退院前訪問で減算、「緩和してもいいのでは」── 10月3日の入院分科会で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_20191003中医協入院分科会

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は10月3日、入院医療について審議した厚生労働省の会議で、退院前訪問指導料を算定できない理由に言及し、「病棟の看護師や専任の理学療法士が訪問した場合には施設基準上、その時間を減算しなければいけない」と指摘した上で、「患者さんのためにという視線で考えれば、専従、専任の要件などを少し緩和してもいいのではないか」と提案した。
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※ 資料等は → https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000183658_00017.html
  説明等は → http://chuikyo.news/20191003-report/
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 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和元年第9回会合を開き、中医協総会に示す最終報告書の策定に向けて議論した。
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20191003中医協・入院分科会
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 厚労省は同分科会に示した資料の中で退院前訪問指導料などを挙げ、「各加算の算定状況や、その他の取組の実施状況等を踏まえ、入院患者に適切な医療・ケアを提供する観点から、これらの加算の要件等についてどのように考えるか」との論点を示した。
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「業務が多忙で指導時間を確保できない」(43.5%)が最多

 調査によると、退院前訪問指導料の算定件数は前年度から横ばいで2,536施設。同指導料を算定していた施設の算定患者数は、3カ月間の平均2.0人で、「1~5件未満」が93.1%だった。退院前訪問指導料を算定した病棟において、訪問した職種は看護師と理学療法士等が多かった。

 退院前訪問指導料を算定していない理由(複数回答)については、「業務が多忙であり、指導を行う職員が指導時間を確保できないため」(43.5%)が最も多く、次いで「在宅療養上指導を必要とする対象者がいないため」(42.2%)との回答が多かった。

 一方、「保健師や看護師が訪問指導に従事すると、入院基本料等の施設基準を満たせなくなるため」(14.5%)、「理学療法士や作業療法士等が訪問指導に従事すると、施設基準を満たせなくなるため」との回答もあった(8.2%)。
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054_資料「入-1」(2019年10月3日の中医協入院分科会)

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患者さんのために訪問しているのに

 質疑で、池端副会長は「算定していない理由の中で少ない所に着目したい」と切り出し、看護師や理学療法士らの訪問が難しい現状を説明。「適時調査などでは、例えば会議に出ている30分は時間を差し引くように指導されるので、人員がギリギリの病院では訪問できない。同様に退院前訪問についても、入院患者さんのために訪問しているのに、たまたま病棟にいないだけで施設基準上は働いていないことと同じようにカウントしなければいけない」と指摘した。

 その上で池端副会長は、働き方改革などにも触れながら「本当に患者さんのためにという視線で考えれば、専従や専任の要件を少し緩和してもいいのではないか」と提案。さらに「退院後の訪問に関しても同じような条件で行けない病院があるので、ぜひご検討いただきたい」と求めた。
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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_20191003_中医協入院分科会

【池端副会長の発言要旨】
  スライド54の「算定していない理由」の中で少ない所に着目したい。複数回答で「保健師や看護師が訪問指導に従事すると、入院基本料等の施設基準を満たせなくなるため」が14.5%、「理学療法士や作業療法士が訪問指導に従事すると施設基準を満たせなくなるため」は8.2%。この理由からもわかるように、退院前訪問指導のために病棟の看護師あるいは専任の理学療法士が訪問した場合は施設基準上、その時間を減算しなければいけない。適時調査などで、かなり時間が厳しくて、例えば会議に出ていても「その30分は引きなさい」と言われることがある。そのため、人員がギリギリの所はなかなか算定できない。
退院前訪問指導は入院患者さんのために行っているのに、たまたま病棟にいないだけで、施設基準上は働いていないことと同じようにカウントすべきとされている。入院している患者さんのために働いていることに対して、施設基準上、それを外すというのはいかがなものかと感じる。
 ここで議論することではないかもしれないが、しかるべき所でぜひ検討していただきたい。働き方改革や患者さんのためにという視線で考えれば、専従や専任の要件を少し緩和してもいいのではないか。
 さらにそれを言えば、急患対応のために病棟から外れた時に「専従から外しなさい」と言われて指導を受けた病院もある。専従や専任要件については、近年の改定で少し緩和されてはいるが、何らかの一定の条件を付けて、もう少し緩和する方向も考えていただけるといい。そうすれば、退院前の訪問指導がもっと進むのではないか。退院前訪問指導料は、非常にアウトカムがある指導料だと思うし、退院後の訪問に関しても同じような条件で行けない病院があるので、ぜひご検討いただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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