジュールなどを決めた。今回は、予定どおり費用対効果評価専門組織からの意見について審議。専門組織の委員長が意見書を読み上げた後、質疑に入った。
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費用対効果評価制度の検証も必要
専門組織の意見書は、「Ⅰ 総論」「Ⅱ 各論」で構成。このうち総論は、▼A 分析方法に関する事項、▼B 診療ガイドラインへの活用に関する事項、▼C 評価組織の体制に関する事項──に分かれ、それぞれについて「対応案」が示された。
質疑で、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「対応案に示された方向に異論はない」と了承した上で、今後の議論に向け、「通知に規定されている『評価に重要な影響を与える知見』や『評価候補品目の指定基準を満たす可能性』など定性的な基準について、科学的に、また費用対効果の趣旨にも基づき、定量的な基準として定義できるかどうかが大変重要」と指摘。「そうした観点からの議論を行うことができるための客観性の高い資料をご準備いただきたい」と要望した。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「費用対効果評価制度が運用を開始してから6年が経過し、45品目について評価が終了している。これまでの評価結果や客観的な検証などを踏まえつつ、次回の見直しに向けた議論を進めていくことが必要だ」と述べた。
一方、業界代表の立場から、藤原尚也専門委員(中外製薬執行役員、渉外調査担当)は「制度導入時の基本的な方針を振り返りながら、現行の費用対効果評価制度についての客観的な検証を十分かつ丁寧に実施することが重要」と指摘。前田桂専門委員(日本メドトロニック・バイスプレジデント)も「制度そのものの客観的検証が必要ではないか」との認識を示した。
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組織体制の在り方について検討する必要
評価組織の体制についても意見があった。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「より多くの品目について、この費用対効果評価を行うことができるよう、体制の整備だけではなく効率的な運用についても検討すべき時期に入っていると考えている」と述べた。
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専門組織の意見書では、「公的分析については、大学等のアカデミアによる協力を得て、国立保健医療科学院がとりまとめて行っているが、一部の諸外国では独立した研究機関内で行われている」とした上で、「諸外国の例も参考にしながら、今後品目数の増加などに対応できる組織体制の在り方について検討する必要があるのではないか」との対応案を示している。
池端副会長は同制度の重要性を指摘した上で、専門家の人材育成について質問した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
【池端幸彦副会長】
江澤委員、森委員が述べたとおり、私も意見書について特に異論はない。その上で、1点質問させていただきたい。これまでの費用対効果の議論でも時々出てきたことだが、これから高額医薬品等々がかなり目白押しになっている中で、この費用対効果制度は非常に重要だと思う。
一方で、専門家の人材が非常に厳しいと聞いている。現在、着々と準備を進めているようだが、現状はどうなっているか。専門家の人材育成の進捗状況等について、わかる範囲で教えていただきたい。
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【厚労省担当者】
実績数の詳細については追加的な補足説明が必要かと思うが、現在は2つの大学において講座が開設されており、人材育成を行っていると承知している。実際の人数については、97名が修了しており、そのうち12名が公的分析に加わっている。
2025年7月17日



