看護の処遇改善、「運用後に状況調査を」 ── 中医協分科会で井川常任理事

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2022年6月10日の入院外来分科会

 看護の処遇改善措置についてシミュレーションを踏まえて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は「急性期で救急搬送が非常に多い病院の看護師が対象で、かなり制限されている」と改めて指摘した上で、「運用後に状況調査をして、どういう配分がなされたかなどを把握すべき」との考えを示した。

 厚労省は6月10日、中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和4年度第3回会合をオンライン形式で開催し、当会から井川常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に「看護の処遇改善について(技術的検討において必要な調査・分析 その3)」と題する資料を提示。実際に点数化した場合にどのようになるかをシミュレーションしたモデルを示し、委員の意見を聴いた。

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34_【入-1】看護の処遇改善に向けた技術的検討において必要な調査・分析(その3)_2022年6月10日の入院外来分科会

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 この日の議論では、モデル①から④のうち、「分散」が少ない①-2、③-2を支持する意見が多数を占めたが、その中で見解が分かれた。「シンプルな設計にする観点から①-2」との意見に対し、「外来も考慮する③-2のほうがいい」との意見もあった。井川常任理事は、③-2を支持した。

【井川常任理事の発言要旨】
 まず、「看護職員数と入院料算定回数の相関関係」について、相関係数が0.94という非常に高い係数にとても驚いている。これを見ると、入院料の算定回数で、ほとんどの看護師の数をある程度把握できるというぐらいの相関係数になっている。これほどのシミュレーションをしていただいたのは非常に感謝している。
 ところで、先ほどから意見が出ている乖離の状況については、モデル①-2と③-2が、分散が最も少なくて妥当だと思う。10ページの「中医協における主な指摘」にあるように、入院患者だけが負担することについては合理的な説明が必要であるという点で考えると、菅原委員がおっしゃるように、入院だけではなくて外来患者からも取れる③-2が一番適当ではないかと思っている。④-2では点数の種類が多くなる。そう考えると、現実的には③-2を中心に考えるべきだと思っている。
 先ほど、小池委員から乖離額も考慮すべきとの意見があった。この乖離のヒストグラムが全て5%という値で出ているが、5%を金額に換算すると、例えば下世話な話だが、500人の看護師がいる病院の場合では年間8,400万円ぐらいの賃上げをしなければいけない。そうすると、その5%といえども400万円を超えてしまうことがあるので、ここの部分はもっと細かく出していただいたほうがいいと思う。
 今回の調査は既存の入手可能なデータから得られたものだが、今後、このような処遇改善が継続的に続いて、次回の診療報酬改定でも手当てするのであれば、実際に運用された場合にどうなったかを必ず把握していくような調査もあわせて実施する必要がある。
 今回の処遇改善措置は、急性期で救急搬送が非常に多い病院の看護師が対象である。このようにかなり制限された病院だけになっているので、運用後に状況調査をして、特に、どういう配分がなされたかなどを把握すべきである。看護師だけでなく各職種に配分された病院、あるいは看護師だけに配分した病院など、しっかりと把握していく必要があると思うので、今回の点数配置以外の部分も、今後しっかりと詰めていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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