第90回社会保障審議会医療保険部会 出席のご報告

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第90回社会保障審議会医療保険部会

 平成27年10月21日、「第90回社会保障審議会医療保険部会」が開催され、当会からは委員として武久洋三会長が出席いたしました。今回の会議では、次回の診療報酬改定に向けた検討がなされました。

 厚労省より、改定にあたって

 1.超高齢社会における医療政策の基本方向
 2.地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築
 3.経済・財政との調和

の3項目を基本的な認識として扱い、また、改定における視点としては

 視点1 医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムを推進する視点【重点課題】
 視点2 患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点
 視点3 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
 視点4 効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点

の4つを基本的な視点として議論を進めていくことが提案され、今後の議論の進め方についての認識が共有されました。また、これらの基本的方針の提示を受け、委員からは文言の修正や、医療従事者の勤務状況の改善、自殺対策の推進、費用対効果の項目の盛り込み、医療機関への第三者評価の導入などといった提言、要望などが出されました。
 
 武久会長は提示された4つの視点について、それぞれ内容を掘り下げる形で意見を述べられました。発言の要旨は下記の通りです。
 

 視点1については「医療機能に応じた入院医療の評価」の項目に触れ、「7対1の急性期病院において、半年ないし1年以上の長期的な入院を許容する特定除外制度というものがあるが、これが果たして急性期と言えるのか、疑問がある。こういった制度が現存し、短期入院と同様の点数が特定除外へ回されてしまうというのは効率化とは言いがたいのではないか。特定除外制度については前回改定でも見直しが行われたが、まだ、十分な見直しが行われていないものと理解している」として、特定除外制度について更なる見直しを求めました。

 視点2については、「質の高いリハビリテーションの評価」の項目に触れ、「回復期リハビリテーション病棟協会の公表資料によると、退院時から入院時のFIM(リハビリテーション評価指標)を引いた数値が大体16程度となっており、満点が126なので、これは100日ほどかけて十数%よくなったということになる。これではいかにも改善率が低く、私自身も反省している。また、回復期リハ病棟には1、2、3と区分があるが、3の病棟の平均の利得が14点、2が約15点前後、1が17点ぐらいということで、それぞれで2点も改善していない。ところが診療報酬の点数はかなり差がある。費用対効果から言うと、1点よくするために数十万円近くかかっている。私も反省して、自分の病院では今年からもっと実際的にADLを評価するリハビリを開始しており、機会があれば資料を提出させていただきたい。ADLをよくするためのリハビリという視点が必要であり、『何単位の行為を行ったか』ではなく、『どれだけ身体状況が改善したか』を評価するような報酬体系が望ましいのではないか」と述べられました。

 視点3については特に「認知症について」の項目に触れ「中医協で、看護必要度のB項目に認知症についての項目が盛り込まれるという話を伺ったが、医療区分内には認知症を評価する項目が全くない。慢性期医療の分野には認知症の方が多く訪れ、もし何か事故があればご家族からも大変なお叱りを受ける。医療区分においても、何らかの形で認知症に係る評価を行ってほしい」と求めました。
 
 視点4については「重症化予防の取組の推進」について触れ、「私が昨年運営を引き受けた病院に、障害者病棟で4.3平米の10人部屋というものがあった。超慢性期の、非常にひどい療養環境も認められている。直ちに改善しているが、超慢性期には療養病床の療養環境を適用しなければいけないと考えている。療養病床から障害者病棟入院基本料が算定できるようにされるべきではないか」と述べられました。また、別項の「早期治療の推進」については「慢性期病院では、急性期病院から送られてきた重度の患者さんの状態を回復するために必死に治療を行っているものの、それが回復しても評価はされず、退院が遅れればけしからん、と言われてしまうような状況があり、困っている。『受け入れ後に重症化しなかった』、『治療の結果、改善して退院した』というような場合に対して何らかの評価を求めたい」と述べられました。

 部会では述べられた意見を整理し、引き続き、次期診療報酬改定における議論の内容を検討していく予定です。
 

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