病院の逆紹介割合、「疾患によって違う」── 井川副会長、外来医療の議論で
外来機能の分化などをテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「悪性腫瘍等の再診率が高くなると逆紹介率が下がるのは自明。疾患によって違うので特定機能病院でも全て同じにはならない」と指摘し、さらなる分析を求めた。
厚生労働省は7月17日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和7年度第7回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。
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今回の議題は「外来医療」など5項目。厚労省は前回と同様、令和6年度調査結果などを踏まえた資料(入-1)で「現状と課題」などを示し、委員の意見を聴いた。
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特定機能病院は基準を下回る
最初の議題「外来医療」は6月19日の会合に続いて2回目の議論。前回はかかりつけ医機能を中心に、今回は外来機能の分化、病院と診療所の連携などについて意見を交わした。
外来機能の分化について厚労省は「病院区分別の逆紹介割合」を提示。それによると、特定機能病院以外の区分では、中央値・平均値ともに減算基準を超えていたが、特定機能病院では平均値が減算基準を下回っていた。
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委員の発言はこの調査結果に集中した。牧野憲一委員(旭川赤十字病院特別顧問・名誉院長)は「特定機能病院において逆紹介が進んでいない。これはなぜかを考えてみた」と切り出し、①外来に投入できる医師の数が多い、②再診を行わなければならない理由──の2点を挙げた。
このうち②については、「悪性腫瘍の治療をすると、再発の有無の確認を含めた術後のフォローアップで3カ月から6カ月単位で定期的な受診が必要になる。疾患の性質上、かかりつけ医にフォローアップを任せられないものもあるのではないか」と指摘。大学病院と同規模のDPC病院のデータなども確認する必要があるとした。他の委員からも、さらなる分析を求める意見が相次いだ。
井川副会長も「疾患によって全然違う」とした上で、「十把一絡げで特定機能病院は全て一緒という形にはいかない」と指摘した。
このほか、井川副会長は議題2、5について意見を述べた。井川副会長の発言要旨は以下のとおり。
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外来医療(その2)について
[井川誠一郎副会長]
私も同じ項目に関して意見を述べる。牧野委員をはじめ、皆さんがおっしゃるように、逆紹介率に関しては、悪性腫瘍等の再診率が高くなると逆紹介率が下がるというのは自明のことである。
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逆紹介率を特定機能病院で出している病院はあまりないが、例えば、国立がん研究センター東病院の逆紹介率は2024年では37.4パーミル程度。一方、がんの治療などが全くない国立循環器病研究センターでは、ほぼ100パーミルのデータを出している。これは、やはり疾患によって全然違うということにつながっているので、そういうところを具体的に調査していただかないと、十把一絡げで特定機能病院は全て一緒という形では、いかないのではないかと思っている。
次に、診療情報提供料等に関して意見を述べる。今後、かかりつけ医機能が文字どおり機能を発揮していくと仮定すると、診療情報の提供は、かかりつけ医と病院を結ぶジョイント部として非常に重要な意味を持つと考える。
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33ページ。診療情報提供料の算定回数の適正値はわからないが、令和3年以降は増加傾向にあるのは喜ばしい。連携強化診療情報提供料について、令和6年は大きく増加している。
一方、診療情報提供料(Ⅰ)(Ⅱ)も増加している。ただ、診療情報提供料では診療所と病院がほぼパラレルに増加しているのに対し、連携強化診療情報提供料は病院の伸びだけが異常に高い。これはなぜか、事務局で把握していれば教えていただきたい。
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診療所の伸びが少ない理由について、32ページにあるような複雑な算定要件のために診療所がなかなか算定できないのであれば、もっとシンプルにして、算定しやすいようにすべきだろう。今後、かかりつけ医と病院をつなぐ非常に重要な部分が欠落してしまう恐れがあるので、その点も考えていただきたい。
【厚労省担当者】
33ページの連携強化診療情報提供料の病院が特に伸びている理由について、事務局として定まった見解があるわけではない。また、詳しく分析して示したい。
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包括的な機能を担う入院医療(その2)について
資料の「課題」には入っていないが、地域包括ケア病棟に関して意見を述べる。地域包括ケア病棟に関して、私は以前から3つの機能を平均的にこなすのではなくて、ある程度、特化しても構わないのではないかと申し上げてきた。
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42ページ(地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟の救急搬送受入状況)に示されているように、地域包括ケア病棟を有していても救急搬送を多く受け入れている病院は急性期病棟を有している。前回改定時の調査で、その多くが地域包括ケア病棟ではなく急性期病棟に入院していることがわかっている。
私のグループに急性期病棟を有しない地域包括ケア病棟で年間1,500件ぐらいの救急患者の搬送を受け入れていた病院がある。地域包括医療病棟ができた段階で、速やかに医療病棟に転換した。つまり、この傾向というのは、地域包括医療病棟ができることによって、より顕著となっているのではないかと考えている。
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一方で、46ページ「地域包括ケア病棟における在宅・施設の後方支援の状況」を見ると、救急搬送が極めて少ない、施設にはゼロのところでも、在宅患者緊急入院診療加算や協力対象施設入所者入院加算の算定件数が多く、地域医療、在宅との連携、もしくは後方支援に貢献している病院も非常に多くある。
救急搬送がゼロという病院にとって二次救急や救急告示という施設基準が果たして、どういう意味を持ってくるのかということになると、実質より形をとっているとしか思えなくなってくる。
このことは同時に、療養病棟から地域包括ケア病棟を取得している場合に減算規定があって、救急の部分がなければ5%減算になっているので、そういうことも含めて考えなければならないと考えている。地域包括医療病棟を創設した今、地域包括ケア病棟というのは、もっとフレキシブルに自由に動ける病棟になれるのではないかと考えている。
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次に、地域包括ケア病棟における栄養管理について述べる。確かに、管理栄養士の配置要件がないために病棟業務に従事する時間が短いことは否めない。しかし、72ページの「地域包括ケア病棟における栄養管理について」の3ポツ目には、「地域包括ケア病棟では、地域包括医療病棟に比べて低栄養のリスクがある患者が少なく、適切に覚知されていない可能性があった。」という文面がある。
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70ページのデータの対象が、栄養スクリーニングをきちんとやっている患者という前提に基づくと齟齬があるのではないかと考える。6月26日の分科会で示されたように、病棟の管理栄養士が少ないという状況がある。管理栄養士の配置を何らかの要件として加えるのであれば、病院全体の管理栄養士を増やすという努力をその前にしておかなければ、結局、管理栄養士の取り合いみたいな形になってしまって非常にリスキーなことになると考えている。
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薬剤業務について
ポリファーマシーについて眞野委員も触れられたが、急性期病院で減薬という役目を果たすことは私も難しいと思っている。
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急性期病院の多くは専門的治療もしくは救急治療になっているので、その時点で、165ページにあるように自科以外の処方薬を調整するのは非常に難しい状況になっている。さらに、減薬にもリスクを伴うので、経過というのはある程度、追う必要があるのだが、急性期病院では原疾患の治療が終わった時点で、減薬をして経過を見る期間はほとんど残っていない。退院していただかないと仕方がないという状況で、切るということはまず難しいだろうと考える。
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そのため、164ページの薬剤総合評価調整加算の算定状況や、165ページのアンケート調査結果などを、例えば入院基本料別で解析していただいたら、多少は違う結果が何らかの形で出てくるのではないか。
一方で、そもそもポリファーマシーの多くは、私は急性期病院の専門治療で生じていると感じている。疾患別ガイドラインが非常に多く存在するが、1つの疾患に対して複数の薬剤の併用を勧めていながら、ポリファーマシーに関する記載が全くないガイドラインが非常に多い。
私は元心臓外科医なので心臓関係で見てみると、例えば「高血圧治療ガイドライン」には、ポリファーマシー対策について書いてあるが、日本循環器学会や日本心臓血管外科学会などが合同で策定した「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン」では一切触れられていない。その上で、スタチンを投与しろ、抗血小板薬をはじめに2剤投与しろと書かれている。
医師はガイドラインに則って投与するので、どうしても多剤になってしまって、いくつかの専門医にかかっていると、あっという間に多剤になるというのが現状ではないかと思う。
ポリファーマシーは、要するに、われわれ医療者が生み出した弊害である。これは分科会マターではないが、専門医教育において、あるいはガイドラインの中にポリファーマシーによる弊害をしっかりと組み込むなどの発生予防対策をとること。一番大事なことは、80歳以上の高齢者に対する薬剤の治験データが皆無に近いということを、われわれ医療者が認識しなければならないと思っている。
2025年7月18日











