ポリファーマシー対策、「入院の調査でも必要」── 井川副会長、令和7年度調査の議論で

入院・外来医療等の令和7年度調査に向けた議論を開始した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は、外来医療の項目に挙げられたポリファーマシー対策について、「入院中こそ減薬後の経過が見られるので、入院医療の項目にもポリファーマシー対策を入れる必要がある」と指摘した。
厚労省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和6年度第3回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。
同分科会の開催は、令和6年度調査の内容をまとめた昨年10月30日以来、約4カ月ぶり。厚労省は同日の会合で、検討事項や調査スケジュールについて説明した上で、「令和7年度調査の方針について(案)」を示し、委員の意見を聴いた。
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すべての病棟で調査していただきたい
令和7年度調査は、地域包括医療病棟の新設や慢性期入院医療における評価の見直しの影響など、令和6年度調査の7項目を「その2」として実施。これらに「医療資源の少ない地域」に関する調査を加えた8項目となっている。
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調査内容案もまとまっている。地域包括医療病棟の新設の影響については、「高齢者の急性疾患の受入状況等」や、「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の提供状況及びその実績等の状況」などを調査する。
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今回の会合で示された方針案では、従来のものとは別に、さらに具体的に「病棟における ICT 等の活用」「入院時の食費」「ポリファーマシー対策」「入院から外来への移行」「透析医療」などの項目が挙げられている。
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厚労省の担当者は「前回の分科会以降、令和6年12月に医政局で新たな地域医療構想や医師偏在対策など医療提供体制の制度改革が取りまとめられ、医療法等の改正案が閣議決定された」と説明。令和7年度薬価改定や期中改定(入院時の食費基準額の引き上げ)などを挙げ、「令和8年度の改定に向けて特に必要な事項」との考え方を示した。
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井川副会長は、すでに決定している8項目との関係などを質問した上で、今回示された項目について「すべての病棟で調査していただきたい」と述べた。井川副会長の発言要旨は以下のとおり。
【井川誠一郎副会長】
「入-2」(方針案)について述べる。表題が「令和7年度調査の方針について(案)」という、今までにないような具体的な方針を書いていただいている。一方で、「入-2参考1」(令和7年度調査の内容等)には8項目が挙げられている。通例ではすでにある8項目の調査内容を多少変更した形で、ここに盛り込むという形をとるが、今回、このような方針案として具体的に示されている。そうすると、今回の項目は8項目の中にそれぞれ組み込まれるという認識でいいのだろうか。
また、「入-2参考1」の調査項目の(1)~(5)は病院の機能別の立て付けのような形になっているが、今回の方針案の①から⑥あたりまでは全ての病棟に合致するような内容が全部入ってくるので、全ての病棟の調査票、A票・B票・C票等に全部に入れる必要がある。そのため、今回の方針案の項目を別に調査されるのか、または8項目に組み込まれる予定だろうか。
例えば、先ほど申し上げた方針案の①から⑥は、全ての病棟種別に関係なく関わってくる項目である。入院・外来医療等の調査は令和7年度しか残っていない。ある病棟種別でここの部分を外すという形での調査になると、全然、話が違ってくるので、ぜひ、全ての病棟で調査していただきたい。
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【厚労省担当者】
どういう調査票の形に落とし込めるのか、前年度と同じ構造の調査の中に項目として盛り込んでいくのか、違う形にする必要があるのかは検討したい。
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ポリファーマシー対策、薬局との連携などを調査
方針案の「検討課題・調査項目等」は、(1)入院医療、(2)外来医療、(3)医療資源の少ない地域、(4)医師偏在対策(診療科偏在対策)、(5)災害医療──の5項目で構成。
(1)入院医療では、① 看護職員・看護補助者の人員配置、② 多職種の連携・タスクシフト/シェア、③ 病棟における ICT 等の活用、④ 入院時の食費、⑤ 精神・身体合併症への対応、⑥ 入院中の要介護高齢患者の退院後の生活支援業務、⑦ 主に包括期医療を担う病院の地域で果たす機能、⑧ 主に高度急性期医療、小児周産期医療を担う病院の地域で果たす機能──の8項目を挙げている。
(2)外来医療も8項目で、① 外来機能分化の推進、② かかりつけ医機能の推進、③ ポリファーマシー対策、④ 入院から外来への移行、⑤ 透析医療、⑥ 生活習慣病管理、⑦ 小児医療、⑧ 救急医療──を挙げている。
このうち、外来医療の③ポリファーマシー対策では、薬局と連携した取組や、「高齢者の医薬品適正使用指針」に基づく地域の関係者との協議状況などを調査する方針が示されている。
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要介護認定を入院中にサポートができるか
質疑で、東大の高齢社会総合研究機構教授を務める飯島勝矢委員は「ポリファーマシー対策も取り上げていただいたことは、高齢者医療、老年医学に携わっている者として、とてもありがたい」と謝意を示した上で、効果検証の必要性を強調。「国の施策として、点数化した部分でのポリファーマシー対策は既に打たれている。それがどのぐらいの結果を生んでいるのか」と指摘した。
その上で、飯島委員は「ポリファーマシーという言葉は、ただ数だけを減らす意味ではなく、ピムス(PIMs)など高齢者への投与には慎重であるべきというラインナップが明確化されているので、そこも含めて、ポリファーマシー対策が日本の医療においてワンランク、一歩前進できているのかどうかも重要」と述べた。
鳥海弥寿雄委員(東京慈恵会医科大学・前医療保険指導室室長)は入院中の食事について、患者が自由に選択できる海外との比較などを紹介。入院中の要介護高齢者の支援に言及し、「要介護認定を入院中に取らなければいけない場合に、どれだけサポートができるかについても調べていただきたい」と提案した。
井川副会長も入院中の支援のあり方や、入院患者へのポリファーマシー対策などを調査する必要性を指摘した。井川副会長の発言要旨は以下のとおり。
【井川誠一郎副会長】
⑥の「入院中の要介護高齢患者の退院後の生活支援業務」については、鳥海委員も指摘したが、要介護認定の区分変更は実際に約1カ月かかってしまうので、急性期病院の入院期間の中では絶対に終わらない。そのため、慢性期の病院に移行してから認定結果を待っているという状況もある。こうした点に関する調査も加えていただきたい。
(2)外来医療の項目に「③ ポリファーマシー対策」が挙げられているが、ポリファーマシー対策は外来だけではなく、入院中、特に慢性期医療に入院している患者に対して、どれだけ減らしていけるかが重要である。開業医の先生方は、急性期病院の先生から出された薬を減らしにくいという実態がある。入院中には減薬後の経過が見られるので、入院医療の項目にもポリファーマシー対策を入れる必要があるのではないか。
2025年3月13日