調剤料、「対物・対人の見える化を」 ── 次期改定に向け、池端副会長
調剤報酬がテーマになった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「調剤料の中身をもう少し整理して、どれが対物で、どれが対人かを見える化し、みんなが評価できるような仕組みが必要ではないか」と述べた。
厚労省は11月26日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第500回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
今回の主な議題は、①在宅(その5)、②個別事項(その6)、③調剤(その3)──の3項目。このうち在宅は訪問看護を中心に審議。個別事項では、データ提出加算や自殺対策等について検討し、調剤では5項目の論点が示された。
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対物業務の効率化を図る必要
資料説明の冒頭で、厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は「患者のための薬局ビジョン」を提示。「対物業務から対人業務へという方向性が示されている」と紹介した。
続いて示したのが、平成31年4月の通知「調剤業務のあり方について」。紀平薬剤管理官は「薬剤師の行う対人業務を充実させる観点から、医薬品の品質の確保を前提として対物業務の効率化を図る必要があることなどが指摘されている」と伝えた。
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「調剤料」の割合は50%超
厚労省の調査によると、令和2年度の調剤医療費の内訳は、技術料が約1.9兆円で、薬剤料が約5.6兆円。技術料約1.9兆円のうち、調剤料が最も多く約8,100億円となっている。
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近年、「調剤料」の占める割合は減少傾向にあるものの、技術料の中で50%超。一方、対人業務を評価する「薬学管理料」の占める割合は、20%程度にとどまっている。
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対人業務をより適切に評価していく
こうした状況を踏まえ、厚労省は今回の総会に「薬局での調剤業務の流れについて」と題する資料を提示。主に「調剤料」で評価している部分を青枠で表示した。
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その上で、①~③については、「患者の状態や処方内容等に応じ、薬剤師による薬学的判断を伴うことから、対人業務的な要素を含んでいる」と指摘した。
論点では、「対物中心の業務から対人中心の業務への構造的な転換を進める中で、対人業務をより適切に評価していく観点から、調剤料及びその加算料の評価の在り方についてどう考えるか」とし、意見を求めた。
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整理したほうが分かりやすい
質疑で、有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「一言で調剤料と言っても、その行為は対物業務と対人業務が複合的に入り組んだ評価となっており、対物業務と対人業務を単純に線引きできるものではない」と指摘。「調剤料の評価を動かしていくことは現場への影響が非常に大きい」と理解を求めた。
これに対し、城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「薬局での調剤業務の流れに従って考える必要がある。もう少し、ここを整理したほうが分かりやすい報酬体系になるのではないか」との考えを示した。
その上で城守委員は、④⑤については「調剤料のまま」とする一方、「①②③は薬学管理料として見直す部分があるか検討されてはどうか」と提案した。池端副会長もこの意見に賛同した。
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調剤料と薬学管理料のバランスを
支払側からも同様の意見が相次いだ。佐保昌一委員(連合総合政策推進局長)は「対人業務をより適切に評価する観点が重要であり、調剤料の評価と薬学管理料などとの報酬上のバランスを考え、見直していく必要がある」と述べた。
眞田享委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は、技術料に占める調剤料の割合が減少傾向にある点を指摘し、「このトレンドは今後も継続させていく方向で検討していくことが重要ではないか」と述べた。
松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「青枠で囲んだフローのうち、①から③については、調剤基本料や既存の薬学管理料で評価されているものもあるので、調剤業務と報酬の考え方について、もう少し議論する必要がある」と指摘。「少なくとも調剤料については、投与日数によらず一律にするかたちで適正化を図るべき」と付け加えた。
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データ提出で現場が混乱も
この日の会合では、24日の総会に続き、DPCデータの利活用もテーマになった。厚労省は「個別事項(その6)」の中で、「データ提出等に係る課題と論点」を提示。「DPCデータについて、「多様な分析を実施することが可能であり、これまでも活用を進めてきた」とメリットを紹介した。
論点では、「外来医療、在宅医療及びリハビリテーション医療を担う医療機関等の機能や役割を適切に分析・評価するため、診療を行っている患者の病態や実施した医療行為の内容等に係るデータを提出した場合の評価の在り方について、どのように考えるか」とし、意見を求めた。
質疑で、城守委員は「24日の総会でも申し上げたように、データの重要性はよく理解をしているが、データ提出による医療現場の負担が大きくなり、医療提供に支障をきたすことになっては本末転倒」と改めて強調した。
池端副会長も「病院の規模によって負担の割合が違う」と指摘し、「状況をまず把握していただいた上で、慎重に導入する方法をとっていただかないと、現場は非常に混乱する可能性が高いのではないか」と述べた。
■ 外来データの提出について
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私が関わっている慢性期の立場で言えば、ようやく慢性期、あるいは200床未満の中小病院もデータ提出加算を積極的に取るようになり、入院に関しては、データ提出加算の率が上がっていると思う。
一方で、外来となると、電子カルテになっていれば、ある程度、導入ができる可能性も高いとは思う。しかし、中小病院や診療所では、まだまだ電子カルテの導入率がどの程度すすんでいるのかわからない。その辺のしっかりしたベースがどうなっているのかという現状も含めて検討するべきである。病院・病床の種別、規模によって、導入率もかなり違っており、負担の割合が相当違うと思われる。
そうした状況をまずはしっかり把握していただいた上で、慎重に導入する方法をとっていただかないと、現場は非常に混乱する可能性が高いのではないか。
一方で、レセコンの導入率はかなり高いと認識している。しかしながら、ICD10の病名入力は診療所や中小病院では導入されていない所も多いと聞いている。現状をもう少し把握した上での、慎重な対応を求めたい。
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■ 診療報酬明細書の記載について
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フリーコメントから選択式への変更については、確かに負担が減る可能性も高いとは思うが、一方で、しっかりとコメントを書ける欄を残しておかないといけないのではないか。フリーコメントとの合わせ技で、しっかりと意見をいただいたほうがいい。
検査値データについては、レセプトの摘要欄に記載を求めることは、一見、合理的なようだが、逆に検査値データが独り歩きしてしまって、それが画一的になってしまって、検査値データありきになってしまう危惧がある。
学会等のガイドラインも踏まえ、確実に、明らかに証明できるものに対しては、そういうこともあるかもしれないが、導入するにあたっては、慎重な上にも慎重な対応が求められると思う。
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■ 自殺対策等について
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かかりつけ医等を通じた自殺対策等については、全面的に賛成したい。現場のかかりつけ医の情報と専門医の情報をすり合わせることは非常に有用である。
あわせて、最近は産業医の活動も進んでいる。産業医から早期のうつなどに関する情報が寄せられることもある。私自身も産業医をやっていて経験しているので、そうしたチーム医療の中に産業医も取り込めるような体制も必要である。
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■ 調剤料について
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「対物業務から対人業務へ」という大きな流れについては、おそらく全ての委員の大きな賛同を得られるところではないか。
ただ、調剤料の中に対人業務の要素が含まれているのであれば、先ほど城守委員が言われたように、調剤料の中身をもう少し整理して、どれが対物で、どれが対人かを見える化して、そして、みんなが評価できるような仕組みが必要ではないか。城守委員の提案に賛同する。
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■ 地域連携薬局等について
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地域連携薬局数はまだ非常に少ない。福井県では2医療機関しかない。できれば、もう少し進むように、実績要件で厳しいところを少し緩和できるような体制にしてはどうか。例えば、24時間調剤が難しければ、24時間調剤をやっている所と連携をすることで一定程度の加算が取れるようにするなど、何らかの推進策や工夫ができるのではないか。
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■ 在宅患者の訪問薬剤管理指導について
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医療用麻薬持続注射療法、在宅中心静脈栄養法を実施している患者への訪問薬剤管理指導の評価について、現場の意見として申し上げたい。まだまだ、それぞれの地域で、いわゆる「面」で対応できる薬局がきちんと存在する状況にはない。
私自身、在宅をかじっている人間として、麻薬管理や中心静脈法などに関して、地域に対応できる薬局がなく、市や町をまたいで来ていただく場合もある。
もう少し、それぞれの地域で、そうした薬局が存在するような何らかの推進策やインセンティブなどが必要ではないかと感じている。
(取材・執筆=新井裕充)
2021年11月27日