「局をまたいでしっかり連携を」 ── 高齢者医薬品適正使用検討会で池端副会長

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20221130_医薬品適正使用検討会

 健康被害につながるような多剤投与の是正策などを検討している厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「ガイドラインや手順書が普及していない」と指摘し、「局をまたいでしっかり連携し、一気に進めていただきたい」と呼び掛けた。

 厚労省は11月30日、高齢者医薬品適正使用検討会(座長=印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)の第16回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が構成員として出席した。

 この日の会合では、令和4年度のモデル事業に採択された①広島県薬剤師会、②富山県薬剤師会、③神奈川県保険医協会、④宝塚市薬剤師会──の4団体が取り組み状況を報告。今後の課題などを議論した上で、令和5年度事業の方向性について検討した。

 池端副会長は②③についてコメントしたほか、今後の取り組みについて意見を述べた。

■ 富山県薬剤師会の取り組みについて
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 大変素晴らしい取り組みで、かなり系統立てて実施している。病院と診療所の先生方と連携し、成果も出している。非常に参考になった。 
 入院中はポリファーマシーを是正するチャンスであると私も思っている。富山労災病院での取り組みでアウトカムも出しているようで、素晴らしいと思った。
 そこで質問だが、病院等で手順書を使ったときの問題点などがあればお聞きかせいただきたい。

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【永野康已参考人(富山県薬剤師会副会長)】
 取り組みはまだ始まったばかりなので、現時点ではそれほどの成果は出ていないと考えている。病院医師への提案と薬局への情報提供等に齟齬が生じた場合にはまた元に戻ってしまうこともある。薬を元に戻してほしいと患者から言われる場合もある。どういう理由で薬が変更されたのか、病院からの紹介状にはきちんと書いてあるので、その点は非常に良いのではないか。
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■ 神奈川県保険医協会の取り組みについて
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 貴会の提出資料11ページ「ポリファーマシー対策活動の現状」によると、ポリファーマシーによる有害事象を経験した医師と、薬剤減量による症状の悪化を経験した医師はいずれも約3割となっている。ショッキングなデータであると感じた。
 そこでお尋ねしたい。「薬剤減量による症状の悪化」とは、ポリファーマシーを理由に薬剤を調製して減量した結果、有害事象と感じたものだろうか。それとも、一般的な単なる減量なのか。例えば、高血圧の薬を減らしたら元に戻った、悪くなったという事象も含めた調査なのだろうか。

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【湯浅章平参考人(神奈川県保険医協会副理事長)】
 ポリファーマシーに対する意識調査に関する質問だが、池端先生がおっしゃるように、必ずしも「ポリファーマシー」ということで減薬して、こうした有害事象が起こったというわけでもなくて、おそらく回答をいただいた先生方はポリファーマシーに関係なく、薬の減量によって、(血圧上昇、消化管出血、疼痛の再燃・悪化などの)具体的な症状、そういった有害事象あるいは副作用が生じたということで、全てひっくるめて答えている可能性が高いと思う。
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【池端副会長】
 私もそのように思った。このデータが独り歩きして、簡単には減らせないという話になってしまうと嫌だなと思った。そういう説明なら十分理解できる。
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■ 今後の取組みの方向性について
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 ポリファーマシー対策の取り組みは厚労省の医薬・生活衛生局を中心に進められているが、私が委員として入っている保険局の医療保険部会でも、いわゆる医療費適正化対策の1つとしてポリファーマシーの問題が取り上げられている。対象範囲を現行の15種類以上から6種類以上に広げることが提案されているが、どのように進めていくかについては全く触れられていない。
 先日の医療保険部会で発言させていただいたが、この検討会でこのような良い取り組みを今まで進めてきて手順書もできているのに、うまく伝わっていないような印象を持っている。 
 ぜひ、局をまたいで進めてほしい。保険局や医政局でも同じような目的で進めている政策だと思うので、局をまたいでしっかり連携して、一気に進めていただきたいという思いがある。事務局としてお考えがあれば、お聞かせいただきたい。 
 本日、先進事例をお聞きしたが、ガイドラインや手順書が普及していない現実が見えてきたように思う。福井県医師会を預かっている立場でも、そういう印象を持っている。私どもの県医師会でもいろいろ進めているが、医療関係者に対する広報活動はまだまだこれからという印象がある。国民への啓発活動も大事だが、医療関係者に対する啓発活動も大事である。こういう良いツールがあることをもっと知らせることも必要ではないかと感じている。これは今後の取り組みとして重要ではないかと思う。 
 また、来年4月からスタートする電子処方箋にはいろいろ問題があり、かなり足踏みする可能性がある。PKIの個人認証の問題などで、電子処方箋がうまく動かないのではないかという危惧がある。いずれしても、これを動かすことになるので、電子処方箋がスタートすることを踏まえて、ポリファーマシー対策をどう捉えるか。一気にデータが出るので、そこに対してどういう扱いをするか。これも令和5年度以降の対策として考えておくべきではないか。事務局のお考えがあれば、お聞かせいただきたい。

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【厚労省担当者】
 局内・局外のやり取りで、ある程度の情報共有などはされている。ポリファーマシー対策の指針などを使ってみようという認識は互いにある。そうした中で、事業としての認知がうまくいっているかと言われれば、まだうまくいっていない現状は確かにおっしゃるとおりだと思っている。
 そのため、具体的な方法については、いろいろ連携を取っていく必要があると実感している。今後、いろいろとやっていきたいと思う。 
 電子処方箋については現在、モデル地区を選定して検討が進められている。来年1月以降に開始され、順次、広がっていくものと承知している。 
 今回、いくつかの団体から患者さんが服用している薬剤の情報が把握しづらいという意見もあった。そういったものが電子処方箋を活用することでスムーズに確認できて、改善していく部分もあると期待している。
 今後、さまざまな動きがあると思う。いわゆる医療・介護DXの推進などとあわせ、手順書等をどのように見直していくかについても今後の検討課題になると思っている。

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【池端副会長】
 電子処方箋については私もゆっくりと構えていたが、内閣府を中心に一気に進めようという雰囲気がある。ポリファーマシーの対象がはっきり見えてくるというときに、ではそれを使って誰がどう調整するのか、もうすぐ課題になってくると思うので、ぜひ令和5年度以降のガイドラインや手順書の見直しでは、それも視野に入れて検討いただければいい。
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【厚労省担当者】
 広報活動について、医療関係者への周知というところもあるかと思う。機会を捉えながら、取り組めるところから取り組めたらいいと思っている。そうした機会を逃がさないように、われわれも常に考えていきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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