かかりつけ医機能、「枠にはめないのが大原則」── 池端副会長、外来医療の議論で
令和8年度の診療報酬改定に向け、「外来(その1)」をテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「かかりつけ医機能報告制度と診療報酬はきちんとリンクされてしまうような、枠にはめてしまうものではないのが大原則だ」と述べ、病院と診療所の連携なども含めた柔軟な対応を求めた。
厚労省は7月16日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)総会の第612回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
厚労省は同日の総会に「外来(その1)」と題する98ページの資料を提示。最終ページに「論点」を示し、委員の意見を聴いた。
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外来診療に係る診療報酬上の評価について5項目
資料「外来(その1)」は表紙を含めて98ページ。全体の構成は、▼1.外来医療をとりまく環境について(P2~16)、▼2.診療内容と医療費について(P17~27)、▼3.外来診療に係る診療報酬上の評価について(P28~96)、▼外来医療についての課題と論点((P97~98)──となっている。
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このうち、3の「外来診療に係る診療報酬上の評価」では、① 初・再診料等、② かかりつけ医機能に係る評価、③ 生活習慣病に係る評価、④ 外来機能の分化の推進、⑤ 情報通信機器を用いた診療──の5項目のテーマを挙げた。
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かかりつけ医機能報告と診療報酬
5項目のテーマのうち、②の「かかりつけ医機能に係る評価」について厚労省は、「医療法のかかりつけ医機能報告と現行の診療報酬の比較」を示した。
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厚労省の担当者は「現行の診療報酬の要件を比較することを試みた。左側が医療法上の主なかかりつけ医機能で、1号機能・2号機能にあたる項目をいくつか列挙し、右側に関連する現行の主な診療報酬の要件等を記載している。赤字で、時間外対応加算や機能強化加算で体制整備を評価している機能を色付けしている」と説明した。
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「課題」では、「外来医療の需要は今後減少していくと推定される一方で、外来患者に占める要支援・要介護高齢者の割合は、今後増加もすることが見込まれる」とした上で、「地域の外来・在宅医療の提供体制の向上を目的とする、医療法の『かかりつけ医機能報告』制度を踏まえて、外来における診療報酬上の評価のあり方についてどのように考えるか」などの論点を挙げ、意見を求めた。
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地域全体を面として患者を支える制度
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「医療法のかかりつけ医機能報告制度は、かかりつけ医を認定する制度ではなく、あるいは、かかりつけ医を有する医療機関、また、専門性あるいは専門性を有する診療科を有するような地域の医療機関が役割分担と連携をして地域全体を面として患者さんを支えていくために必要な制度」との考えを示した。
その上で、江澤委員は「フリーアクセスを制限するような、あるいは、かかりつけ医の制度化、かかりつけ医の認定を後押しするような観点から議論することは、かかりつけ医機能報告制度の趣旨に全く反する」と強調した。
江澤委員は「かかりつけ医機能報告制度は、診療報酬上の評価と結びつけて議論されるものではない。あくまでも都道府県が最適な医療体制を構築するために必要な制度」とし、「今後、外来機能について議論していく際には、この点を明らかにしておく必要があるので、改めて強調させていただく」と述べた。
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かかりつけ医機能報告制度と整合する方向で
支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「かかりつけ医機能制度が始まることから、診療報酬としても、患者さんに必要なかかりつけ医機能を適切に評価できるようにしていくことが必要」と指摘。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は1号機能に対応する診療報酬の欠缺を指摘しながら、「体制整備の評価を大きく見直す議論は不可欠」との認識を示した。
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奥田好秀委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)も体制整備の評価に言及。「さまざまな加算や診療料が複雑に折り重なっている状況」と苦言を呈した上で、「現状の複雑な評価を、かかりつけ医機能報告制度と整合する方向で整理していくことが国民や患者の目線からもわかりやすく望ましいのではないか」と述べた。
このほか、支払側からは「診療所と病院で、同じような治療を受けて医療費が違うのは困惑する」との意見もあった。鈴木順三委員(全日本海員組合組合長代行)は「かかりつけ医機能は診療所だけでなく中小病院も対象になる」と指摘。「公定価格であれば同じではないかとも考えられるので、その合理的な説明がつくのかどうかも検討課題。なるべく同じような評価ができるほうが患者にとってわかりやすい」と述べた。
こうした議論を踏まえ、池端副会長が発言。病院と診療所の連携も含めた検討の必要性などを指摘した。茂松茂人委員(日本医師会副会長)は「池端先生が言われたように、面で捉えて、患者さんが悪くなったときにどこの病院にどういうふうに運ばれていくのかということもきちんと考えていく考え方が非常に重要ではないか」と述べた。
【池端幸彦副会長の発言要旨】
かかりつけ医機能について病院の立場から意見を述べる。1号側・2号側から議論があったが、江澤委員がおっしゃったように、かかりつけ医機能報告制度と診療報酬はきちんとリンクされてしまうもの、枠にはめてしまうのではないということは大原則だと思う。
一方で、かかりつけ医機能というと、どちらかというと、一般的な印象では診療所の機能が中心であると考えがちだが、特に2号機能に関しては、入退院や24時間連携等を考えると、1人診療所の先生方にそれを全て担っていただくのは非常に難しい。ここはやはり病院と診療所の連携が非常に重要なキーワードになってくると思う。
では、診療報酬上で、どのように寄り添っていくか。これまでの経緯では、地域包括診療料だと思う。200床未満の病院と診療所が算定できるので、もし寄り添うことが可能であれば、どのように、それを進める方向にいけるかだと思う。
44ページ(地域包括診療料・加算等の算定・届出状況)を見ると、地域包括診療料を取っている病院は51施設で、県に1個あるかないかのレベル。今後、この地域包括診療料を残すのであれば、この基準も見直して、かかりつけ医機能と寄り添えることがあれば、そういう方法も考えていいのではないか。200床未満の中小病院も、かかりつけ医機能の1つを担う。特に、地方の人口が少ない所では、診療所が1軒もない所で、病院がかかりつけ医機能を担わなければいけない所も多くある。そこもぜひ、あわせてお考えいただければと思う。鈴木委員もこのことをおっしゃったが、一物一価ということで全て診療報酬を揃えればいいのかどうか。病院と診療所では、体制が全然違うので、1つに揃えることが果たしていいかどうかは、これから議論が必要ではないかと感じている。
2025年7月17日







