「丁寧に点数を設定していただいた」 ── 介護報酬改定案に田中常任理事

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20240122_介護給付費分科会

 令和6年度の介護報酬改定案をまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「大変丁寧に点数を設定していただいた」と謝意を示した上で、今回新設される「認知症チームケア推進加算」について「利用者にとって尊厳ある名称」と評価した。

 厚労省は1月22日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第239回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に、令和6年度介護報酬改定の諮問書とともに介護報酬の見直し案などを提示。厚労省の担当者が主な改正事項について説明し、了承を得た。

 質疑で、田中常任理事は今回の改定案を評価した上で、今後に向けて診療報酬と介護報酬の谷間にある課題についても検討を求めた。

【田中志子常任理事の発言】
 これまで審議してきたことについて、大変丁寧に点数を設定していただきましたことに関しまして、まずお礼を申し上げます。
 また、認知症のチームケア推進加算につきましては、より利用者さんにとって尊厳を尊重する名称をお願いしましたところ、大変いい名称を付けていただいたかと思います。ぜひ、どんどんチームケアを推進できるような場をつくっていただければと思います。
 また、審議の中にもありましたが、研修については、もっともっと柔軟に間口を広げていただき、eラーニング、また看護師のための認知症対応力講座等、医療系で行っている講座もBPSDに関しての勉強をしていますので、そのあたりも研修に含めていただければと思います。
 次に、主任ケアマネについてですが、今回、ケアマネジャーのところにだいぶ手を入れていただきまして、ありがとうございます。ただ、以前も申し上げたとおり、主任ケアマネを取るまでの期間が非常に長くかかるのですが、長ければ質がいいケアプランが組めるという保証もございません。ここについてはケアプランの質を上げるための方策と期間の長さというものの切り離しを少し考えていただければと思います。ケアマネジャーになろうと思うスタッフがどうしても減少傾向にあります。
 続きまして、以前、お話をいたしました「要介護度ラグ」と言えるような問題について。医療と介護の連携の中で、病院で要介護認定を受けていない方が介護施設に来て、そのままお亡くなりになられた場合、本来、得られるべき要介護度の報酬よりも低くなってしまうことがあります。この点について、期中であっても早急に見直していただき、要介護度が低いために施設で受けられないことがないように、ご配慮いただければと思います。
 あわせて、医療と介護の連携の中で配置医師の活動も見直しをしていただきました。今後、ますます特養の老年科、慢性期の配置医師等は慣れた中での施設での治療にも乗り出していくところだと思います。そんな中で、現行では配置医師が行った治療について点滴等を行っても報酬が付かないのが現状です。
 看護については、専門的な資格を持つ看護師が今後、施設でますます活躍することも期待されると思いますので、そうした診療報酬と介護報酬のエポックメイキングになっているような、落とし穴みたいなところで算定できないことの不具合がないように、ということもあわせて考えていただければと思います。これについては、これからのご要望でございます。

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処遇改善加算の取得を応援したい

 質疑を終えて田辺国昭分科会長は「当分科会として諮問のとおり改正することを了承する旨、社会保障審議会長への報告として取りまとめたい」と諮り、承認された。その上で、「この後の段取りは社会保障審議会長に報告し、その後、社会保障審議会長から厚生労働大臣に答申する手順となる。ここまで何とか至り、本当にありがとうございました」と謝意を表した。

 最後に、厚労省老健局の間隆一郎局長があいさつ。「生産年齢人口の減少を考えると、今後も専門人材の確保は非常に重要な課題であるのは間違いない」と強調した上で、「今回の改定は、ある意味で賃上げのための改定。処遇改善加算を取得していただけるように精一杯応援していきたい」と述べた。

【厚労省老健局・間隆一郎局長の発言】
 田辺分科会長をはじめ、委員の皆さまにおかれましては、昨年の5月以降、特に秋は非常に日程もタイトになる中、23回にわたり大変充実したご議論をいただきました。本日、改定案に関する答申をいただき誠にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。
 いただきました答申を受けて、4月以降の施行に向けて告示・通知の発出等を進め、本日もいろいろご指摘ございましたが、円滑に周知等、準備が進められるように取り計らっていきたいと考えてございます。
 また、この場をお借りしてということをお許しいただきたいのですが、本日、ご参加の関係団体の皆さま、委員を出されている関係団体の皆さま、あるいは事業所の皆さま方には令和6年能登半島地震に関して職員の方々の派遣、あるいは被災された利用者の方の受け入れ等々、大変なお力添えをいただいておりますことに心から感謝を申し上げます。
 今現在もまだ自宅にとどまっておられる方々もいらっしゃいます。そして、金沢などに避難された方、1.5次避難所におられる方もいらっしゃいます。また、他県の病院、施設等に移られた方々もいらっしゃいます。だいぶ息の長い取り組みが必要と思いますが、引き続きのお力添えをいただきたいと思います。私ども、全力で取り組んでまいりたいと思っています。
 その上で、今回の介護報酬改定に戻りたいと思うのですが、今回、「地域包括ケアシステムの深化・推進」をはじめとする4つの柱に基づいて、ご議論をいただきました。今回は団塊の世代が後期高齢者になられる2025年の直前の最後の改定、そして、かつ同時改定ということでございました。そして、この中で、コロナ対応も含めまして、平時からの医療との連携が非常に重要であることが再認識され、そうした項目についても重要な項目を盛り込んでいただきました。
 また、今年は認知症基本法の施行の初年度でございます。こういった意味でも、先ほどもご議論ございましたけれども、認知症ケアについてもさらに深めていくような新しいな取り組みをご提案いただきましたことを感謝申し上げたいと思います。
 そして、今日もたくさんご意見をいただいておりますが、やはり介護をめぐりましては専門職種の人材確保が非常に大きな課題になっております。生産年齢人口の減少を考えますと、今後も専門人材の確保は非常に重要な課題であるのは間違いないと思っています。その意味で、今回の改定は、改定率の考え方にも示されておりますが、ある意味で賃上げのための改定であるという要素もございます。そういった意味で、処遇改善加算を、率だけではなくて使い勝手を良くする。そして、個別にも、今日の分科会で、認知症施策・地域介護推進課長から何度も申し上げましたが、取得していただけるように精一杯、応援していきたいと思います。
 それと同時に、介護職員の処遇改善加算以外の0.61%については、収支差に見られるような経営状況や、それから介護職員以外の職員の方の割合にも配慮し、また先ほどご指摘もありました小規模事業所のことも念頭に置きながら、今回このような基本報酬の配分にさせていただいたところでございます。
 いずれにしましても、今日ご指摘いただいたことも含めまして、年末に取りまとめいただいた審議報告には今後の検討課題を多数いただいてございます。こういった問題について事務局として、しっかり取り組んでまいりたいと、今回の改定の検証と併せて対応を進めてまいりたいと、このように考えてございます。
最後になりますけれども、委員の皆さま方に令和6年度改定に向けて大変熱心に充実したご議論をいただいたことに、重ねて御礼を申し上げたいと思います。引き続きのご指導を賜りますことをご依頼申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

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