看護補助者の活用、「処遇改善もセットで評価を」 ── 短冊の議論で池端副会長
看護補助者の評価について「ケアの質まで含めた検証が必要」との慎重論が出た会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、看護補助を担う介護人材の確保が困難な状況を改めて強調した上で「研修と処遇改善をセットでしっかり評価していただきたい」と求めた。
厚生労働省は1月28日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第514回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。
この日の総会では、前回26日に引き続き「短冊」と呼ばれる個別改定項目のうち、①Ⅱ、②Ⅲの残り、③Ⅳ──について質疑を3回に分け、約1時間にわたり委員の意見を聴いた。答申書の附帯意見の素案も示された。
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「質の担保を確認してから」と支払側
質疑で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「働き方改革等の推進について1点だけコメントする」と前置きして、項目Ⅱ-4の「⑤ 看護補助者の更なる活用に係る評価の新設」について意見を述べた。
松本委員は看護補助者について「資格職ではない」との認識を示した上で、「現段階では、研修の充実を求めた上で、質の担保を確認してから次回以降の改定で評価を引き上げるというのが当然の流れ」と述べた。
厚労省は短冊の中で「看護補助体制充実加算」の新設を提案。その具体的な内容として、「看護補助者との業務分担・協働に関する看護職員を対象とした研修の実施等、看護補助者の活用に係る十分な体制を整備している場合の評価」としている。
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「ぜひ今改定で評価して」と専門委員
松本委員は「医師事務作業補助者のように質の高い看護補助者の配置の実績を評価するのであれば、まだ合理的と考えるが、今回の案は研修内容が不明確なまま体制の評価を先にあてるように見える」と苦言を呈し、「どういった研修をするのか、まずご説明いただきたい」と求めた。
この発言を受け、小塩隆士会長はまず吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)に意見を求めた。吉川専門委員は、看護補助者への研修に既に取り組んでいることや、研修テキストなども整備されていることを詳細に説明。「ぜひ今改定で評価していただきたい」と強く要望した。
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「看護、ケアの質を高めていく」と厚労省
続いて厚労省保険局医療課の井内努課長が発言。「看護の質、ケアの質を高めていくことが喫緊の課題である中で、看護職員から看護補助者へ適切な業務委譲が行われることが必須」との考えを示した。
その上で、看護補助者への研修内容について「患者の日常生活に関わる業務内容、範囲や手順、留意点等を示した業務マニュアルの作成、当該マニュアルを用いた院内研修」などを挙げ、「これらによって質の高い看護補助者への業務委譲がしっかりと行われていくことを想定している」と期待を込めた。
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「人材確保がさらに困難」と池端副会長
こうした説明を受け、松本委員は「そうしたものが現場の隅々まで行き渡ることを期待する」と理解を示しながらも、「まだこれからという感じも十分に受け止めたので、評価は十分に抑えたかたちで実施いただきたい」と付け加えた。
この日に示された短冊では、点数の欄がまだブランクになっている。
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池端副会長は、介護施設の介護職員との格差を早急に是正する必要性を強調。病院で看護補助を担う介護職の採用が難しいことを挙げ、「看護補助者がどんどん少なくなっている。人材確保がさらに困難になっている」と見直しを訴えた。
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■ 看護補助者の評価の新設について
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松本委員がご発言した点について、少し補足したい。吉川専門委員からも説明があったように、看護補助者の教育や研修、そして待遇改善は両方とも大事なポイントだと思う。
松本委員から「教育、研修がまず先ではないか」といったご意見をいただいたが、そもそも、医療機関において看護補助者の多くを占める介護職員の処遇がかなり劣っている。平均より大きく落ちていることは以前から指摘している。
前回の総会でも述べたが、介護報酬における介護保険施設の介護職員等に対しては、ずいぶん前から処遇改善が最初は交付金で、そして今は報酬の中で加算というかたちで処遇されている。前回の公聴会で意見発表者が述べたように、看護補助者の主たる介護職員の採用が非常に難しくなっている。現場では看護補助者がどんどん少なくなっている。
もちろん、研修や教育も非常に重要であると思うが、看護補助者になりうる人材が現場からいなくなってしまったのでは元も子もない。
そのため、介護施設の介護職との差をなくし、早く追いつくようにしないと、医療機関では看護補助者の人材確保がさらに困難になってくる。そういう現実があることを、ぜひご理解いただきたい。教育や研修と処遇改善は今回の改定で、ぜひセットでしっかり評価していただきたいというのが現場からの意見である。
(取材・執筆=新井裕充)
2022年1月29日