「第62回社会保障審議会介護保険部会」出席のご報告

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

 平成28年8月31日、「第62回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

1.その他の課題②(被保険者範囲)
2.ニーズに応じたサービス内容の見直し
  ①自立支援・重度化予防を推進する観点からのリハビリテーション機能の強化
  ②中重度者の在宅生活を支えるサービス機能の強化
  ③安心して暮らすための環境の整備
  ④「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現
3.その他

◇武久洋三会長の発言
武久会長20160831 資料2-1「①自立支援・重度化予防を推進する観点からのリハビリテーション機能の強化」について、要介護度が重い人を動けるようにする、すなわちADLを改善するために、通所リハビリや通所介護でのPT、OT、STの配置人数を評価してはどうか。療法士がいなくては、介護者や看護師への指導が充分できない。関わる療法士の人数が多いほど、ADL改善に結びつくと考えている。
 資料2-2「②中重度者の在宅生活を支えるサービス機能の強化」について、小規模多機能型居宅介護の利用が伸びないということだが、小規模多機能を利用するとなると、在宅のときからついているケアマネジャーを、小規模多機能にいるケアマネジャーに代えなければならないということが大きいのではないか。また、小規模多機能で利用できるサービスには、通所介護、訪問介護、ショートステイの3つがあるのだが、地域によってはショートステイが高額に設定されているという点も利用が伸びない理由の一つだろう。かといって、ショートステイだけはよそのサービスを使おうとなると、利用する施設をまたがって担当してくれるマイケアマネジャーのような方がいなければうまくいかなくなる。だから、小規模多機能を利用する場合、通所介護、訪問介護、ショートステイの3つについての利用は難しいとなってしまうのだろう。今年の診療報酬改定では、退院支援の取り組みの中でケアマネジャーが病院に行くことが評価された。ケアマネジャーがどのように動いていくかというのは、非常に重要だと考えている。
 資料2-3「③安心して暮らすための環境の整備」の論点の中で、「今後、特別養護老人ホームにはどのような役割が期待されるか」という記述がある。これは、非常に大きな論点である。特養は終の棲家と言われて久しいが、特養とはそもそも住居なのか、それとも施設なのかということを問いたい。さらに言えば、特養に要介護状態を改善する機能はあるのか。仮にその機能があるとして、特養に入所したのちに要介護度が改善された場合、退所するという選択肢はあるのだろうか。その場合、退所後に再び要介護度が悪くなった時、あらためて入所できる保証が必要になるのではないか。
 例えば、特養に入所して感染症になった場合、もう90歳だからこのままターミナルでみましょうというのは失礼な話で、ちゃんとした治療をしたら治るのであれば、年齢に関係なく当然治すべきである。安易なターミナルは本人のためにならない。その場合、特養から病院に入院するとなると、入所時の部屋は空いたまま残される。こうしたベッドの有効活用を考えていかないと、特養自体をいくら増やしても効率が悪い。この点については、平成30年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、改革を考えていただきたい。
 保険局医療介護連携政策課の主導で、療養病床の在り方等に関する特別部会が行われている。今後はこの特別部会で決まった通り、介護療養型医療施設や25対1療養病床から、新類型の施設や住居に転換していくことになる。しかし、それ以外の一般病床からも転換できないかという要望もある。私の予想ではあるが、平成30年以降、4~5年のうちに院内施設として20万床近くの住居が出来ると考えている。そうなると、従来の老健や特養との整合性が問われてくるのではないかと思う。現実問題として、病床がどんどん福祉施設に転換していくということに対し、充分な周辺対応がなされることが肝要かと思われる。

 介護保険は保険制度である以上、保険者と被保険者がいて、被保険者に介護が必要な事項が発生したら保険給付が行われるという仕組みである。しかし、障害の中には先天性のものもあり、その場合、保険加入時にすでに保険給付の必要な事項が発生しているということになる。このようなケースをどうするかという課題がある。
 二点目の課題として、障害者は大きく分けて、知的障害、重度心身障害、精神障害の3つがあるが、介護保険には知的障害、精神障害の障害度を認定する部分がないということがある。また、知的障害児、重度心身障害児については、適用されるサービスが介護保険とは全く異なっており、彼らが介護保険の通所サービスに行くのは現時点で非常に難しいということも課題である。
また、介護保険制度の普遍化ということで、被保険者・受給者の範囲を20歳以上にするなど若年層への拡大が議論されている。年齢引下げの前にサービスの効率化等の見直しを行うべきではないか、若者の納得が得られるか等、議論すべき問題点は多々あると思うが、他の委員の発言にもあったように、将来的には被保険者の範囲拡大ということで、ある程度統一していくべきではないか。その場合は、若い被保険者については保険料を大幅に少なくするといったやり方も考えるなどしながら、これら3つの課題を今後5~10年の間に検討していただく必要があると思う。

○第62社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135328.html
 
 

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