オンライン導入の見積額、「本当に正しいのか」 ── 池端副会長、情報共有などを提案

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2022年1月27日の医療保険部会(ベルサール神田)

 オンライン資格確認システム導入の加速化プランが示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「見積額が本当に正しいのかが全く見えない」などの課題を挙げ、中小規模のベンダーも含めた情報共有などを提案した。

 厚労省は1月27日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第150回会合を一部オンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省はこの日の部会にオンライン資格確認システムの現状を報告した上で、導入のボトルネックを探るために実施した調査結果などを提示。それを踏まえた加速化プランを挙げ、「定期的に見直しながら取り組んでまいりたい」と説明した。委員からは好意的な受け止めがあった一方、課題を指摘する意見もあった。

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Photo01_2022年1月27日の医療保険部会(ベルサール神田)

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システム事業者を通じた働きかけも

 質疑で、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「本日の資料には、これまでよりも相当踏み込んだ具体的な取り組みが示されている」と評価し、「資料に書かれていることに基づいて強力に推進をお願いしたい」と期待を込めた。

 この日の会合で厚労省が示したのは「オンライン資格確認の導入加速化に向けた集中的な取組について」と題する資料。それによると、①医療関係団体による「推進協議会」の設置、②診療報酬による評価、③医療機関・薬局への支援・働きかけの実施──の三本柱で、このうち①は「準備中」、②は「中医協で審議中」としている。

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01スライドP12_【資料1】オンライン資格確認等システムについて_2022年1月27日の医療保険部会

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02スライドP13_【資料1】オンライン資格確認等システムについて_2022年1月27日の医療保険部会

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 このほか、「未申込施設も含めた働きかけの実施」と題し、「システム事業者を通じた働きかけも行っていく」との方針も示した。

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03スライドP14_【資料1】オンライン資格確認等システムについて_2022年1月27日の医療保険部会

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診療報酬による評価、「疑問が残る」

 安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「さまざま観点からの対策を実効的・複合的に進め、令和5年3月末までに、おおむね全ての医療機関・薬局で導入という目標達成に向け、集中的に取り組んでいただきたい」とした上で、診療報酬による評価について難色を示した。

 安藤委員は、個別改定項目について審議した前日の中医協を振り返りながら、「マイナンバーカードを持って行かなかった患者などにも加算が適用される」と改めて指摘。「オンライン資格確認の導入加速への効果に疑問が残るため、今後も引き続き中医協でよく議論したい」と述べた。

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中小規模のベンダーも含めた検討を

 加速化プランのうち個別の支援や働きかけについては、大手システム事業者を中心とした「システム事業者導入促進協議会」の設置について意見があった。

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04スライドP21_【資料1】オンライン資格確認等システムについて_2022年1月27日の医療保険部会

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 森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は中小の事業者も入れた検討を要望。厚労省の担当者は「中小のシステム事業者の団体などにも参画いただきながら、課題をきちんと拾い上げて対応していきたい」と述べた。

 こうした議論を踏まえ、池端副会長は「中小規模のベンダーも含めて課題を挙げ、共有して、同じシステムを使うことによって安価にできるのであれば、それを取り入れていただきたい」と提案した。

 このほか、同日の部会では令和4年度予算案(保険局関係)などの報告もあった。「公的部門における分配機能の強化」として看護職らの収入引上げに395億円、このうち保険局分は100億円となっている。

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05スライドP05_【資料3】令和4年度予算案(保険局関係)の主な事項_2022年1月27日の医療保険部会

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 池端副会長は看護補助者などへの対応について質問。「対象範囲を広げれば当然、全体的に薄くなってしまう可能性が高い」と指摘した上で、「これは10月以降、中医協で決めるという理解でいいだろうか」と尋ねた。厚労省の担当者は「それぞれの医療機関の判断によって、ほかの職員にも使うことができる」と述べるにとどめた。

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Photo02_2022年1月27日の医療保険部会(ベルサール神田)

■ オンライン資格確認等システムについて
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 3つの重点的な取り組みということで、私どもの所属している医療関係団体による「推進協議会」の設置の準備が進められている。これは非常に有効だと思う。私自身も県医師会を預かる者の1人として、しっかり取り組んでいきたい。
 重点的な取り組みの中で「診療報酬による評価」も挙げられている。診療報酬によるインセンティブは中医協で議論中であり、支払側委員から「ペナルティみたいなものではないか」という懸念も示されているが、マイナンバーカードを持ってきていただくことによって患者側にもメリットがあることをみんなで共有して、マイナンバーカードを持ってくるようにしようという促進策の1つとして、期限つきの診療報酬ということであれば十分理解できる。中医協でまた議論していきたい。
 また、「システム事業者導入促進協議会」の立ち上げは非常にありがたいと思うが、私ども県医師会のレベルでも聞き取り調査をすると、数百万の導入費を要求されて値段交渉ができない状況にある。レセプトコンピューターはもう変えるわけにいかないので、その担当しているベンダーさんから「この金額で」言われてしまうと、二の足を踏んでしまうことが多い。
 では、なぜこんなに高いのか。今、森委員もおっしゃったように、いろいろな手続上を含めて、このシステム事業者の協議会で検討してほしい。特に、中小規模のベンダーさんも含めて課題を挙げていただき、場合によっては、それを共有して、同じシステムを使うことによって、ぐっと安価にできるということがあれば、それを取り入れていただきたいと思う。見積額が本当に正しいのか、全く見えていない。そのために二の足を踏んでいる医療機関も多いのではないかという印象を持っている。こうした問題もぜひ協議していただきたい。なぜ高額になっているのか、中小ベンダーの見積額の差はどこで出ているのかも検討してほしい。

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■ 令和4年度予算案(保険局関係)について
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 資料5ページの「公的部門における分配機能の強化」について、私は前回のこの部会で、看護補助者も入るかと質問させていただいた。この記載を見ると、「10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みを創設」となっている。
 これは看護職を対象にという書きぶりだと思うが、「注2」では、看護補助者も含まれている。月額平均12,000円相当を看護補助の職員も対象にということで、この範囲を広げれば、当然、全体的に薄くなってしまう可能性が高いのではないかと思う。そこも含めて、今後、10月以降に中医協で決めるという理解でいいのかどうか質問したい。
 もう1つは、私の理解不足かもしれないが、「不妊治療の保険適用 145億円」について。これは診療報酬で0.2%としている額の中に含めるものか、それ以外のことなのか、その辺の意味合いを理解していないので教えていただきたい。
 一方で、4月から保険適用になるが、年度をまたぐ国庫補助事業で実施されているものもある。国費で動いている体外受精、顕微授精等々に関しては、一部国費を続けなければいけないのではないか。そうした費用は、この「145億円」の中に含まれているのかどうかも教えていただきたい。

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【厚労省保険局総務課・榊原毅課長】
 まず1点目、看護補助者が入るかどうかについて、ご理解のとおり、1万2,000円の積算上は看護職員ということである。そこから先は、それぞれの医療機関の判断によって、ほかの職員にもそれを使うことができる。
 2つ目。不妊治療の保険適用の145億円というのは、プラス0.20%の国費相当分ということであるので、同じものである。
 3点目。今、助成で不妊治療を受けられている方が年度をまたぐ場合がある。こちらについても予算措置を別途、講じている。ただし、これは、この中には入っておらず、保険局分を載せているので、他部局のものとして計上されている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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