包括的な評価、「質低下の防止を」 ── 橋本会長、介護保険部会で
介護保険制度の改正に向けて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は、地域の実情に応じた包括的な評価の仕組みについて意見を述べ、「質の低下が考えられるので、その防止が必要」との認識を示した。
厚労省は11月10日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第128回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。
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この日の主な議題は、▼1.人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等、▼2.地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)、▼3.地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)──の3項目。
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大くくりで包括化、簡素な仕組みに
議題1について、10月9日の会合では7項目の論点を踏まえて議論した。
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今回は、①⑤⑥を除いた4項目のほか、新たに⑧(多様なニーズに対応したサービス基盤の整備)を加えた計5項目の論点について、「検討の方向性」などが示された。
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このうち論点③では、「中山間・人口減少地域の事業者が、安定的な経営を行うための報酬の仕組みとして、特例介護サービスの新たな類型の枠組みを活用して、例えば、訪問介護について、包括的な評価(月単位の定額払い)を選択可能とする」とした上で、「包括化の対象範囲として考えられるイメージ(案)」を示した。
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厚労省の担当者は「要介護度や事業者の体制を踏まえて多段階で設定する必要があると考えているが、各種加算についても、大くくりで包括化するなど、一定程度、簡素な仕組みにするといったことが想定される」と説明した。
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不公平感を抱きかねない
質疑で、山田淳子委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は「中山間・人口減少地域の事業者が安定的な経営を行う報酬の仕組みとして、包括的な評価を選択可能にすることは有益な選択肢。また、各種加算も包括化し、回数単位ではなく簡素な仕組みにすることも有効」と評価した。一方、「利用者の負担の考え方は支給限度額との関係にも配慮し、報酬の設計において過度な負担を求めないことがないよう、きめ細やかな報酬体系を検討することが必要」と求めた。
鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「全国共通の保険制度である中で、一部の地域で公定価格ではない基準でサービスを提供するとなると、利用者や保険料を負担している方々にとって納得感が得づらい」と懸念。「他の地域でサービスを提供している事業者が不公平感を抱きかねない点にも留意が必要」と指摘した上で、「保険財政への影響など関係者が納得できる枠組みについて今後、詳細を検討していく必要がある」と述べた。
染川朗委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)は「仮に包括報酬とした場合、利用が少なければ事業者のメリットである一方、利用者から見ればデメリットであり、利用が多い場合にはその反対となり、事業者と利用者の利益相反の構図が常に存在する」と指摘した上で、「サービス内容が同じでも利用量に差が出れば制度の公平性を毀損する懸念がある。報酬体系は移動時間や人件費を踏まえ、事業として成り立つ水準で見直すことが重要」と述べた。さらに、地域によって利用者の負担が過度に増えないよう、「調整交付金の強化や新たな交付金の創設、基金の拡充、財源構成の見直しも含めて幅広く検討する必要がある」と提案した。
橋本会長は「包括的な評価は今後必要なこと」としながらも、サービス提供の確保や質低下などを懸念し、「不公平感に配慮する必要がある」と指摘した。橋本会長はこのほか、同日の議題2、3についても意見を述べた。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。
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地域の実情に応じた包括的な評価の仕組みについて
[橋本康子会長]
包括的な評価は今後、必要なことであると思うが、提供側は必要十分量の確保と、質の低下が考えられるので、その防止が必要。それから、利用者の方は不公平感を感じてしまう。現に、例えば、通所リハなどで、要支援などの方は包括になっているところがあり、包括と出来高を組み合わせていると、なぜ、そこだけなのかというようなことがある。そのため、利用者が不公平感を感じているようなところはあるので、そのあたりのことを配慮する必要があると思う。
一方、包括化にすると、サービス提供の自由度が高くなるのは事実であるし、コストも削減されるという利点があると思うので、そのあたりを十分に考えていけばいいと思うが、包括化だけではなく、出来高との組み合わせも1つ考えられるのではないか。
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認知症施策の推進等について
認知症施策の推進について資料に書かれている内容は、確かにそのとおりかであるというところが多いが、これは基本的に軽度認知障害、いわゆるMCIに対する施策であると見受けられる。
認知症は進行していく疾患であり、MCIから初期、中期、末期と、大きく4段階ぐらいに分かれる。そのため、認知症施策については、MCIだけではなく、中期や末期も重要なことだと思うし、それに対する診断や予防、治療など、そうした医学的な診断という視点も重要ではないかと思う。
それにあわせて、中期、末期のときだけではなく、児童や高齢者、障害者の虐待防止の法律等もある。認知症に関しても、そうしたことを考えていかなければいけない。
いずれにしても、ここで議論されていることは、軽度の認知障害のとき、もしくは初期の段階なので、中期・末期の状態の方もいらっしゃることを考えて、そこも議論に入れていくべきではないか。
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有料老人ホームのあり方等について
先ほど(サ高住との違いについて)意見があったように、確かに私も違いがわからないところはあるように思う。利用者、入居者、ご家族の方々は、有料老人ホームと他の軽費老人ホーム、その他の介護保険施設との違いがほとんどわかっていないところがある。もう少し丁寧に説明するか、わかりやすい状況にしたほうがいいと思う。
有料老人ホームの数が大幅に増えてきている。利用者の安全性の確保やサービスの質の担保は必須であると思うので、資料に書かれているとおりだと思う。
一方、有料老人ホームが選択されて増えている1つの理由としては、入居することが簡単という点があると思う。手続きが簡単で、お金さえあれば入居できるという面がある。そのため、あまり複雑にしてしまうと利用しにくくなって、本末転倒になりかねないので、そのあたりは考慮しなければいけないと思う。
2025年11月11日





