介護と医療の情報が分断されないシステムを ── 介護保険部会で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

20240919介護保険部会

 令和8年4月の施行を目指す介護情報基盤の整備について議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は「医療・介護の複合ニーズを有する高齢者が多い」と指摘した上で、「介護と医療の情報が分断されないようなプラットフォームのシステムや機器などのシームレス化を考慮して進めてほしい」と述べた。

 厚労省は9月19日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第114回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「介護情報基盤について」と題する資料を提示。前回7月8日の議論などを踏まえ、①効果、②通信方式、③共有範囲、④支援、⑤スケジュール──の5項目(資料目次2~6)に分けて現状や課題等を説明し、委員の意見を聴いた。
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住宅改修の情報は見られない

 質疑で、橋本会長は介護情報の共有範囲について「住宅改修の情報は介護事業所や医療機関から見られないのだろうか」と尋ねた。厚労省の担当者は「見られるようになっているのは、丸または二重丸になっている所」と答えた。

 資料によると、「住宅改修費利用等の情報」の項目について、介護事業所・医療機関の箇所は空欄になっている。
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あくまでも費用の情報

 橋本会長に続いて及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)も質問。「住宅改修の情報について、介護事業所・医療機関にチェックが入っていないのはなぜか」と尋ねた。及川委員は「老人保健施設などは在宅復帰の役割を担っているし、医療機関のリハビリ等においても必要な情報ではないか」と指摘した。

 厚労省の担当者は、「あくまでも費用の情報」と説明。「上限額の中で、どの程度の費用が使われているかという情報になるので、ケアマネが把握できればいい情報という整理をしている」との認識を示した。そこで及川委員は「住宅改修の情報についても共有できるようにすべき」と提案した。
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絵に描いた餅になる可能性も

 東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は利用者に関する情報に言及。「ケアプラン、主治医意見書は決まった標準様式はあるものの、そこに記載する情報についてはまだ標準化されていないのではないか」と指摘。「主治医意見書の病名はIC-T10に準拠しているものではないし、主治医意見書やケアプランの中には自由記載の部分もある」とし、標準化に向けた対応を求めた。
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 江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「IT化によって業務の負担が増えると感じている職員も多い」と指摘し、ケアプランデータ連携システムについて「現場職員は今のままのFAXの連絡体制で困らない。IT化で何の利便性が高まるのか、まだコメンテートできていない」との認識を示した。

 その上で、江澤委員は「基盤整備の目的を介護現場と共有しながら進めていかないと絵に描いた餅になる可能性もある。おそらく現場の介護職員からすれば、今日の資料の内容にあるような議論は、たぶん雲の上の議論と多くは感じているのが実態。そこを、どのように融合していくのかが大きな課題で、そのあたりは丁寧にお願いしたい」と求めた。
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医療と介護をつなげていく

 議論を踏まえ、最後に菊池部会長が「私の個人的な見方」と断った上で発言。「政府として全世代型社会保障の中で医療・介護DXの推進を謳って進めているが、医療DXを推進する目的は患者の利便性、介護DXは第一に業務の効率化の実現」と指摘。「その中で医療と介護のシステムをつなげていく、共有化していくということで、今日もさまざまなご意見をいただいた。標準化にも取り組むべきという意見もあった」と振り返った。
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 その上で、菊池部会長は「医療と介護をつなげていく。その先に目的や理念を共有化していく、共通化していくことが次の課題になっていくような気がしている。(基盤整備を)進めること自体は異論がないので引き続き、しっかり議論していきたい」とまとめた。

 同日の部会における橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

【橋本康子会長】
 前回も述べたが、医療・介護のDX化を進めるにあたって、ペーパーレス化や情報の共有がとても大事なことだと思っている。「介護情報基盤整備の目的」のページに書かれているように、超高齢化が進んできているし、医療・介護の複合ニーズを有する方が多いのはそのとおり。自宅にいて介護保険を利用している方でも年に何回も入院されるようなこともあると思うし、施設にいても、そういうことはあると思う。
 そうした中で、介護と医療の情報が分断されないような情報プラットフォームのシステムや機器などのシームレス化を考慮して進めていただきたいと思う。
 インターネットを使うようになったのはいいと思うが、果たして医療DXの情報とつながったりできるのか。今回の介護情報基盤に関しては、まだそこまで進んでいないかもしれないが、将来的には、医療と介護の情報をつなげていくということも目的にして、DX化を進めていると思う。現在、医療と介護でシステムが全然違うので、「いつまでたってもつながりません」ということにならないような進め方をしていただければいい。
 また、医療機関などが情報を閲覧する場合の課題もある。まだ決まっていないようだが、医師やスタッフ1人ひとりに証明書を持たせようとしていると聞く。一方、介護保険に関しては、事業所のクライアントというようなことで、この点も少し違ってくるので、やや混乱することも起こるのではないか。
 細かいことだが、26ページ「介護情報基盤による介護情報の共有範囲」で、介護事業所・医療機関は住宅改修の情報が見られないのだろうか。表の見方がわからないが、証明書を持っていれば、どの情報も見られるように思う。赤の二重丸になっている情報しか見られないという意味だろうか。理解しにくいので説明をお願いしたい。

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【厚労省担当者】
 ご指摘のとおり、見られるようになっている所が丸なり二重丸になっているのが現状の整理である。
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【橋本康子会長】
 医療機関側が住宅改修の費用までわかる必要はないと思うが、新たに手すりを付ける必要があるかなど、住宅改修の状況が医療機関ではわからないと思うので、そのあたりをもう少し考えていただいたらいいと思う。

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