ポリファーマシー対策、「信頼関係が重要」 ── 池端副会長も継続率に着目
今後のポリファーマシー対策についてアウトカム評価などの課題が浮き彫りになった厚生労働省の会合で、減薬などの継続率に着目する意見があった。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長も「継続率こそ、まさにポリファーマシー対策の目指すところ」と賛同し、「地域の医師会の先生方との信頼関係が重要」と述べた。
厚労省医薬・生活衛生局の医薬安全対策課は4月13日、高齢者医薬品適正使用検討会(座長=印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)の第15回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が構成員として出席した。
この日の会合では、ポリファーマシー対策のモデル医療機関に採択された3病院の担当者がこれまでの取り組みや成果などを報告。その中で、薬剤費の減少による増収を成果の1つとして挙げる病院もあった。
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転倒・転落の発生がどうなったか
質疑で、座長代理の秋下雅弘氏(東大大学院教授)は「前回よりも非常に多くの成果を発表いただき、単年度の事業として大変うまくいったのではないか」と評価した。
その上で、今回の発表に対して「単に薬剤が減る、薬剤のコストが減ること以上に、アウトカムとして本来期待できるものがあるだと思う」と指摘。具体的には、「(入院中の)インシデント・アクシデントとして多い転倒・転落の発生が昨年度と今年度でどうなったかを追いかけてみるのもいい」と問題提起した。
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病状や疾患の管理への影響も
日本医師会常任理事の城守国斗氏は「成果としては、薬剤が少なくなって、それが結果的に病状や疾患の管理に対してどのような影響があったのか、どういう好結果が出たのかということもあわせて記載すべき」と指摘した。
その上で、城守氏は「薬剤数を削減すること、あるいは医療費を削減することのみが目的のように勘違いされてしまう」と苦言を呈した。
これに対し、急性期病院の担当者は「薬の削減などは副次的なもので、患者さんにどういった要因がプラスとして得られたかのほうが大事であると感じている」とした上で、「非常に短い入院期間でそこまで評価するのは難しい」と説明した。
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薬剤数が少ないまま継続させるには
全日本病院協会副会長の美原盤氏は、「継続率が非常にすごいと思った」と評価した。香川県の三豊総合病院では、退院後のポリファーマシー対策の継続率が9割を超えていた。
美原氏は「単一の病院で実施するポリファーマシー対策は、その病院がしっかりやればできるものだが、現在は機能分化が進んでいるため、われわれが薬剤を削減しても退院後に戻ってしまうケースがとても多い」と明かした。
その上で、美原氏は「薬剤数が少ないまま継続させるテクニックなどが何かあるのではないか」と尋ねた。
同院薬剤部副部長の篠永浩氏は「かかりつけの先生方に当院のカンファレンスで検討した内容を細かく伝えてサマリーを添付するような情報提供をしっかりしたことと、そこで漏れがあった場合でもかかりつけの薬局から疑義照会すること。こうした2つの対応が継続率につながっていると感じている」と答えた。
池端副会長は「美原先生と全く同じ意見。継続率が9割を超えているのはすごい。これこそまさにポリファーマシーの目指すところではないか」と評価した。
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■ 退院後の取り組みなどについて
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大変詳しい発表に感謝を申し上げる。入院期間が平均2週間以内という短い間であるため評価が難しかったというご説明があった。
一方で、アンケート調査でもあったように、外来の薬局薬剤師から見ると、それすらできない、外来の窓口で話しているだけしか情報がないということで、そういう意味では入院は大きなチャンスであって、その中で、これだけの成果を上げられたことは素晴らしいと思う。
そこで、退院後について質問させていただきたい。急性期病院に入院した後、地域のかかりつけの先生など、今回も内科医の先生の処方も含めてということがあったが、帰った後、これはたぶん難しいとは思うが、退院後に処方がどう動いたのか。元に戻ってしまったのか。あるいは、それを維持できたのか。こういう情報も本当は取れたらいいと思った。これについて、何か取り組みがあれば、お聞かせいただきたい。
私もよく経験するのだが、入院中は安静度が非常に高い。血圧などが安定しているため、血圧のお薬などを減らすことができる。ところが、退院して勤務を始めて普通の生活が始まると、また血圧がどんどん上がってきてしまい、また薬を再開しなければいけない。そういう患者さんを私もよく経験する。
入院から在宅に移る時に、かかりつけ医との連携をどうするかが1つのテーマになると思ったので、質問させていただいた。
また、「小規模から始めてはどうか」とのご提案があった。その「小規模」とは、どこまでで、どういうかたちでやればいいかという問題点も指摘していただいた。なるほどと思ったので、検討できればと思っている。
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【波多野正和氏(藤田医科大学医学部臨床薬剤科講師)】
在宅に関しては当院でも力を入れていく部分である。実際、精神科に関しては病棟薬剤師が在宅訪問薬剤師を兼務しているので、入院から在宅へ、シームレスに経過を見させていただいている。そういったところも引き続き力を入れていきたい。
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■ ポリファーマシー対策の継続率などについて
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私も美原先生と全く同じ意見である。今回のモデル事業に参加する前と比べて、さらに継続率が上がって9割を超えているのはすごい。これこそ、まさにポリファーマシーの目指すところではないかと思う。
また、事業の前後で何が変わったかという点では、地域の医師会の先生方にアンケート調査して、事前に承諾を得ていたこと。それに対して、きちんとした情報提供をしたことで、お互いの信頼関係がスタートする前からできていたことが大きかったと思う。医師会を担う者として非常に参考になった。そういう理解でよろしいだろうか。
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【篠永浩氏(三豊総合病院薬剤部副薬剤部長)】
私もそう感じながら業務をさせていただいている。
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■ ポリファーマシー対策の手順書について
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コロナのマニュアルがどんどんバージョンアップしているように、できるものはどんどんバージョンアップしていけばいい。
ただ、今日のご発表にもあったように、まだまだ普及が十分ではない。せっかくいいものがあるのにという思いがある。今後どんどん使っていただく中で、いろいろな意見が出てくると思うので、それも同時並行的に普及していくことが大事ではないか。
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■ 今後の普及に向けて
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ポリファーマシー対策について、今回のご発表はどの病院も素晴らしいと思う。ただ一方で、今、後期高齢者連合や保険者から医療費適正化という事業の中で、モデル事業などが五月雨式に出ている。
先日、福井県に来たのは、後期高齢者連合から自分たちが持っているデータでポリファーマシーの患者をリストアップして、それで患者に直接、そのデータを送りつけて、ポリファーマシー対策をしてもいいですかという了解を取るとか、そういう事業が一方で実施されている。かかりつけ医としてはやらされ感が非常に強く、何か抵抗が出てきてしまうので、こういう事業をもう少しきちんと筋道を立てて、一本化した事業にできないかと感じている。それについて事務局でご存知のことがあれば教えていただきたい。
患者の薬剤に関する情報を全てマッチングさせてリストを出せるということは、そういうデータを取れるということだと思う。三豊総合病院さんでは、自院でデジタル化してポリファーマシーの患者をリストアップしたとお聞きしたが、そういうデータを病院側などに提供して使っていただくような仕組みができればいい。どこまで実現可能性があるかはわからないが、そういうことを感じた。
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【厚労省医薬・生活衛生局医薬安全対策課・塩川智規課長補佐】
直接のお答えになるかわからないが、この検討会は、どちらかと言うと、これまでの検討の中身でも、実際にポリファーマシーに取り組んでいただく際に役立つツールをつくることを中心に行ってきたと思う。
そういう意味で言うと、ポリファーマシー対策に取り組みなさいというよりは、取り組むためのハードルを下げていくということで、いろいろご意見をいただきながら指針をつくっていただいたり、それを使っていただいたり、そういったことをしてきたと思っている。
そのため、この検討会で何か義務を課すというよりは、そういった方々に対する後押しをするということですすめてきたと思う。たぶん今年度の事業においてもそういった観点で、好事例として、地域で取り組んだときにこんなことができるのではないか、こういった情報があれば役立つのではないかなど、そういうところを拾っていく取り組みになるのではないかと考えている。
(取材・執筆=新井裕充)
2022年4月14日