高齢者虐待の防止、「系統立てた対策を」── 橋本会長、介護保険部会で
高齢者虐待の防止や多床室の室料負担など介護保険制度の改正に向けた論点について議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は虐待防止について「情報収集・分析、研修・教育、体制づくり、マニュアル作成という系統立てた対策が必要ではないか」と提案。多床室の室料やケアマネジメントの利用者負担については「財源が厳しいから自己負担を進めていくのは説得力に欠ける」と指摘した。
厚労省は11月20日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第129回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。
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この日の議題は、3項目。議題1(介護保険制度に関するその他の課題)では6項目の論点、議題2(持続可能性の確保)では10項目の論点が示されたほか、議題3では福祉人材確保に関する議論の状況が報告された。
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虐待防止対策、「更に強化する」
議題1では、高齢者虐待防止の推進、介護現場における事故防止の推進、要介護認定等の申請代行などが論点に挙がった。
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このうち、論点①「高齢者虐待防止の推進」では、「有料老人ホームや、有料老人ホームに該当しないサービス付き高齢者向け住宅等の高齢者住まいにおける虐待防止対策のための取組を更に強化する必要があるのではないか」との検討の方向性が示された。
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また、「養護者」に該当しない同居する者等からの虐待防止対策のための取組について「さらに強化する必要がある」とし、令和4年度改訂「国マニュアル」に明記された内容を改めて周知徹底する必要性を指摘したほか、「適正な手続きを経ていない身体拘束の防止のための取組を更に強化する必要がある」としている。
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8月から新たな見直しが始まったばかり
議題2では、多床室の室料負担やケアマネジメントに関する給付の在り方など10項目が論点に挙がった。
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このうち、論点⑤「多床室の室料負担」について厚労省は、前回10月27日の議論で「住まいではないところから室料負担を求めるというところは適切ではない」「今年8月から新たな見直しが始まったばかり」などの意見があったことを紹介し、「慎重な意見が見られた」との認識を示した。
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その上で、「これまでの見直しや、議論の経緯を踏まえ、介護老人保健施設及び介護医療院の多床室の室料負担の在り方について、今後の検討についてどのように考えるか」と意見を求めた。
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利用者の所得状況を勘案する
論点⑥「ケアマネジメントに係る給付の在り方」では、2027年度までの間に結論を出すとの政府方針を確認した上で、利用者負担の導入に「慎重な立場」と「積極的な立場」の両論を併記。「利用控えの懸念に配慮する観点から、ケアマネジメントの利用者負担の判断に当たって、利用者の所得状況を勘案することについて、どのように考えるか」と意見を求めた。
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また、ケアマネジメントに係る課題として、「有料老人ホームに係る対応」「業務負担のあり方」を論点に挙げ、「利用者の所得の如何にかかわらず、以下のような対応を行うことについて、どのように考えるか」とした。
具体的には、「特定施設入居者生活介護以外の「住宅型」有料老人ホーム(該当するサービス付き高齢者向け住宅を含む。)の入居者に係るケアマネジメントについて、利用者負担を求めること」や、業務負担のあり方について「ICTによる業務効率化が十分に進展するまでの間、事務に要する実費相当分を利用者負担として求める」などの考え方を示した。
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このほか同日の部会では、議題3について「福祉人材確保専門委員会における議論の整理」などの報告があった。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。
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高齢者虐待防止の推進について
[橋本康子会長]
この高齢者虐待防止の資料の中で、事故防止について紹介されている。 例えば、病院とか施設における医療事故の防止対策委員会、施設では事故防止対策委員会。ヒヤリハット、インシデント、アクシデント等について熱心に取り組んでいる現状がある。長い年数が経過しているので、いろいろな事例が集積されている。最近では、各病院・各施設における事故防止対策が進んでいる。
一方、虐待に関しては、そうした取り組みがまだ薄いのではないかという印象を受ける。事故と虐待は違う。事故は人的ミスで起こる場合が多いが、虐待の場合は、ミスもあるが、故意の場合が多い。そのため、スタッフ、職員のストレスチェックや倫理観の保持、ワークバランスや教育なども必要になる。
したがって、事故防止対策委員会と同じような系統、システムが必要となる。十分に情報を収集して分析し、再発を防ぐ。そのための研修や教育等を実施して体制づくりをしていく、そしてマニュアルを作成する。そういう系統立てた対策が必要なのではないか。
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多床室の室料・ケアマネジメントの利用者負担について
多床室の室料負担とケアマネジメントの利用者負担のいずれも、財源が厳しいから自己負担を進めていくというニュアンスがあると思うが、それは説得力に欠けるのではないか。また、それぞれの施設はそれぞれの役割がある。老健施設の本来の役割は、自宅のような生活の場ではない。
ケアマネジメントの利用者負担については、ケアマネジメントの人たちが本来の業務からますます離れていく懸念があり、ケアマネジメントサービスの利用控えが起こってくるのではないか。家族や患者の自己判断ということになると、例えば車椅子を借りるなど、簡単にできることはケアマネジメントの担当者に言わないということが起きるだろう。「ケアマネジャーを通さなければいけないのか」という意見もあるので、そういう場合に勝手にされてしまうところがでてくると思う。
したがって、適切な医療・介護、治療や予後といった観点からいうと、自立支援の観点から離れたようなサービスの形態になっていくのではないかと思うので、慎重に考えたほうがいい。
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福祉人材確保専門委員会における議論の整理について
福祉人材を確保するために、どうしていくか。確かに、養成や定着等に関する議論も非常に大切だと思う。ただ、介護・福祉の人材が増える見込みはないと思う。介護人材だけではなく、日本の労働人口が減るので、その中で介護や福祉に関わる人材だけが増えるということは、あり得ない。
人材確保に向けた努力は必要だが、それと同時に進めるべきものがある。AIやITなどの大きなことではなく、1年先、2年先、すぐ先のことで言うと介護機器。今、眠りセンサーなど、いろいろな介護機器があるので、そういった機器を使って、人材が少なくてもやっていけるようなことを考える必要がある。できる限り現場の実態と乖離しないように進めてほしいと思う。また、この場の議論ではないと思いますが、定年の60歳を65、70歳にして働く人を増やすことも考えるべきである。
2025年11月21日









