循環型の慢性期医療を目指して

役員メッセージ

日本の風景-048

■ 討 論
 
 主な検討内容を記載する。
 
 ① 連携をよりスムーズにするため、国としての電子カルテの標準化を推進し、経済的な負担を軽減してほしいと会場より要望があった。梅村氏は、内閣府の中でも医療イノベーションを検討しているチームがある、

 課題として認識しているので、しっかりと検討していきたいと答えた。また、都道府県単位、医師会単位で、どの医療部門でどのような患者の受け入れが可能なのか等の医療情報の共有の必要性も述べられた。

 ② 東京都の急慢連携(2011年2~5月:57件)の典型的な患者像は「75歳以上、男、生活保護、医療区分1、介護保険未申請」である。慢性期医療がこのような患者さんの受け皿になるのではと考えているが、大阪の状況を教えていただきたいとの質問があった。

 三次救急からの連携を行い、比較的早期の段階で受け入れると医療区分も高いので受け入れ先があり、早く移ることができる。これが1年くらいたってしまうと医療区分1となり、どこにも移れないケースがある。生活保護の方は存在するが、それが原因で転院できないという経験はないと井川氏は答えた。

 また、井川先生のお話で約25%が受け入れられなかったケースがあったということだが、どのような病状なのかを教えていただきたいとの質問があり、井川氏はお断りしている症例は最初のころよりも減っていると付け加えた上で、専門的疾患の場合や社会的入院(たとえば、火事で家が焼けてしまい、帰る家がない方など)がそれにあたると答えた。 

 ③ 「ぐるぐる図」の中で今後どの流れを大きくしなければならないのかを教えてほしいという質問があった。奥田氏は、今回の調査では、「慢性期医療→老健施設→在宅」という流れの患者がいなかったことに触れ、在宅に返す仕組みが重要であると答えた。
 
 ④ 矢崎氏は、在宅に帰ることができる患者の絶対条件は、「家庭の介護力」であるという。現在の在宅療養は、どうしても家に帰りたいという本人の強い希望と在宅で療養したいという家族の熱意に支えられていると述べた。ただし、今の状況では済まない時代が来て、在宅医療のあり方を見直さなければならない場面も考えられるだろうと危惧された。
 
 ⑤ 梅村氏は、2025年に団塊の世代が後期高齢者になることを考えると、現在、政府が示しているような慢性期医療について、もう少し拡充する必要があると述べた。また、今後3人に1人は結婚しない時代がやってくることを考慮に入れ、さらに、どのような形で慢性期医療がこれからの日本を支えていくのかといった視点でもう一度シミュレーションする必要があり、国政の場で議論していくと述べた。

■ まとめ

 循環型の慢性期医療を目指すためには、このシンポジウムで議論いただいたシステム面、正確なデータを整備することに加え、さらには、急性期の下流を担う病床・施設それぞれがスキルアップしていくこと、国民にわかりやすい情報をきちんと伝えていくことも重要であると考えている。

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