「第142回社会保障審議会 介護給付費分科会」 出席のご報告

会長メッセージ 官公庁・関係団体等 審議会

第142回介護給付費分科会 ブログ原稿

 平成29年7月5日(水)、「第142回 社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。会議では下記の議題が話し合われました。

 1.平成30年度介護報酬改定に向けて
   (訪問介護及び訪問入浴介護、訪問看護、居宅介護支援 ※、共生型サービス)
   ※居宅介護支援は他の検討内容の時間が押したため、次回以降の検討となりました。
 2.その他

(第142回介護給付費分科会 資料)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000170293.html
 
 今回の介護給付費分科会では事務局より、まず平成30年度介護報酬改定に向けて、「訪問介護及び訪問入浴介護」が論点として提示されました。

○生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準及び報酬について、要介護者に対する生活援助の意義を踏まえ、どう考えるか。
○「生活援助」のみの利用状況については月31回以上の利用者が一定程度いる中で、身体介護も含めた訪問介護の報酬のあり方について、どう考えるか。
○集合住宅におけるサービス提供の適正化について、どう考えるか。
○主として身体介護を行う者と生活援助を行う者の役割分担を進めていくことが重要との意見がある中で、サービス提供責任者の役割や任用要件について、どう考えるか。
○身体介護における自立生活支援のための見守り的援助について、どう考えるか。また、生活機能向上連携加算の取得状況を踏まえ、リハビリテーション専門職の意見を踏まえた訪問介護の実施について、どう考えるか。

【武久洋三会長の「訪問介護及び訪問入浴介護」に関する発言】
武久洋三会長平成29年7月5日(水) 急性期後の医療と介護の連携の部分を事業として行っている者として意見を述べたい。

 平成30年は診療報酬と介護報酬の同時改定であり、毎年、両方の報酬の予算が増えていく中でも削減していくところは削減している現状は、事業者としては厳しいところである。しかし、日本のことを考えると、そもそも制度を続けることができるのかと、一人の国民として心配に思うところがある。
そのため効率化という観点でよいところは評価しつつ、あまりよくないところは評価しないということを明確に示していくという、官公庁の側での適切な判断が必要であろうと思う。

 さて介護保険では要介護度が改善すると、状態が良くなったのに悲しむという、あり得ないマインドが蔓延しているところがある。
 こうしたマインドが生まれたのも、平成12年に介護保険が創設された時に、少し大盤振る舞いをしすぎていたからではないかと思う。その中でもメインの生活援助については特に感じている。

 健康時ではない時に要支援または軽度要介護者に生活援助と身体介護を一緒に行うというのは理解できるが、要介護や要支援の人に対して生活支援だけのサービスがあるということに疑問を抱いている。生活援助については以前の改定の際に削減されていて、それはよい方向であると思う。

 ただ現状では国民には受けられるサービスは受けた方が得だ、サービスが受けられるためには要介護度の重い方がサービスを受けられるので得だ、といったマインドが蔓延しており、単に生活援助とか軽度要介護者への身体介護などで利益率を高くしていこう事業者も多くあると思う。

 しかし介護保険は本来、自立支援を目的としているはずであり、訪問介護は特に要介護度が良くなるための、日常生活が一人でできるようになるための援助なので、そのためには日常生活動作能力(ADL)が改善されるとか、少なくとも機能が維持されるべきである。

 そこで厚生労働省には介護保険に対する国民のマインドが、要介護度が改善されたら非常によいことであるというように、評価されるような改善に取り組んで欲しい。

 もちろん事業者としては現場が厳しくなるが、医療と同じでただ単に収容していたり、漫然と同じサービス実施していたりするところには評価を厳しくするべきで、よくなったところは評価するという形で、国民のマインドが上がるような改定を行っていただけると非常にありがたいと思っている。

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 次に「訪問看護」の議題について、下記の論点が事務局より提示されました。

○今後、医療ニーズが増大することを踏まえ、緊急時や看取りへの対応等、適切な訪問看護のあり方についてどのように考えるか。また、訪問看護ステーションの大規模化等、訪問看護の安定的な提供体制についてどのように考えるか。
○理学療法士等による訪問看護について、看護の一環としてのリハビリテーションのあり方や看護職員と理学療法士等との連携のあり方についてどのよう考えるか。
○利用者の医療ニーズへの対応や重度化予防の観点から、訪問看護と居宅介護支援を含む他の介護保険サービスとの連携のあり方についてどのように考えるか。


【武久洋三会長の「訪問看護」に関する発言】
 介護保険の訪問看護ステーションの方が医療保険の病院・診療所からの訪問看護より圧倒的に多いが、これは制度設立当初に訪問看護ステーションの方がはるかに点数がよいということで、医療法人内に病院・診療所とは別に訪問看護ステーションを設立し、事業を開始したところが多いと思う。

 もともと制度設計時に病院・診療所を敬遠したい風潮があったのかは知らないが、訪問看護ステーションの方が先行していた。
一方で病院は、午前中は外来で忙しいものの、午後は比較的余裕がある。また夜間帯の対応等を考えると、病院の看護師を行けるようにした方が手配をつけやすい面があるので、個人的には病院からの訪問看護の方が優れていると思っている。

 前回の改定から両者の料金格差が少し縮まってきたということもあるし、なによりも病院・診療所の訪問看護の方が訪問看護ステーションよりあらゆる面で機動力・機動性があって優れているのではないかと思うが、厚生労働省のお考えをおうかがいしたい。

(厚生労働省からの回答)
 病院・診療所からの訪問看護と訪問看護ステーションからの訪問では、事業所として成り立っている固定経費の関係から、どうしても後者の点数を高くしているのが現状である。
また訪問看護は病院・診療所と訪問看護ステーションのどちらがふさわしいか、というご質問に関しては、事務局としてはどちらも必要であると考えている。

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 資料には「居宅介護支援」の論点が用意されておりましたが時間の都合により次回以降の持ち越しとなり、最後に「共生型サービス」について、下記の論点が事務局より提示されました。

(共生型サービス)
○介護保険・障害福祉の相互に共通するサービスを行う場合には、
Ⅰ.指定障害福祉事業所が、介護保険サービスの基準を満たす場合
  ※現在も事実上の共生型サービスとして運営可能
Ⅱ.指定障害福祉事業所が、介護保険サービスの基準を満たせない場合がある。

○Ⅱについて、
 ①障害者が65歳以上になっても、従来から障害福祉で受けてきたサービスを継続して受けやすくする、
 ②地域の実情に合わせて(特に中山間地域など)、限られた福祉人材をうまく活用する、
という共生型サービスの創設の趣旨や、
 ③介護保険と障害福祉の両制度の基準や高齢者と障害児者の支援内容の違いを踏まえ、サービスの質の確保に十分留意をして検討する必要があるのではないか。

(相談支援専門員とケアマネジャーの連携)
○相談支援専門員とケアマネジャーの連携に向けた取組についてどう考えるか。

【武久洋三会長の「共生型サービス」に関する発言】
 介護保険が始まる前に障害者サービスも一緒にしたらどうか、という話もあったが、介護保険制度と障害者サービスには、制度面で折り合いがつかないところがあり、保留となった経緯がある。

 障害者には制度面で大きく分けると、精神障害と知的障害、重度心身障害の3種類にはっきり分けられている。精神障害の人は65歳以上を対象に介護保険で精神デイナイトケアがあり、知的障害の人にもデイサービスがある。また重度心身障害精神者にも10人以下で通所サービスが別にあり、皆さんそれぞれ努力をされている現実がある。

 さて現実問題として、障害者と要介護の高齢者が共生となると、体力の問題などがあるため、万が一のことを考えると危ないので、特別メニューで実施しないといけないし、場所を変えて実施するなどといった様々な困難な条件があると思う。
しかし私の考えでは今後、共生型サービスとして一緒にしていった方がよいと思う。特に地方の過疎地域では、共生サービスを取り入れていかないと立ち行かないと思っている。

 ただいきなり共生型サービスを導入しても現場では混乱が起こると思うので、スタッフにはしっかりとした研修を重ねてもらわないといけない部分があると思う。

 障害者と要介護者の間には条件面や費用面で困難な面があることや、スタッフの教育面でもかなり念入りに準備をしていかないといけないと思うが、いい制度だと思うのでぜひ推進していってほしいと思う。

 この制度がしっかりと整備されたあかつきには、日本慢性期医療協会の会員施設でも障害者施設が充分ではない地域で、前向きに取り組んでもらえるようにしていきたいと思う。
 

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