身体拘束、加算項目で再考を ── LIFE検討会で、中尾副会長
LIFE関連加算項目の見直しや対象範囲について議論した会合で、日本慢性期医療協会の中尾一久副会長は「身体拘束が転倒、皮膚の損傷などに関係し、肺炎や尿路感染症など合併症を起こす」と指摘し、「加算項目に関して、身体拘束を再考していただきたい」と提案した。
国立長寿医療研究センターは11月19日、厚生労働省老健局老人保健課の協力を得て「科学的介護情報システム(LIFE)のあり方」検討会(座長=秋下雅弘・東京都健康長寿医療センター理事長兼センター長)の第3回会合を開催し、当会から中尾副会長が構成員として出席した。
この検討会は、「LIFEの活用が一定程度進んでいる現状の中で、浮かび上がった課題等を踏まえ、今後の見直しに向けて検討する」ことを目的として、9月1日に初会合を開催。前回10月22日の会合では、LIFEの目的やフィードバックのあり方等について議論した。
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前回までの議論を踏まえ今回は、▼1.LIFE関連加算項目の見直しの観点、▼2.LIFEの対象範囲──の2項目について論点が示された。
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論点1 ── 薬剤情報、有用性、負担
LIFE関連加算項目の見直しの観点(論点1)については、「仮に、科学的介護推進体制加算を分野横断的に基礎的な情報を収集する加算であると整理するとした場合、その項目をどのように考えるか」と問題提起。LIFE項目の1つである薬剤情報の入力について、「服薬薬剤数と薬物有害事象の頻度の関係等を踏まえ、どのように考えるか」との論点を挙げた。
また、LIFE関連加算の項目を整理するにあたり考慮する観点として、「有用性」と「負担」を挙げた。このうち、有用性については「フィードバックに活用する観点及び研究に活用する観点」、負担については「アセスメントを実施する上での負担及び入力する上での負担」としている。
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議論の進め方については、「介護報酬改定に向けた今後の検討スケジュール(案)」のとおり進める方針を示した。
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電子処方箋等の情報を活用すべき
論点1の質疑で、秋下座長は「いろいろ用量などをコードなどから入れていくのもなかなか大変で把握自体も難しいので、薬剤数くらいにとどめるという考え方もあるのではないか」とした上で、「薬物有害事象という観点」から一定範囲に限定する方向性を提案した。
松田晋哉座長代理(福岡国際医療福祉大看護学部教授)は「電子処方箋の情報を直接参照できるように取り組めるようにすればいい」との考え方を示した。
中尾副会長は秋下座長、松田座長代理の意見に賛同した上で、「マイナ保険証から直接、情報が持っていければベスト」としたほか、LIFE項目について意見を述べた。秋下座長、松田座長代理、中尾副会長の発言要旨は以下のとおり。
【秋下雅弘座長】
(論点の)服用薬剤数については、服薬管理に関する情報として入力されている薬剤の情報をどう考えるかということ。事務局によると、LIFEの入力項目の中で、ここの部分が一番大変だという。用量等々で、いろいろコードなどから入れていくのもなかなか実は大変で把握自体も難しい。そのため、簡素化して薬剤数くらいにとどめるという考え方もある。
介護報酬では、かかりつけ医連携薬剤調整加算で薬剤情報なども入れているので、あくまでLIFEの基本的な部分として、科学的介護推進体制加算のところで入れるかどうかという話ではないかと思う。
服用している薬剤数を入れる場合には、あくまで薬物有害事象という観点からの薬剤数になると思う。内服薬と一部、外用のものでも全身作用を目的としたもの。例えば、ドネペジル塩酸塩のパッチなど、そういうものは入れるけれども、湿布薬とか吸入薬など、有害事象がないとは言い切れないが、大きくはポリファーマシーの問題には関わっていないと考え、把握もなかなか難しい点もあるので、そういう薬剤は外して、内服薬と全身作用薬との重複薬ということで絞るということも必要かと思う。そういうことでどうかということ。
ただ、私はその分野をずっと研究等しており、最近の研究では、薬剤数というのが絶対的な価値を持つものではなくて、むしろ、その中に含まれる「PIMs」と呼ばれる、国内では日本老年薬学会が出している「特に慎重な投与を要する薬物」など、高齢者では有用性よりも有害事象のリスクなどが高いために使用を控えることが推奨される薬物、特にその中でも、睡眠薬や抗不安薬、抗コリン作用を有するような薬物を見ていったほうがいい。例えば、抗コリン薬のリスクスコアが有害事象の発生には関わっているというようなことも最近、われわれの研究でも出ており、学会等で報告している。したがって、今回、薬剤数を入れるからといって、薬の問題は薬剤数だけで片付くものではないということは申し添えておきたい。
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【松田晋哉座長代理】
薬の情報は、ケアマネジメントをやっていく上で、とても重要だと思っている。現在、マイナ保険証を使っていれば、結局、処方情報はすぐわかるようになっている。実際、それはすごく便利な仕組みだと思う。それを広める、一般化するという意味でも、そちらが取れるようにすればいいのではないかと思う。転記するとか選んでいろいろ書くよりも、マイナ保険証、電子処方箋の情報を直接参照できるように取り組むようにすればいい。一定の期間を設けて、その対応ができるようにするのが一番正確で簡単にできるように思う。
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【中尾一久副会長】
32ページの論点について、まず薬剤の件に関しては、秋下先生、松田先生のご意見に賛同する。取っ掛かりは詳しく書かずに、何種類の薬剤を飲んでいるかというあたりから始めて、最終的には、マイナ保険証から直接、情報が持っていければベストだと思う。
続いて、私が本日最も申し上げたいのは、身体拘束の関係である。現在、介護施設における一番の問題は転倒・転落。2番目に皮膚の損傷、外傷、それから3番目に誤嚥、窒息。これらが現場では問題になっていると思う。誤嚥に関しては、口腔・栄養なども関連するが、転倒や外傷に関しては、現場では実際にいろいろ起こっているにもかかわらず、このLIFEでは引っ掛からないシステムになっているような気がする。
参考資料(標準的なQuality Indicator)の4ページ(QIに資する18個の評価項目と現状のLIFE関連加算に含まれる評価指標との対応一覧表)によると、「臨床状況」の「小分類」で、「身体拘束」、「転倒/骨折/外傷」については、科学的介護推進体制加算が「該当なし」となっている。
しかし私は、身体拘束がどうしても転倒や皮膚の損傷などに関係してくると思う。また、身体拘束によって肺炎や尿路感染症を起こしたり、胆石ができて胆道感染症を引き起こすなど、そういった合併症がかなり多く出てきていると私は考えているので、このLIFE関連加算項目に関しては、転倒、外傷、身体拘束のあたりを再考していただければありがたいと思う。
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【秋下雅弘座長】
具体的に転倒・外傷・身体拘束といった項目をご指摘いただいた。基本的にLIFEの対象となるような所では身体拘束はゼロというのが基本的な考え方であると思うので、その確認という意味かもしない。転倒については、「転倒歴」あるいは「転倒のリスク」などだろうか。外傷については、現在抱えている外傷という視点だろうか。中尾構成員の意見として、どういうものを拾ったらいいというお考えだろうか。
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【中尾一久副会長】
例えば、褥瘡はLIFE加算の項目に入っているが、その褥瘡をつくる原因の1つに身体拘束もあると思う。したがって、褥瘡の現状を示すのはわかるとして、その大元になる、例えば身体拘束とか、あるいは、肺炎などを起こす原因が身体拘束になりうるということも含めた考え方を申し上げた。外傷も身体拘束等によって二次的に起きるという考えである。
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論点2 ── 訪問系のサービス
LIFEの対象範囲(論点2)については、LIFE関連加算が「主に人員・設備が集中している施設系、居住系サービスが対象となり、複数の事業所が関与することがある通所系、訪問系のサービスは一部のみが対象となっている」と指摘した上で論点を示し、構成員の意見を聴いた。
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論点では、「訪問系サービス、通所系サービスについては、ひとりの利用者に複数事業所が介入することや、事業所において人員・設備が集中しているとは言えないこと等を踏まえ、LIFE関連加算の対象をどのように考えるか」としている。
中尾副会長は「複数事業所が介入するという文言がキーワードになる」と指摘した上で、各事業所が情報を共有する上でケアマネジャーの役割に期待を込めた。賛成意見が相次いだが、慎重論もあった。
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加算の構造の考え方
野尻晋一構成員(全国デイ・ケア協会 副会長)は「現場のケアマネは高齢化し、離職も高くなっている。しかも、処遇改善加算は介護職員には付ついているがケアマネには付かない中で、次の負荷がかかる」との課題を挙げた。
武田卓也構成員(大阪人間科学大人間科学部社会福祉学科教授)も「いろいろな研修や役割などでケアマネに結構負荷がかかっていると聞くので、その部分をどうしていけばいいのか検討する必要があるのではないか」と指摘した。
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こうした議論を踏まえ、秋下座長が事務局に質問。「(見直しの)たてつけとして、科学的介護推進体制加算が基盤にあって、その上に各種加算が乗っかるというイメージで今、議論しているのだと思うが、例えば、ケアをマネジメントするケアマネジャーのところで科学的介護推進加算を取って、その上に乗っかる部分は各事業所が提供するもので取っていくということも理論的にはあり得るか」と尋ねた。
厚労省の担当者は「あり得ると思う。2階部分というか、科学的介護以外のところで何の加算を紐付けるかとか、そういうところにもよってくるとは思う。ケアマネ自体にもいろいろ加算はある」と答えた。
秋下座長は「そうした情報をケアマネジャーが取って何かもらえるとしたら、それを各関係のところと共有するような形にしておいて、(ケアマネジャーが)実施したものについては、またケアマネのところに戻るというように、医療における、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師のような機能を果たす。それが本来、ケアマネジャーの役割だろうと思う」と述べ、中尾副会長もこの意見に賛同した。中尾副会長の発言要旨は以下のとおり。
【中尾一久副会長】
33ページの論点で、訪問系・通所系サービスにおいては、「複数の事業者が介入すること」という文言がキーワードになると思う。例えば、施設においては、施設長や医師、薬剤師、施設ケアマネがトータル的にアセスメントすることができる。
一方で、訪問系とか通所系では、それをまとめるような、トータル的にいろいろな情報を共有するような何かキーステーションみたいなものがないような気がする。できるかできないかは別として、ケアマネがしっかりいるので、そのケアマネがそれをトータル的に情報を集めて、そしてまた、それを各事業所に情報共有する、返すというふうな、何かそういうシステムが必要だろう。
LIFEのいろいろな項目について、各施設がそれぞれ情報を出したとしても、それを誰がどうまとめて、どうコーディネートするか。この(LIFEの対象範囲の議論の)前に、考える必要があるのではないか。
私の個人的なイメージでは、いわゆる小多機や看多機は、通いや泊まりなど、うまくコーディネートできている。これは小多機や看多機のケアマネジャーが中心にそういうことをマネジメントしていると思う。そういうイメージで、例えば、デイケアやデイサービス、訪問看護ステーションなどをまとめてグルーピングをしていけばうまくやれないだろうか。私は、個人的にはそのように思っている。
2025年11月20日






