ケアマネの業務、「限界に近い」── 介護保険部会で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

20250220_介護保険部会

 ケアマネジャー(介護支援専門員)に求められる役割などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は「ケアマネジャーが減少し、高齢化しているのに業務が大幅に増えており、限界に近い」との認識を示した上で、「業務内容を根本的に見直す時期に来ているのではないか」と述べた。

 厚労省は2月20日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第117回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。

 次期制度改正等に向け、厚労省は同日の部会に「地域包括ケアシステムの推進、相談支援、認知症施策の推進について」と題する162ページの資料を提示。その中で、「地域包括ケアシステムにおける相談支援等の在り方」のほか、「認知症施策の推進」などの論点を示し、委員の意見を聴いた。

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ケアマネジャーの高齢化、人材不足

 相談支援等の在り方については、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターとの役割分担のほか、ケアマネジャーの専門性、地域ケア会議の在り方などの論点が示された。
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 質疑で、大西秀人委員(全国市長会、香川県高松市長)は「2040年を見据えて地域包括ケアシステムを構築するにあたり、介護ニーズの増加と多様化が見込まれる中でケアマネジャーを確保・充実していくことが非常に重要」とした上で、「現実にはケアマネジャーが確保できないために必要な相談支援体制が整備できないとの声が全国市長会などにも多く寄せられている」と伝えた。

 その上で、大西委員は「ケアマネジャーの年齢が高齢化しており、今後さらに人材不足が深刻化するのではないかと危惧している」との懸念を表明し、「ケアマネジャーの処遇改善、業務負担の軽減について必要な検討をお願いしたい」と要望した。

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業務の負担軽減や人材確保を

 小林広美委員(日本介護支援専門員協会副会長)は地域包括支援センターのケアマネジャーについて「介護予防支援業務や介護予防ケアマネジメントの業務に多くの時間を費やしている」と指摘。「地域課題の発見や社会資源の開発など、地域包括ケアシステムを推進させる取り組みへの阻害要因」との認識を示した。

 その上で、小林委員は役割分担を進める必要性を強調。「居宅介護支援事業所は個々の利用者の医療・生活ニーズへの対応を踏まえた細やかな支援ができる体制を、地域包括支援センターは個々の抱える課題を吸い上げた包括的な支援という役割のすみ分けを進めるとともに、主任介護支援専門員の役割を制度的に位置づける必要がある」と述べた。

 小林委員はまた、高齢者の増加や人材不足などの課題を挙げ、「ICT化の推進とあわせた重層的な取り組みが必要」とし、「利用者個々の暮らしを重視したトータルケアマネジメントを実施していくために、その専門性を十分に発揮できるよう、業務の負担軽減や人材確保を図っていく必要がある」と述べた。
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 橋本会長は、ケアマネジャーの法定業務以外の業務について課題を挙げ、今後さらに検討を進めていく必要性などを指摘。認知症施策の推進については、「認知症の中でも軽度・中等度・重度といった違いがあり、それぞれのステージに応じた対応が求められる」との問題意識を示した。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 相談支援等の在り方について
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 私どもも居宅介護支援事業所を運営しており、現場の感覚として、医療と介護の連携は非常に重要であると認識している。近年、病院へケアマネジャーが訪問する機会が増え、連携の強化が図られている点は良い制度であると考える。しかし、その一方で、ケアマネジャーの業務負担が著しく増大しているのが実情である。
 現在、ケアマネジャーは多くの病院や施設を訪問する必要があり、その負担は非常に大きい。加えて、ケアマネジャーの数は減少傾向にあり、年齢層も上がっている。それにもかかわらず、業務の内容や量は増加の一途をたどっている。この現状を踏まえると、業務の見直しが必要であり、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの働き方は限界に近いと感じる。
 例えば、44ページに記載の「業務の類型」において、法定業務については専門家であるケアマネジャーが担う必要があるが、それ以外の業務については、他の職種に分担することを検討すべきである。現在、ケアマネジャーの離職理由の多くは「他業務」に対する負担の大きさである。「なぜ自分たちがそこまで対応しなければならないのか」という不満が大きな要因となっている。
 専門業務に専念できる環境であれば、どの職種も問題なく業務を遂行できる。しかし、専門外の業務が増えることで、業務過多に陥り、パンクしてしまい、結果的に離職につながる。よって、業務内容を抜本的に見直し、ケアマネジャーのみで対応すべき範囲を見直す時期にきているのではないか。
 次に、介護支援専門員に関する点について述べる。50ページの「介護支援専門員の年齢状況の推移」に関する資料で、年齢別の割合や人数が示されているが、60歳以上の割合が増加し、若年層の参入が少ない点が指摘されている。このデータが示す対象者について確認したい。
 この統計は、ケアマネジャーの資格を有する者全体の数を示しているのか、それとも実際に業務に従事している者の数を示しているのか。実際には、資格を持っていても業務に従事していない者も多い。例えば、私自身もケアマネジャーの資格を有しているが、業務には従事していない。看護師や医師、介護福祉士の中にも同様のケースが多く存在する。よって、このデータがどの範囲の者を対象にしているのかを確認したい。

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【厚労省担当者】
 50ページのケアマネジャーの年齢別データについてであるが、こちらは実際に業務に従事している者の年齢構成を示したものである。
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■ 認知症施策の推進について
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 認知症患者の統計については、MCI(軽度認知障害)の段階と認知症の段階を分けて集計されている。しかし、認知症の中でも軽度・中等度・重度といった違いがあり、それぞれのステージに応じた対応が求められる。
 軽度や中等度の患者に対しては、オレンジカフェなどの活動を通じた社会参加が有効であるが、重度の患者には別の対応が必要である。87ページの「論点」で指摘されているが、関係機関や社会資源との連携をどのようにオーガナイズするかは重要な課題である。
 重度認知症患者の対応には、医師や専門看護師、専門的なケアスタッフの意見が不可欠であり、彼らを中心にした体制を整備しなければ、適切な支援が難しくなる。BPSDの発現により対応が困難になるケースもあり、専門的な視点を持つ人材の関与がより重要になる。この点についても、今後の施策の検討において考慮すべきである。

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