循環型の慢性期医療を目指して

役員メッセージ

日本の風景-048

 ■ 今後の医療・介護の流れは多方向。利用者の目線で連携していくことが重要

 日本慢性期医療協会副会長、永生病院理事長・安藤高朗(JMC77号「シンポジウム印象記」より)

 政府の社会保障改革案でも示されている通り、高度急性期、一般急性期、回復期リハ、そして、慢性期医療としての医療療養、介護療養、介護療養型老人保健施設、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームやサービス付高齢者住宅(高専貸)、在宅の流れがある。

 在宅、介護施設、高齢者住宅等の医療・介護を支えていくのが診療所、在宅療養支援診療所(病院)や訪問系サービス等多くの形態が示されている。

 重要なのは施設サービスが多様化する中で、施設が利用者の目線で連携していくことだと考えている。さらには、今後の医療・介護の流れは一方向だけでなく、多方向に循環する必要があると考えている。

 このシンポジウムではオープンマインドなチーム医療のもとで、良質な医療・介護の循環をつくっていくためにはどうすべきかを、各方面のシンポジストの方々にご議論いただいた。

■ 講 演
 
1.「国民が支持する慢性期医療を目指して」 梅村聡氏(参議院議員・医師)

 梅村氏は参議院議員に当選する前、大学病院、急性期を担う公的病院で働く勤務医であった。勤務医時代、地域連携の委員になり、地域の医療や介護関係者を集めて「大宴会」を開催し、お互いの業務内容や人柄をオープンにすることで連携が大いに進んだという経験を述べられ、「顔見知りになる、一緒に酒が飲める、連携ができる」というステップが今の医療界にもう少し必要であると考えられている。

 31年前の御祖父を亡くした時と、今年6月御祖母が亡くなられた時のエピソードを紹介、医療環境の違いを実感されたと述べられた。御祖父が末期のがんと自身が知った際、すべての治療を拒否し、自宅に戻ることを希望したという。31年前は、病診連携も在宅医療もなく、在宅での療養を医師からも看護師からも止められたという。それでも御祖父は家に帰りたいといい、自宅で亡くなられた。

 対照的に御祖母はいろいろな施設に入所し、最終的には24時間管理してもらえるICUで亡くなられた。最後の1週間、梅村議員は何回かお見舞いに行き、会話もできたそうだ。平成の現在、病院で亡くなることは理にかなっているとも思われたそうである。

 現在、診療報酬で連携パス等(脳卒中パス、大腿骨骨折など)の評価がなされるようになり、医療従事者の間では、「連携」「循環」の重要性は徐々に認識されてきたが、医療従事者のメンタリティが変わらなければ、本当の意味での「連携」は実現しないとも述べられている。在宅や連携を本当に考えているのか疑問な地域の拠点病院も存在する。

 さらに次の課題は国民の理解とも述べられた。国民に循環型の慢性期医療にどういった
利点があるのかを十分にアピールし、支持を得なければならない。その「支持」こそが政策推進の大きな原動力になると述べている。最後に、医療・介護は日本人の文化も考慮に入れた制度を構築する必要があると指摘された。

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