標準型電子カルテ、「きめ細かい対応を」 ── WGで池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

池端幸彦副会長_20240307

 標準型電子カルテの開発やモデル事業の実施に向けて議論した厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、医療機関の規模による負担の違いなどを自院の経験から伝えた上で「導入の初期段階では、きめ細かい対応が必要」と指摘した。

 厚労省は3月7日、「標準型電子カルテ検討ワーキンググループ」の第2回会合を開き、当会から池端副会長が構成員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「本日ご意見をいただきたいこと」と題して3つのテーマを提示。「標準型電子カルテα版の導入に向け、モデル事業、運用についてご知見をいただきたい」と意見を求めた。

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民間サービス組み合わせによる拡張性も

 本ワーキンググループは、昨年6月にまとめられた「医療DXの推進に関する工程表」で、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の整備が盛り込まれたことを踏まえ、医療関係者や患者代表などから広く意見を聴く場として設置された。

 昨年12月14日の初会合では、一部の医療機関で試行的に導入する「α版」に求める機能や対象施設などについて議論。構成員からは「紙カルテとの併用が効率的な場合がある」「診療所の職員はキーボード入力に慣れていない」などの課題が挙げられた。

 こうした意見を踏まえ、厚労省は今回、標準型電子カルテに反映すべき3つの特徴を提示。①医療DXを活用した新たな付加価値、②標準規格対応による負荷軽減、③民間サービス組み合わせによる拡張性──を挙げた。

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02スライド_P17抜粋

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来年度の開発でもチャレンジしていく

 前回会合で要望が相次いだオプション機能については、「民間サービス組み合わせによる拡張性」として整理。厚労省の担当者は「民間の仕組みとの、つなぎやすさもどんどん増していく。来年度の開発の中でもチャレンジしていく」と期待を込めた。

 今後のスケジュールについて厚労省は「3月末を目処に、モデル事業実施地域を決定する」とした上で、「システム開発着手後には、モデル事業対象施設に対し、適宜ヒアリング等を実施し、設計・開発仕様に反映する予定」としている。

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03スライド_P22抜粋

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 池端副会長は、今回示された3つのテーマについてコメントした上で、電子カルテを導入した自院の経験を踏まえた課題を提示。医療機関の規模による負担の違いやサポート体制の必要性などを指摘した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 標準型電子カルテの導入対象について
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 電子カルテの導入経験がある医療機関も対象に入れておくと、いろいろな課題がより見えやすいだろう。
 モデル事業の目的について、私は2つあると考える。1つは、まず電子カルテに慣れていただいて、しっかりと普及そのものを図ること。もう1つは、全国医療情報プラットフォームに乗せて、全国でその情報が共有できること。これら2点を分けて検討していただくとよい。

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■ 医療DXの想定する有用性を検証するための観点について
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 このようなモデル事業の目的から考えると、まず電子カルテに慣れていただくために、どういう仕掛けが必要か。そして、それを共有するメリットをどのように感じてもらうかを把握する必要があるだろう。
 例えば、1~2カ月ほど運用した程度で有用性を感じるかは不明だ。診療所の先生方が病院と毎日、連携しているわけではないので、情報連携による有用性を感じる事例はさほど多くないと思う。
 むしろ、電子カルテ慣れていただくために、どういう仕掛けが必要かを考える。例えば、院内において電子カルテを入れることによって非常に効率化が図れること。あるいは、いろいろな検査データもすぐ見られるようになることや、レセコンと連動して新たな診療行為が不要になるなど、そういうメリットしっかり感じていただけるようなモデル事業にすべきである。 これはα版の機能としても、ぜひ押さえておいていただきたいと思うので、そういう開発の方向性がいいのではないか。

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■ 運用について
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 電子カルテそのものの有用性と情報を共有することの有用性をしっかり分けて考えた上で、運用に関しては長島構成員もおっしゃったように、紙カルテに対する思い入れがある診療所の先生もいる。また、デジタル文字を入力することについて、高齢の先生方はまだ慣れていないなど、かなり幅があると思う。そうしたグラデーションを踏まえながら、どういうグラデーションでも対応できる体制をつくっておくべきだ。
 そして、「やっぱり電子カルテに落とし込んだほうが便利だ」と感じる先生方はどんどん電子カルテのほうに重きを置くようになると思うので、とりあえず最初は紙カルテと電子カルテを併用できるような形がいいのではないか。
 ただ、中小病院の場合には多職種等が絡んでくるので、効率的な情報共有という点で紙カルテとの併用が難しい場合もある。実は当院も恥ずかしながら、一昨年に電子カルテを導入したばかりなので、そのように感じる。導入については、一気にやるしかないかなという気がしているので、中小病院と診療所の場合を分けて考えたほうがいい。
 電子カルテを入れていない医療機関に導入する場合について、当院の例を挙げると、半年ぐらい前から準備を始めてからスタートした。導入してからは約1カ月、ベンダーの委託事業者のプロが病院に張り付いて、院内の各部署のちょっとした困り事を全部フォローしながら、2カ月後に遠隔操作できるようになり、3カ月目に、ほぼフリーで問題なく動くようになった。最初は本当に小さなことでもつまずいて、もうどうしていいかわからなくなったり、前に進めなかったりすることがあるので、導入の初期段階では、きめ細かい対応が必要だと思う。こうした対応がモデル事業の対象となるクリニックで可能なのか、検討しておく必要があるだろう。

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