「第134回社会保障審議会介護給付費分科会」 出席のご報告
平成28年12月28日、「第134回社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
1.平成28年度介護事業経営概況調査の結果について
2.平成29年度介護事業経営実態調査の実施について
3.その他
今回の介護給付費分科会では、平成28年度介護事業経営概況調査の結果の公表、また平成29年5月に、平成29年度介護事業実態調査を行うことが確認されました。さらに中医協より、平成30年度介護報酬改定に向けた医療と介護の連携のため、医療と介護に関する検討項目について双方の委員が意見交換を行う場を設定してはどうかという提案がなされ、承認されました。
◇武久洋三会長の発言
○他の委員からも指摘があったとおり、介護サービスでは人件費の占める割合が医療よりもかなり大きい。加えて、介護職員の給与は今後も上がっていく方向で進んでおり、今後ますます人件費が経営を圧迫していくと予想される。
しかし、実際問題として一番大きいのは、税制措置である。現状では、利益の半分近くを税金として納めている医療機関と、非課税措置が講じられている医療機関や福祉施設が、同じ土俵に上がっている。本来なら、同じような形で平等に運営していくのが当たり前ではないか。医療法人の運営する病院では、税金を納めた後に残った資金から借金返済をすれば、何も残らないということが多い。事業の永続性にも関わってくることなので、ぜひ考慮いただきたい。
資料では、介護サービスに占める人件費の割合は平均して6割台となっているが、この中での上限値と下限値もあわせて示していただきたい。平均だけでは、人件費を高くしてひどい赤字に陥っている施設、また人件費を低く抑えることで黒字を出している施設等、個々の状況が分からない。
東京のような都会であっても、以前は特養開設の公募を行うと10ヶ所近い法人が応募してきたのだが、最近では2、3ヶ所の応募があればいいという状況である。土地の購入等、イニシャルコストがかかりすぎるのである。法人税が非課税の社会福祉法人であっても、この現状では、都会に出ることは躊躇してしまう。仮に開設までこぎつけても、今度は介護職員が集まらずに開業できない施設が続出していると聞く。このままのやり方を続けていても良いのかという疑問が出てくる。
また、土地を購入して建物を建てた上で運営している施設と、既存の建築物を利用して済ませているところでは、利益の差がかなり出てくるだろう。概観すると、介護施設の収入は減っている。加えて、今後は若者の数が減少していくため人件費は上がり、建築費も経費も高騰していく。こうした中で、介護の質を高めながら利用者のために一生懸命頑張り続けるにはかなりの努力がいるし、その結果として赤字になることも想定される。そうした点も、ぜひ考慮していただきたい。
○中医協から、医療と介護の連携に関して意見交換を行いたいという提案が出された。連携はもちろんだが、介護療養病床の転換についてはどうなのか。療養病床の在り方等に関する特別部会の議論はすでに終了しているが、介護療養病床は施設等に転換していくということになった。25対1医療療養病床についても同様の流れで進んでいたが、こちらは医療保険の管轄なので、中医協で議論を進めることになった。こうした流れについては、今後どのように進められていくのだろうか。
25対1医療療養病床が、どの程度介護保険側の施設に転換してくるかというのは、介護費用をどう配分するかということにつながってくる。介護保険の出費が増えることになるからである。そのあたりのスタンスをどうするかという問題は、本分科会での議論において、大きなウエイトを占めていくだろう。中医協と意見交換をするなら、こちら側でもあらかじめ議論を行い、準備をした上でのぞまねばならない。中医協の要請に応じて説明するという形では何の意味もない。こちらとしても今後どのようにしていきたいのかという意見を持ち、中医協と介護給付費分科会の両方からテーマが提示され、対等に話し合いを進めていくというのがあるべき議論だと思う。だが、分科会の場でテーマを決めるのも難しいだろうから、日医の鈴木先生をはじめとする委員数名に中心となっていただき、議題の設定について話し合うのが良いのではないか。
*武久会長の上記の発言について、他の委員からも、中医協に要望するという形ではなく、分科会として何を議論するかを決めた上で、対等で充分な話し合いを進めたいとの意見が出されました。事務局からは、議題の設定については委員の先生方の意見を踏まえ、事務局、分科会長、テーマに関係した委員との調整によって決めていきたいとの回答がありました。
○病床転換によって施設や住居に転換すると、今度は介護保険の対象となるので、介護給付費分科会での議論の対象となる。25対1医療療養病床であれば、もともと医療保険でまかなっていたものから、介護保険へと移行するケースが出てくるわけである。介護保険の予算の範囲がある以上、転換後の新しい施設類型によって、介護保険施設にしわ寄せが来るということは避けねばならない。
一人の患者が急性期から慢性期、そして介護へと流れてくる。どこまでが中医協で、どこまでが介護給付費分科会での議論になるのかというよりも、一人の人間が発病し、良くなったり、後遺症が残ったりするという流れに着目すべきだろう。
中医協との話し合いでは、病床転換という非常に重要なトピックがあるということを忘れてはならない。今は非常に大きな転換期にある。医療と介護の接点ということで医療介護連携政策課という新しい課もできたが、やはり状況としてはまだまだセパレートしているという感覚がある。話し合いのための準備が必要となってくる。
*武久会長の上記の発言について、事務局からは、国民にとって適切な医療介護が提供されるよう、中医協、介護給付費分科会の双方が対等の立場をとるということを基本スタンスとして進めていきたいとの意向が示されました。
○第134回介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000147541.html
2016年12月29日