第8回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 出席のご報告

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久会長0212

 平成27年2月12日、「第8回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。今回の開催では、検討会のこれまでの議論を反映した「2025年の医療需要と各医療機能の必要量の推計方法の考え方」が示され、「地域医療構想策定ガイドライン(案)」について検討されました。

 武久洋三会長が一貫して、「慢性期機能」の医療需要を推計するにあたっては、療養病床の入院受療率に基づくだけではなく、「病床機能報告制度」や「DPCデータ提出加算」によって得られたデータを分析することが必要だ、との意見を述べてきたところ、関連個所について下線部分が新たに追加されました。

図1

 この一文により、近い将来、療養病床についてもデータに基づく医療資源投入量が分析されることによって、「慢性期機能」に分類されている病床の医療機能が明らかになっていくものと思われます。

 武久洋三会長はさらに次の意見を述べて、「慢性期機能」のクライテリアがより慢性期病床の実態に合ったものとなるよう理解を求めました。

◇武久洋三会長の発言

*療養病床の入院受療率には地域差があり、最大の高知県と最小の長野県とで約5倍もの開きがあった。この地域差に着目し、療養病床を削減しつつ慢性期の医療需要を推計するというのが厚生労働省の提案である。しかし、慢性期医療の対象となる患者数に都道府県によって5倍もの違いがあるとは事実上考えることはできない。必ずどこかで治療を受けているはずである。そこで前回、一般病床や介護施設等の運営状況を勘案しなければ、療養病床の入院受療率だけで実際の状況を把握することはできない、との意見を述べた。今回提示された「都道府県別の65歳以上人口千人あたり病床数・介護保険施設定員数」を見ると、特養については、長野県18.6人、高知県16.8人、老健については、長野県13.1人、高知県9.6人となっており、長野県の方が高知県より特養や老健の定員数が多いことがわかる。つまり、長野県の慢性期医療のニーズが最小であると一概に言うことはできず、むしろ、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県等の首都圏における定員数が低い結果となっている。したがって、特養や老健の運営状況を考慮せずに、療養病床の入院受療率を安易に低下させてしまうと、患者がその行き場を失ってしまうことにもなりかねない。慢性期の医療需要を考えるにあたっては、特養や老健のみならず、サ高住や有料老人ホーム、養護老人ホーム等との資源の総和という観点を抜きにして論ずることはできない。

*医療機能を分類するにあたり、医療資源投入量の点数にC1、C2、C3という境界点を設定するという議論において、C3以下がそのまま「慢性期機能」の対象であるとの錯覚がありはしないか。患者の病態がC3より以下の程度に安定しているのであれば、当然、在宅に復帰していくはず。「慢性期機能」の対象となるのはあくまで、一定期間の入院日数経過後もなお治療を必要とする患者である。そこで、C3より以下を「在宅医療等へ」とする表記について確認したい。ここに言う「在宅医療等」は、特養やサ高住、有料老人ホーム、養護老人ホーム等の介護施設だけを指しているのか、それとも、一般病床および慢性期病床に入院する医療資源投入量の落ち着いた患者や外来診療の患者をも含む趣旨なのか。私は、「C3以下」ということからすれば、医療資源投入量が0点となって元気に自宅に帰っていく患者も含んでいると考えるのが自然の理解であるように思う。

図2

(C3より以下を示す「在宅医療等」の意義については、厚生労働省医政局地域医療計画課の北波孝課長より、幅広く外来診療の患者までを含む、との回答がありました。しかし、中川俊男構成員(日本医師会副会長)から、外来通院できる患者は在宅医療には該当せず、そうであるからこそ、慢性期の必要病床数と在宅医療等の整備とを一体的に捉えるという議論が成り立つのだ、との意見も出されました。そのため、「在宅医療等」の意義についてはさらに精査の上、次回以降の検討会であらためて回答されることになっています。)

*病床機能報告制度の報告状況について、山口育子構成員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)から、「急性期機能」ならまだしも「高度急性期機能」として報告をする療養病床が115床あるのを知って目を疑った、というご発言があった。しかし、療養病床であっても内視鏡を使った胆管・膵管を造影する検査(ERCP)を実施したり、大腸がんを切除するために数日間入院を要するような症例はあり得る。このような症例の患者が100床のうち50~60人いれば、一般病床として別途運営を考慮していくことになるが、その比率がわずかであれば、療養病床として高度で特殊な治療や処置を行う場合もあり、決して不可解とは言えない。ましてや、全国の報告状況で115床であれば目を疑うというほどの数字ではない。

*療養病床では高度な治療や処置はできないという根強い偏見と古い固定概念は、いまだに一部の国民や医療関係者の間に蔓延っているようだ。一般病床となるためには「平均在院日数」「医師数」「看護師数」「重症度、医療・看護必要度」のすべての基準をクリアしなければならないのだが、地方都市の中小病院では、人口等の地域の事情によっていずれかの基準を満たすことができずに療養病床として届出ているという実状がある。しかしその療養病床では、整形外科医による半月板損傷の治療や眼科医による緑内障および網膜剥離に対する処置などが現に行われているのである。療養病床と一般病床の違いには、地域の事情も大きく左右しているということを留意していただきたい。

*地域医療構想策定ガイドライン案における各医療機能の考え方は、病床機能報告制度における定義を前提としているが、この定義には疑問がある。なぜ、「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」については「医療」を提供する機能とされているのに、「慢性期機能」については「療養」という概念が用いられるのか。「療養」は、「療養型病床群」という高齢者の長期入院患者を対象とした類型が平成4年に設けられた際に使用されはじめた概念であると記憶している。しかし、療養病床に医療区分が導入されてからは医療処置を必要とする患者の割合が増え、また、平成26年度診療報酬改定による急性期病床の絞り込みによって多くの重症患者が慢性期病床に移ってくることを考えると、「療養」を「慢性期医療」という概念に置き換えることを強く要望したい。「慢性期機能」のもう一つの定義である重度の障害や難病の後遺症への対応については「療養」という表現でよいと思うが、もはや、「慢性期機能」のすべてを「療養」という概念で言い表すことはできない。

図3

 次回の検討会は2月下旬に開催され、地域医療構想策定ガイドライン案の修正案が示される予定です。

○第8回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000073913.html
 

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