「第123回社会保障審議会・介護給付費分科会」 出席のご報告

会長メッセージ 審議会

第123回社会保障審議会介護給付費分科会

 平成27年6月25日、「第123回社会保障審議会・介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。今回の主な議題は、下記の通りです。
 
 1.平成27年度介護従事者処遇状況等調査について
 2.介護事業経営実態調査について
 3.地域区分について
 4.介護サービスの質の評価について
 

◇武久会長のご発言
1.平成27年度介護従事者処遇状況等調査について

武久会長* 平成27年度介護従事者処遇状況等調査では、これまでのどの調査結果においても、介護職員処遇改善加算が職員の給与に反映されている率は、介護療養型医療施設で最も低い結果となっている。介護療養型医療施設では、医療保険の病床を併設しているパターンが多く、経営者としては介護療養型医療施設の介護職員だけ処遇改善加算で給与をアップし、医療保険病床の介護職員の給与は据え置きということがやりにくいためだろう。

 これまで、医療機関の介護職員に対しても同等の加算をつけるべきと主張してきたが、現実問題として20歳人口が120万人、0歳児人口が100万人といった人口減が進む状況の中、単純に加算のみを要求するのは現実的ではない。それでも、経営者が自院・自施設の職員の給料を少しでも上げたいと考えていることに変わりはない。私は基本的に、病院に勤めている職員は全員同じ待遇でも良いと思っているが、それぞれの職種の資格の問題や、患者に対する責任やリスクといった面を考えるとどうしても給与差は発生する。

 介護職員の業務内容について言えば、肉体労働の上に学術的な知識及び技術、さらに接遇も求められる。この仕事を10年続けるとしたらそれは大変すごいことだというのは、そばで見ているだけでも分かる。介護職員に対する評価を上げるべきというのは、かねてから思っていた。

 今後どのような方向に進むにしても、介護職員の給与を上げていく必要のある中で、処遇改善加算がそのうちのいく文化を引き受けてくれるのは有難いことだと考えるようにしている。そしていうまでもなく、介護施設でも医療機関でも介護職員に限らず多くの職種の職員が働いている。介護職員処遇改善加算が、病院・介護施設で働く全職種の職員の給与アップに結びつく結果が出れば、良い調査であったと言えるだろう。

 その一方で、職員の給与アップとは、本来は経営者が介護報酬の中から対応すべき事項であり、将来的にはこうした加算がなくても成り立つような姿に変えていただきたいと考える。
 

2.介護事業経営実態調査について

* 平成26年度介護事業経営実態調査は、収支差率がプラスの施設が多いとの結果が出たことで、平成27年度介護報酬のマイナス改定の根拠に使われる結果となった。この調査結果の中で、収支差の分布図を出してもらっていたが、それによると、利益が30%出ている事業所とマイナス30%の事業所があるとのことだった。
 
 前回の分科会でも話したことだが、何をすればここまでプラスになるのかあるいはマイナスになるのか、まじめにやっているのか、あるいは不真面目にやっているからマイナスなのかを把握せず、ただ平均値を出したらプラスになったというのは問題ではないのか。プラスマイナスが極端な事業所については、もう少し個別に状況を把握することはできないか。そうした現状を把握せず、すべて平均値で報酬を決めていくというのは、調査の正確性という観点においても危惧されるだろう。
 

3.地域区分について

* 介護保険制度が開始した頃は、国家公務員の給与の調整手当てを参照する形で介護報酬の地域区分を定めてもよかったが、すでに15年が経ち、一つの市町村においても、人口の過密なところと過疎のところとの差が非常に色濃く出ている状況が明らかになってきた。都会なら人口が多いので利用者も多いし、交通アクセスもよいため、介護職員が多くの利用者をスムーズに訪問することが可能であり、一日の利用者人数は多くなる。
 
 しかし過疎地域に行けば、そもそもの利用者が少ない上に、移動に非常に長い時間がかかってしまう。地方創生ということを言うのであれば、こうした地域にも人が住めるよう整えていかねばならない。今は、都市部である程度利益のあるところが、赤字覚悟で過疎地に職員を回しているという状況である。サービスのないところに人は住めないし、また人の住まないところにサービスの手が行き届かないのも当然である。
 
 事務局の説明によると、地域区分というのは、人件費の高い地域にはコスト構造上大きな負担がかかるので、それをいくらかでも軽減させるための仕組みであり、サービス提供が非効率になりがちな地域をどうするのかという論点とは別物であるとのことだが、そのロジックで問題が消えるわけではない。このままでよいのだろうかと懸念している。
 

○第123回社会保障審議会・介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000089683.html
 

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