ICTの活用に向け、「様式の統一化を」 ── 厚労省の会合で橋本副会長

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介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会_2020年11月13日

 ICTのさらなる活用に向けて、日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は11月13日、介護文書に関する会合で「将来的にICTの活用を全国的に進めることを考えれば、『統一化』の方向を目指すべきではないか」と提案した。

 厚生労働省は同日、社会保障審議会介護保険部会の下に設置された「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(委員長=野口晴子・早稲田大学政治経済学術院教授)の第7回会合を開き、令和2年度中の取組について議論した。

 この会議は、保険者や事業者の間でやり取りされている介護文書に関する負担を軽減するため2019年8月に検討を開始し、昨年12月に「中間取りまとめ」を公表した。その後、今年3月に今後の進め方などを議論し、今回の会合を迎えた。
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P2_「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料_2020年11月13日

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「1年~2年以内」の方向性を議論

 会議の冒頭、座長を務める野口委員長が「中間取りまとめでは、簡素化・標準化・ICT の活用という3つの視点に立ち、文書負担軽減に資する取組を整理した」と経緯を説明した。

 その上で野口委員長は、これらの取組の実施スケジュールについて「令和元年度内」「1年~2年以内」「3年以内」の3区分で明示したことを伝え、「本日は『1年~2年以内』の取組とした事項を中心に事務局から現在の検討状況の報告を受けるとともに、その検討の方向性について皆さんと議論を進めてまいりたい」と述べ、議事に入った。
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P1抜粋_「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料_2020年11月13日

2020年11月13日の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料P1から抜粋
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統一様式の活用は「7割前後の実施率」

 会合で厚労省老健局総務課の福田悠課長補佐は、「1年~2年以内」の取組の進捗状況を報告する中で、インセンティブ交付金の評価指標に文書負担の軽減を追加したことを紹介した。

 福田補佐は、その評価指標の結果について「指定申請の提出項目削減は、ほぼ100%の都道府県の皆さまに取り組んでいただいている」としながらも、「Excel に統一した様式の活用や実地指導の標準化・効率化などは7割前後の実施率となっている」と課題を提示。「これらについて100%にするためにはどうしたらいいかを検討したい」と述べた。

 その上で、「簡素化・標準化」に関する論点として、押印の見直しや勤務表の簡素化・標準化など7項目の論点を挙げ、意見を求めた。
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01_P20_「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料_2020年11月13日

2020年11月13日の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料P20から抜粋
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 このうち「押印の見直し」については、デジタル化の推進を掲げる政府の方針などを紹介した上で、「指定申請・報酬請求に関し事業所が自治体に提出する文書について(中略)押印は求めないこととし、参考様式の押印欄についても削除してはどうか」と提案し、了承された。
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02_P26_「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料_2020年11月13日

2020年11月13日の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料P26から抜粋
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事務連絡に「かなり多くのご意見を頂いた」

 勤務表の様式に関する「論点⑤」については、「必要項目を満たしていれば、各事業所で使用するシフト表等の提出により代替することで可能とする」との方針を示し、大筋で了承された。
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03_P59_「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料_2020年11月13日

2020年11月13日の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」資料P59から抜粋
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 勤務表の様式について厚労省は、自治体や事業者から寄せられた意見などを踏まえて全サービス種別の「参考様式」を作成し、9月30日付けで事務連絡を発出している。

 これについて、厚労省の福田補佐は「かなり多くのご意見を頂いた」と伝えた。
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次回の事務連絡では「取扱いを明確に」

 福田補佐は会合で、「必ずこの様式を使わなければならないのか、既に使用している独自の勤務表を引き続き使用したいといった意見も頂いた」と報告した。

その上で福田補佐は「事務連絡の内容が様式改訂という形で出してしまったので、この取扱いに気づいていない方も多く見受けられた。次回の事務連絡を発出するにあたっては、この取扱いを明確にして周知したい」と説明し、了承された。

 橋本副会長は「現在使っている様式がそれぞれあるのはよく分かる」としながらも、「将来的にICTなどの活用を全国的にしっかり進めていくのであれば、移行期間を設けながら、やはり様式の統一ということを今の時期からやっておいたほうがいいのではないか」とコメントした。

 橋本副会長の発言要旨は以下のとおり。

【橋本康子副会長の発言要旨】
 文書の軽減化や簡素化はとても大事であり、良いことだと思う。簡素化だけではなく、標準化も進め、ICTの活用につなげていくことが今後の方向性であると思う。
 このうち「標準化」について、例えば勤務形態の一覧表の様式化も課題になっている。従業者の勤務体制や勤務形態一覧表については、皆さんが現在使っている様式がそれぞれあるのはよく分かるのだが、すぐには難しくても、将来的にICTなどの活用をしっかり全国的に進めていくとすれば、移行期間を設けながら、やはり様式の統一を今、この時期から進めていくことが先々、ICTになるときに便利であり、その方向に進みやすいのではないか。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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