働き方改革に関する項目などで意見 ── 井川副会長、令和6年度調査の議論で
令和6年度の「入院・外来医療等における実態調査」について検討した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は働き方改革に関する調査項目などについて意見を述べた。
厚労省は10月30日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の令和6年度第2回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。
厚労省は同日の分科会に「令和6年度調査の内容について」と題する資料を提示。前回6月14日の議論などを踏まえて「調査全体の概要」などを示し、了承された。調査対象施設の区分に応じて、A票からE票、一般票(F票)に整理して実施する。
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この日の会合では、こうした方針を確認した上で調査票を示し、委員の意見を聴いた。議論を踏まえ、尾形分科会長は「必要な修正を行った上で、基本問題小委員会に報告の後、中医協総会での議論を待って調査を進めていく」と伝えた。
調査票は346ページ。井川副会長は「調査全体の概要」について意見を述べたほか、施設調査票(P1~109)、病棟調査票(P136~211)について発言した。詳しくは以下のとおり。
■ 令和6年度調査の内容について
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令和6年度と令和7年度に調査する「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等」について、どの病棟を対象にするか。A票、B票、C票、D票のどこに入れるのかを見ると、A票とB票になっている。つまり、一般急性期、地域包括医療病棟、回復期リハビリテーション病棟などで、C票・D票には入っていない。
医師の働き方改革や看護師の負担軽減などに関して言うと、今回の診療報酬改定では全ての病棟に影響を及ぼすような改定がなされていたと思われる。そういう観点から考えると、C票・D票から外したのはなぜか。令和7年度に入れるつもりなのか、このまま外されるつもりなのかをお尋ねしたい。
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【厚労省担当者】
働き方改革の設問はA票・B票だけであるかとの質問である。働き方改革自体は当然、全ての病院・病棟に関わってくる問題かと思うが、特に問題となっている急性期関連のところをまず確認してはどうかということで、A票・B票にまず加えさせていただきたいという提案となっている。調査の全体的な予算制限の中で、どうしていくかという問題ではある。そうした中で、まずA票・B票から始めてはどうか。
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【井川誠一郎副会長】
療養病棟など慢性期医療では、看護師や看護補助者の方々に非常に頑張っていただいている。看護師は非常に少ない。20対1の病棟では非常に少ない中で運営しているので、大きな負担がかかっている。一方、看護補助者は非常に多い。
今まで、どういう形で加算が付くかと考えてきたところであるので、ぜひ予算的に可能であれば調査していただきたい。
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■ 施設調査票について
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B票の施設調査票について質問する。「地域包括医療病棟の届出にあたり、基準を満たすこと等が困難な項目」として、「一般病棟であること」という選択肢が入っている。なぜ、ここで「一般病棟」としているのか。地域包括ケア病棟が関係している。
地域包括ケア病棟には、一般病棟と療養病棟があり、前々回の改定で救急の要件が入った際に療養病棟は救急要件を満たさなかった場合には95%と、5%の減算になった。その代わり地域包括ケア病棟は維持できるという形になっている。
地域包括医療病棟が創設されたときに、療養病棟からはいけないという状況になった。一般病棟のみ認められている。
ただ、その救急の要件を満たすため、すなわち95%ではなくて100%を目指すために、救急をしっかりと取ってやっているような療養病棟も実はある。そういうところも同じ地域包括ケア病棟であるにもかかわらず、療養病棟であるがためにたくさん救急を取っているても地域包括医療病棟に転換できないということが今回のところで明らかになってきた。
そういう点で言うと、病棟の把握の中に地域包括ケア病棟を加えるのであれば、そこに元病棟が療養か一般であるのかという選択肢を1つ入れる必要があると思う。さらに、前回の改定の際に、救急車で来られた患者さんのうち、直接、地域包括ケア病棟に入棟された患者さんがわずか6%程度しかいなくて、ほかに、一般病棟を持っているから全部、一般病棟に入っていた。つまり、地域包括ケア病棟と救急告示・二次救急がリンクしていない実態がはっきりした結果、今の地域包括医療病棟が創設されたという感じになっている。そういう意味で言うと、救急患者がどの程度、直接地域包括ケア病棟に入っているのかについても把握すべきだろう。
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【厚労省担当者】
一般病棟と療養病棟のどちらから地域包括ケア病棟になったのかについて、医療法上の病棟はDPC調査でおそらくわかると思うので、そちらの観点で、別の方法で確認するという方法があるのではないか。B票自体は一般病棟を念頭に置いた調査になっている。どれぐらい救急を受け入れているかについても、DPC調査で一応把握することができると思うので、そういった視点を持って解析していくといいのではないかと考えている。
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■ 病棟調査票について
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まず、B票について。180ページに「疾患別リハビリテーションとは別に、短時間のPoint of Care(POC)リハビリテーションを実施していますか」という項目がある。POCリハは、地域包括ケア推進病棟協会が推奨している用語だが、まだ全体的に浸透しているかどうかは疑わしい。むしろ、「20分に満たない短時間リハ」とか、「生活に密着したリハビリテーション」という文言に変えたほうが一般的な方々には理解しやすいのではないかと思う。
続いて、C票について。今回の病棟調査票の中で注目を集めているのが中心静脈栄養であろう。診療報酬改定のたびに「中心静脈、中心静脈」と療養病棟は言われるが、実際に蓋を開けてみると、入院患者の10%ぐらいしか中心静脈栄養をやっていなくて、それがなかなか抜けないから非常に問題になる。
前回の改定では、9区分が27区分プラス3区分でトータル30区分に変えた。処置区分と疾患区分等に分けている。非常に細かい設定に変わったことのほうが私は大きな問題だと思って見ている。それがどうなっているか。
前回改定で、疾患区分から処置区分に変えた項目がある。特に医療区分2の項目。それらが、どの程度移行しているのか、使われているのかを把握するほうが中心静脈栄養の問題よりも重要だと思っている。
ただ、中心静脈栄養の中でも、CRBSIに関する設問が気になる。以前の調査で、3カ月後にCRBSIが同じ患者に発生しているかについて、半分以上の方が持っていたという非常に恐ろしいデータが出たが、普通はあり得ない。3カ月間ずっとCRBSIが続いていたら、高齢者の多くは亡くなってしまう。それはあり得ないので、もう一度きちんと調べてほしいと要望させていただいたことがある。CRBSIがあったのか、なかったのかという話になると、長ければ1回ぐらい、PICCを入れて、発熱があったから抜くということは起こる。例えば、ICUなどでやっていて、1週間、2週間の間でどんどんCRBSIが起こってくるという話とはちょっと訳が違う。「ある」「なし」だけで考えられてしまうと非常につらい。要するに、使用されていた月数なども含めた上で評価していただきたい。
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【厚労省担当者】
180ページのPOCのリハのところについては、ご指摘を踏まえて修正を検討させていただければと思う。
27区分の検証についてはDPCデータでも把握できることだと思うので、また別の形で進めていければと思う。中心静脈の質的な部分については、この調査票で確認していくことになると思うが、量的な変化などについては、またDPCデータなどでも把握できると思うので、ご指摘いただいた観点を持って進めていければと考えている。
2024年10月31日