「療養病床と一般病床の区別は不要」── 井川副会長、入院外来分科会で

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 入院・外来医療等に関する令和6年度調査結果などを踏まえて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「療養病床と一般病床の区別は不要であり、治療内容、アウトカム評価に基づいて、いずれ一本化されるものと考えている」と述べた。

 厚労省は6月19日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の令和7年度第4回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。

 前回6月13日の分科会では、高齢者の入院医療や慢性期などをテーマに議論。今回は外来医療やデータ提出加算等について「現状と課題」などが示され、各委員が意見を述べた。
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 井川副会長は今回の議題のうち「外来医療(その1)」について発言したほか、前回の議題について改めて見解を示した。井川副会長の発言要旨は以下のとおり。

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外来医療(その1)について

[井川誠一郎副会長]
 本分科会は、調査票やDPCデータなどから得られた内容を解析して評価し、そして更なる解析を加える会であると認識している。その際に重要なのは、お示しいただいたデータの正確性、整合性だろうと思っている。

 今回、いただいたデータを眺めると、少し疑問に思うところがある。これからの質問はその観点からのものが多いため、細かい数字や出典の話が多くなることをまずお詫びしておきたい。

 外来調査の施設票は2,440施設に配布されて、200床未満の病院157施設、有床診療所68、無床診療所654の合計879の施設から回答が得られている。
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 27ページ(時間外対応加算の算定医療機関における対応)にある時間外対応加算に関する設問は診療所だけに限局されているので、有床診療所と無床診療所を合わせて722施設からの回答となる。27ページの下部に、時間外対応加算のn数がそれぞれ書かれている。これを合計すると、197施設。これは27.2%しか算定されていないことになる。
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 そうすると、これを標本数などで考えると、28ページの「厚生局届出情報」にある状況は母集団ということになる。この時点で、200床未満の病院、有床診療所、無床診療所の届出機関数が不明なのだが、同様の比率を標本集団と考える場合は27%しか満たしていないことになってしまう。非常に少ない数字で「横ばい」という話になってきたときに、横ばいはOKなのかという話が出てくると思う。
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 さらに、32ページ(機能強化加算の算定・届出状況)。機能強化加算の年度別の数値が出ている。この施設数は、先ほど示したほうの時間外対応加算を全部合わせると、母集団は2万8,000施設ほどになるが、それの約半分ぐらいしかない。そうすると、もともとの施設数が同じだと仮定すると、それのさらに半分しか実は取れていないという話になって、非常に低いレベルの話になってしまう。
 
 そういう算定率というのが、今回、全く出てきていないので、その辺のところは話を非常にしにくい状況になっているが、算定率から考えて、この辺の算定率で本当に10何%とかいうレベルになってしまうので、これでいいのか。加算というものは、できればそうしてほしいというところに向かって進むものであるのに、年度別でずっとあまり変わらないというのはいかがなものかと考える。
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 36ページに、機能強化加算の届出の有無別で、介護の連携に関するグラフが出ている。左側にある項目は、令和6年度の調査の外来調査(施設票)の設問11の「有しているかかりつけ医機能」を問う中で、「介護との連携について、実施している取組」について回答するところからきている。
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 令和6年度の調査票には、機能強化加算を算定しているかどうかという設問はなかったと思う。
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 「機能強化加算」という文言が出てくるのはわずかで、問4の「継続的な外来診療を経て在宅医療に移行した患者数」「緊急往診の実績」「在宅における看取りの実績」など、患者の実人数を問うような項目だけだったと記憶している。どのようにして、この機能強化加算の算定あり・なしを分けられたのか、お伺いしたい。
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 さらに、38ページ(機能強化加算届出医療機関の有するかかりつけ医機能)でも同様に、かかりつけ医機能について機能強化加算の有無で記載しているが、その両者のあり・なしが全然数字が違う。
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 むしろ逆転しているというか、数字がひっくり返っているのはなぜなのか、お伺いしたい。
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 それから、54ページ(地域包括診療料・加算等の算定・届出状況)の四角囲みに、「地域包括診療料の届出医療機関数は近年横ばいである」との記載があり、2つ目の丸では「近年増加傾向である」と示されている。外来調査票では回答数858に対して、いずれも届け出ていないのが693施設。81%の施設が届けていない。
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 56ページ(地域包括診療料を届け出ていない理由)、57ページ(同)。この中で、「24時間対応をしている薬局と連携することができないため」と書かれている。おそらく24時間対応をしてくれている薬局そのものが少ないのではないかと思ったところ、実は令和5年度に調査されている。その際に、自薬局単独で24時間対応が可能な体制を整えているのが58.7%と、6割ぐらいあり、そこの間に少しギャップがある。

 病院側は取れないと言いながら、薬局側の6割以上はできると言っているという話になってしまうので、ここのところをどう考えておられるのかを教えていただきたい。
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 最後に、生活習慣病管理料を算定していない理由について、「患者がいない」という回答が最も多いが、小児科や産婦人科等を分けて出していただきたいということは前回も申し上げた。

[厚労省担当者]
 まず36ページ。機能強化加算の「届出有り」「無し」は、調査票にはないのに、なぜこのような集計になっているのかについて、調査票と届出情報とを事務局で突合して、そういったクロス集計を行っているので、調査票になくても、どういう医療機関が届出をしているかを別情報を付加して集計している。

 38ページは、調査年度でnが違っていたが、調査した結果、機能強化加算の「あり」「なし」のところが、どれだけ当たったかというところは、令和6年度調査については、このような形で当たったということになる。

 54ページ目以降の、24時間薬局との連携については、ご指摘のとおり薬局側の認識と医療機関の認識に違いがあるのではないかというところについては、そういう着眼点で、どういう分析ができるのか、今後検討したいと思う。そういう視野を持って、事務局でも考えてみたいと思う。

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新たな地域医療構想における医療機能等について

[井川誠一郎副会長]
 前回の分科会で、時間がかなりオーバーしていたため発言できなかった。改めて意見を述べたい。新たな地域医療構想における医療機能のうち「専門等機能」について、当初は「高齢者等の中長期にわたる入院医療機能」として挙げられていた「高齢者等」という文言が、昨年末の取りまとめ時には削除され、「中長期にわたる入院医療機能」となっていたことについて他の委員から指摘があった。療養病床の存続に関わる質問をされたと理解している。これについて、事務局は「今の時点で何らかの定まった方向性を持っているわけではない」と回答した。

 われわれ日本慢性期医療協会は、慢性期とは急性期を除いた医療、すなわち高齢者の軽症救急から緩和医療、在宅や介護期までを含めた大きな範疇であると考えており、慢性期イコール療養病床とは全く考えていない。つまり、新たな地域医療構想における「高齢者救急・地域急性期機能」、「在宅医療等連携機能」、「急性期拠点機能」、「専門等機能」の機能のうちの「急性期拠点機能」以外は、ほぼ慢性期の範疇に入ってくるのではないかと考えている。急性期病床の削減は慢性期ニーズの増加を意味している。

 質問した委員は「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」で、「高齢者等」という文言の削除を気に掛けていたように思うが、「専門等機能」の注釈では「高齢者医療においては、あらゆる段階において、マルチモビディティ(多疾病併存状態)患者へのリハビリテーションを含む、治し支える医療の観点が重要である」と記載されているので、高齢者への配慮は必要最低限されていると感じている。

 一方で、平成12年に制定された療養病床の考え方、すなわち療養病床は長期にわたり療養を必要とする患者が入院するための病床という考え方は、介護療養病床が廃止され、介護医療院が創設された現在、病院での療養という考え方そのものが時代にそぐわないのではないかと思っている。病院は急性期だろうが慢性期だろうが、施設の機器や設備、人的配置こそ異なるものの、治療を行う施設であるという点に関しては同じであると考えている。

 名称的に、療養病床がかつて結核療養所のようなサナトリウム的な印象を与えるのは事実であり、存続されるならば、「慢性期治療病棟」等への変更が望ましいのではないかと考えている。さらに言えば、先ほど申し上げたように療養する病床の役目は終わったと考えるならば、療養病床と一般病床の区別は不要であり、治療内容、アウトカム評価に基づいて、いずれ一本化されるものと考えている。以上が私ども日本慢性期医療協会としての意見である。

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