「薬剤師と介護施設との連携も」 ── 医薬品の適正使用で池端副会長

審議会 役員メッセージ

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2023年4月28日の高齢者医薬品検討会

 高齢者の薬物療法の適正化を図る地域の取り組みが報告された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は介護施設との連携を図る必要性を指摘し、「薬剤師がどう関わっていくかが重要」と述べた。トリプル改定に向け、「介護保険施設だけでなく障害者施設も同様に対策が必要」との認識も示した。

 厚労省は4月28日、高齢者医薬品適正使用検討会(座長=印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)の第17回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が構成員として出席した。

 この日の会合では、令和4年度のモデル事業に採択された①広島県薬剤師会、②富山県薬剤師会、③神奈川県保険医協会、④宝塚市薬剤師会──の4団体が取り組み状況を最終報告。今後の課題などを議論した上で、令和5年度事業の対応方針を大筋でまとめた。

 池端副会長は③④の取り組みについて質問したほか、今後の対応に向けて意見を述べた。

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令和5年度事業は「業務手順書の見直し」

 この検討会は2017年4月に設置。当時の医薬・生活衛生局長は初会合の挨拶で「高齢者に大変多くの薬が出されていることが報告され、様々な診療報酬改定にもつながった」とし、「私どもが世界の先陣を切って高齢者のポリファーマシー問題に取り組んでいく必要性は高い」と述べている。

 その後、議論を重ねて「高齢者の医薬品適正使用の指針」の「総論編」「各論編(療養環境別)」などを策定。業務手順書も整備し、入院患者へのポリファーマシー対策を進めた。

 令和4年度事業では、さらに地域への面的な展開を図るため4つのモデル地域を選定。昨年11月の前回会合で中間報告、そして今回の最終報告となった。

 この日の報告などを踏まえ、厚労省は同日の会合に令和5年度事業の方針として「業務手順書の見直し」を挙げた。電子処方箋やICTを活用した取り組みを追記する予定となっている。

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【資料2】令和5年度事業(業務手順書等の見直し)について_2023年4月28日の高齢者医薬品検討会_ページ_2

■ 神奈川県保険医協会の取り組みについて
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 お薬手帳を使った取り組みは素晴らしいと思う。医療DXの実現に向けた検討が急速に進められており、電子処方箋もようやく途に就いた。まだ広く普及している状況ではないが、今後、電子処方箋が広がったとき、「電子お薬手帳」に置き換わることは可能だろうか。または、もし進めていかなければならないとしたら、どのような条件が整えば「電子お薬手帳」が良いと言えるのか。「電子お薬手帳」に必要な要素があれば教えてほしい。
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【湯浅章平参考人(神奈川県保険医協会副理事長)】
 高齢者でも何回か使って慣れてくれば、さほど大きな課題はないと思う。しかし、若い人と違って使い始めの段階では高齢者にとって難しい操作があると聞いている。私たちの病院やクリニックに来院する患者さんの多くは高齢のため、早急に「電子お薬手帳」に切り替えるのは難しいだろう。高齢者が受け入れてくれるかどうかという点で一定の時間が必要であり、やや難しい面もあると思っている。
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■ 宝塚市薬剤師会の取り組みについて
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 高齢者施設の入所者や介護職員に対して啓発活動や指導を進めている点がとても重要であると思った。来年度の診療報酬・介護報酬の同時改定も視野に入れて考えると、薬剤師がいない施設に対して薬剤師と多職種がどう関わっていくかが重要であると思う。そこで質問だが、そのような活動にかかる費用はボランティアだろうか。それとも特別な予算があるのだろうか。また、介護施設の管理者を含め、積極的に受け入れてもらえる環境だろうか。
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【畑世剛参考人(宝塚市薬剤師会)】
 現状は、宝塚市薬剤師会および補助事業として兵庫県薬剤師会に申請する形で行っている。講師料という形では、正直なところボランティアに近い金額である。この点については確かに課題として感じている。本来の業務を差し置いて時間を割いて行っているため、経営者やチェーン薬局などが関与しにくい原因になっていると思われる。勤務が休みの日にお願いする形になってしまうため、費用負担という点では今後の課題であると考えている。
 介護施設の受け入れについては、「3つの若葉を育てる会」という地域包括ケアシステム研究会を長年実施しており、施設の管理者も協力的である。コロナ禍で活動が停止してしまったのが残念だが、再開の話があれば積極的に受け入れてもらえると考えている。

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■ 地域全体への展開について
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 各地域で素晴らしい取り組みが行われているが、市や町単位が中心であり、地域全体への展開が難しい問題だと感じる。良い事例や課題について教えてほしい。隣の地域で取り組もうとすると、なかなかうまくいかないことが多いと思うが、面で展開する方法があれば伺いたい。ノウハウを全国に展開できれば、より多くの地域で効果が表れると思う。
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【永野康已参考人(富山県薬剤師会副会長)】
 富山県の取り組みは魚津市の区域で行われたが、全県下へ広げたいと考えている。5月に医師や薬剤師を交えた発表会を予定している。携わった方々を地域に呼び、実際に活動をしている様子を見せて広める計画だ。それにより、発表を聴いていない方も参加できるようにする。この取り組みを広げないと、せっかくの成果が終わってしまうのは残念だと感じており、ぜひ実現したいと強く思っている。
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■ 今後に向けた課題について
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 来年度のトリプル改定に向けて中医協と介護給付費分科会の意見交換会が開催されている。医師や薬剤師が常駐していない介護保険施設等へのポリファーマシー対策もテーマになり、既に議論が進んでいる。局が異なるが連携を取り、方向性を共有することで良い成果が早く得られるだろう。介護保険施設だけでなく障害者施設も同様に対策が必要である。それらも含めて適切な対策を取ることが望ましいと考える。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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