CV抜去の見込み期間、「意図が分からない」── 入院調査について井川常任理事

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中医協入院分科会(令和2年度第2回)_20201022

 日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は10月22日、令和4年度改定に向けて入院医療に関する調査票の原案などを審議した厚生労働省の会議で、中心静脈(CV)カテーテル抜去の見込み期間に関する設問について「意図が分からない」と指摘した。厚労省の担当者は「特段、ここに意図を持っているわけではない」と説明した。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の令和2年度第2回会合をオンライン形式で開催した。

 前回9月10日の会合では調査内容をまとめ、16日の小委員会、総会で了承を得た。これを受け、厚労省は今回の分科会に具体的な設問(調査票)の原案を提示。190ページに及ぶ調査票のうち、新設の項目を中心に説明した上で委員の意見を求めた。

 前回改定時に大きな議論になった中心静脈栄養については、開始の契機や継続理由などを詳細に調べる内容。CV抜去の見込みについては6つの回答が用意されている。
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P127__【入-1-1参考1】令和2年度第2回入院分科会_20201022
    2020年10月22日の中医協・入院分科会資料「入-1-1参考1」P127から抜粋
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半年前後ぐらいで切ればいい

 質疑で井川常任理事は、CV抜去の見込みに関する回答が「近日中」「3ヶ月以内」「半年以内」などに細かく分かれている点を指摘。「予想するのが非常に厳しい。そういう判断を下しにくい。例えば、長期か短期か、そのぐらいのレベルであれば判断はできる」とし、「この設問の意図が少し分からないので教えてほしい」と尋ねた。

 厚労省の担当者は「特段、ここに意図を持っているわけではない」と答えた上で、「3カ月、6カ月、1年という切り方がかなり細かすぎるか、ご意見を頂ければ受け止めたい」と意見を求めた。

 井川常任理事は「その期間で抜けるかどうかを評価するのであれば、半年前後ぐらいで切ればいい」と提案した。

 井川常任理事はこのほか、新型コロナ対策に関する設問や特定看護師の配置に関する設問について見解を述べたほか、回答者の負担を軽減するために調査票を色分けすることなどを提案した。

 井川常任理事の発言要旨は以下のとおり。

■ 新型コロナ対策に関する設問について
 私は今回の新型コロナ対策に関する設問に関しては、かなり評価している。新型コロナの影響に関する項目では、病床利用率をはじめとして、いくつかの項目について毎月数値を出すように仕様を変更していただいた。これは私もお願いをした点であり、反映していただいたことに感謝している。
 ご存知のように、コロナ陽性患者の治療に当たった急性期病院や地域包括ケア病棟を持つ病院に対し、その後方支援を担う回復期や慢性期の病院などでは入院患者数などの影響に1~2カ月程度のずれが起きている。そうしたところをしっかり把握していくためには毎月のデータを取ることが必要であり、煩雑でも、やむを得ないと考えている。
 慢性期医療に関わる者として、前回お示しいただいた案では回復期と慢性期の影響が把握しにくいと感じていたので評価している。感謝を申し上げる。

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■ 回答の負担軽減について
 地域一般入院料や地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料を届け出ている医療機関に関する調査票は、地域一般、地ケア、回リハの病院群がまとまっている。ほかの病院群の調査票に比べて非常に膨大な量になっており、ページを飛ばしながら回答しなければならない。非常に手間がかかる。
 最近、機能分化に向けて棲み分けができている中で、書ける欄と書けない欄が多くある。結果的に、調査票の上のタグの所に「この入院基本料を取っている病院はお書きください」という記載が非常に増えている。
 そこで例えば、カラータグを付けるなどすれば、地域包括ケア病棟はそのカラーの票だけを追いかけて回答すればいい。こういう形に工夫できないものだろうか。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 ご指摘の点は広い意味で回答者の負担軽減である。間違いを少なくするという意味でも、何か工夫できればいいと思っている。
 一方で、共通項目もあるため、例えば黄色と赤、黄色と青にして緑を作るなど、あまり答えの見えない作業になるようにも思う。
 回答者側が混乱をしないように、あっちに行ったりこっちに行ったりしなくていいようにという点で、今一度、この質問の項目を整理している業者に指示したい。色にするかどうかはさておき、回答者が混乱をしないような工夫という点で、少し調整したいと思っている。

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■ 特定看護師の配置に関する設問について
 私が前回の分科会で要望させていただいた特定行為研修修了者の影響に関する項目について、今回の調査票では看護師の配置に関する設問に反映していただいた。
 具体的には、「貴病棟に配置されている職員数」の設問に対する回答の「看護師」の箇所で、「(うち)特定行為研修修了者」という1行を入れていただいた。
 特定看護師は、2025年までに10万人を目標とした非常に大きな事業である。しかし、現在まだ3,000人弱であり、インセンティブもほとんどない状況である。
 今回、特定看護師の配置についてDPCデータのEFファイル等と突き合わせて調査していただくことにより、今後、何らかの結果が出るのではないかと非常に期待しているので、その評価をよろしくお願いしたい。

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■ CV抜去の見込み期間について
〇井川常任理事  
 CVに関して、その後どうしていくかの評価が必要ということで、中心静脈栄養について、いろんな項目を入れていただいた。嚥下訓練をしているか、抜去に向けて進んでいるかなどを評価していただいている。その中で、抜去の見込みについて「近日中に抜去予定」「3ヶ月以内」「半年以内」と「1年以内」などの回答がある。
 嚥下訓練をして予想すると、3カ月、6カ月、1年という判断は非常に厳しいと言うか、そういう判断を下しにくいところがある。例えば、長期にかかるか短期にかかるか、そのレベルぐらいであれば、まだ判断はできると思う。この設問の意図が少し分からないので教えていただきたい。

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〇厚労省・金光課長補佐
 CVの抜去の見込み期間の切り方だが、われわれは特段、ここに意図を持っているわけではないので、先生方のご意見の中で、3カ月、6カ月、1年という切り方がかなり細かすぎて、むしろ1年という単位の中で抜けるか抜けないかくらいがいい、もしくは半年かもしれないが、そのあたりについて、ご意見を頂ければ、われわれとしては受け止めさせていただけると思っている。
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〇井川常任理事
 嚥下訓練と言うと、例えば脳疾患にしても半年間の一応の訓練の期間というものがあるので、その期間で抜けるかどうかという評価をするのであれば、「半年未満」と「半年以上」というぐらいのレベルが妥当ではないかと思っている。
 それ以上になると、だいたい普通の方はまず抜けない。経腸栄養に移行すれば別だが、経腸栄養に移行できるかという評価もおそらく半年以内ではされるであろうから、そういう点で言えば、抜けるか抜けないかの判断は半年前後ぐらいで切ればいいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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