看護の処遇改善に関する調査を ── 入院外来分科会で井川副会長

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2022年7月20日の入院外来分科会

 令和4年度改定を踏まえた入院医療等の調査案が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「看護の処遇改善に関する調査をどこかに入れていただきたいが、その予定はあるだろうか」と尋ねた。厚労省の担当者は「ご意見として頂戴しておきたい」と答えた。

 厚労省は7月20日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の令和4年度第4回会合をオンライン形式で開催し、当会から井川副会長が出席した。

 厚労省は同日の分科会に、令和4・5年度に実施する調査項目やスケジュールなどを示し、委員の意見を聴いた。調査項目は令和4年度が7項目、令和5年度が4項目となっている。

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04_【入-3】令和4・5年度入院・外来医療等の調査について_2022年7月20日の入院外来分科会

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外れ値は数病院、「個別対応でいい」との声も

 この日の分科会では、10月からスタートする看護の処遇改善措置をめぐる議論もあった。厚労省は同分科会に、補てんのバラツキが小さいモデル「①-2」と「③-2」に絞った分析データなどを提示。補てんに必要な点数が高い「外れ値」への対応策などを検討した。

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61_【入-1」看護の処遇改善について_2022年7月20日の入院外来分科会

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 厚労省の分析によると、全医療機関の97.7%をカバーする基準を超えてしまう「外れ値」の病院は、入院料をベースに考えるモデル「①-2」で37施設あり、このうち最も高い点数は8施設あった。

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63_【入-1」看護の処遇改善について_2022年7月20日の入院外来分科会

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 これら8施設のうち100床未満の小規模病院が6施設だった。質疑で猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「非常に小規模な医療機関が多い」と指摘。コロナによる影響や時期的な変動などの要因を挙げ、「数病院であれば個別対応でいいのではないか」と提案した。

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64_【入-1」看護の処遇改善について_2022年7月20日の入院外来分科会

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 井川副会長は「外れ値となる病院に対しては別の観点から考える必要がある」と述べた。

■ 令和4・5年度入院・外来医療等の調査について
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 令和4年度改定の附帯意見に基づく調査について異論はない。ただ、看護の処遇改善に関する調査をどこかに入れていただきたい。看護の処遇改善は、大臣折衝により「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員」が対象となっており、「救急搬送件数200台/年以上」や「三次救急を担う」などの医療機関である。
 ところが、現状はそういう医療機関だけではない事態になっている。そこで、現状も踏まえた調査を加える必要があると考えているが、そのような調査も同時に実施する予定はあるだろうか。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 現時点でご提案している内容に看護職員の処遇改善に関する調査は入れていない。ただ、井川先生が今おっしゃられたように、今回の設計について、そもそもそれが正しく行き渡っているかどうかということに加えて、「他の医療機関も」というようなご指摘、ご意見としては頂戴しておきたいと思う。
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■ 看護の処遇改善に向けた調査・分析について
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 詳細にデータを分析していただいた。特に「高い必要点数となる医療機関の分析」は非常に興味深い。先ほど猪口委員がおっしゃったように、高い必要点数となる「外れ値」の施設には小規模病院が非常に多いと感じている。
 例えば、資料64ページ(特別調査において必要点数が100点を超える37施設についての詳細)で、最も高い点数の病院を見ると、病床数は100床未満で在棟患者延べ数が1万人未満。病床数が少ないから当然こうなるのだと思う。看護職員数は外来も病棟も手術室も50人未満と少ない。
 一方で、外来患者延べ数は5万人以上10万人未満と非常に多い。ちょっと偏った病院ではあるが、入院料に加算する「①-2」のモデルでは「外れ値」の施設となっている。
 これに対し、外来部門(初・再診料)も考慮したモデル「③-2」では、上記の病院はどこかに行ってしまう。「高い必要点数となる医療機関」に同じ形態の施設が存在しなくなる。すなわち、外来も含めた場合には「外れ値」から外れてしまう。
 大阪には独立型の救命救急センターがある。30床ぐらいの小さな病院だが、救急車がばんばん来て外来患者が非常に多い。そういう病院が「外れ値」ということになると、経営的に非常に苦しくなるのではないか。そのため、「外れ値」となる病院に対しては、先ほど猪口委員がおっしゃったように少し別の観点から考える必要があると思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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