災害対応に係る保健医療福祉関係団体連絡会議 出席のご報告

協会の活動等 審議会

20250702_保健医療福祉団体連絡会議

 厚生労働省は7月2日、「災害対応に係る保健医療福祉関係団体連絡会議」の初会合を開催し、当会から安藤正夫常任理事(金上病院院長)が出席した。医療関係団体からは、日本医師会の茂松茂人副会長、日本歯科医師会の高橋英登会長、日本薬剤師会の岩月進会長、日本看護協会の秋山智弥会長らが出席し、意見を述べた。

 この会議は、保健・医療・福祉の団体の平時からの連携強化を図るため、その具体的な対応の一環として開催された。昨年12月、内閣総理大臣を本部長とする「防災立国推進閣僚会議」では、能登半島地震の対応を踏まえた令和7年度の災害対応の強化策の1つとして、保健医療福祉活動チームの対応の迅速化・標準化を図る方針が示されている。

 開会の挨拶で、福岡資麿・厚生労働大臣は、法改正によるDWAT(災害派遣福祉チーム)の支援拡大に触れ、「関係機関の皆さま方の連携が求められる。厚生労働省としても、平時からの保健医療福祉関係者の連携強化に取り組んでまいりたい」と述べた。

【福岡資麿・厚生労働大臣の挨拶】
 皆さま、おはようございます。ご紹介いただきました厚生労働大臣を務めております福岡資麿と申します。今日はお忙しい中、皆さま方にはお時間を割いていただいて、お集まりをいただいておりますこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。また、本日お集まりの保健医療福祉関係の皆さまにおかれましては、平時から国民の命と健康を守るためにご活動をいただいていることを心から感謝を申し上げさせていただきます。
 加えまして、令和6年1月に発生をいたしました能登半島地震をはじめとする幾多の災害の発生時におきましては、多くの団体による保健医療福祉分野の活動チームが被災地の支援に大変なご尽力をいただきましたこと、重ねて御礼を申し上げさせていただきます。
 こうした取組につきましては、不断の検証であったり、改善を行いながら進めていくことが重要だと考えておりますが、政府の災害対応の検証であったり、有識者会議の報告におきましては、迅速な被災者支援のためには、関係機関・団体間の連携を強化すべきとの指摘がなされているところでございます。また、6月4日に公布をされました改正災害救助法によりまして、DWATの活動範囲が避難所中心の対応から、在宅であったり、また車中泊での避難する要配慮者への支援にも拡大されることとなりました。
 このように、関係機関の皆さま方の連携が求められる中、今回、平時からの関係団体の連携強化に向けて、具体的な対応の一環といたしまして、関係団体の方々に一堂に会する連絡会議を初めて開催をさせていただくことになりました。
 皆さま方からは、これまでの対応を踏まえました今後の取組であったり、また、ご意向等につきまして、お話をいただけることは大変貴重な機会だというふうに考えております。
 厚生労働省といたしましても、皆さまからご報告いただいた内容を踏まえまして、平時からの保健医療福祉関係者の連携強化に取り組んでまいりたいと考えております。
 本日の会議が全ての出席者の皆さまにとりまして、実り多いものとなることを願いまして、私からのご挨拶に代えさせていただきます。本日はありがとうございます。

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災害対応の共通認識の醸成を図る

 福岡厚労相の挨拶に続いて、厚労省大臣官房厚生科学課の眞鍋馨課長が厚労省提出資料に基づいて説明。令和7年度の「保健医療福祉活動チームに係る連携体制構築事業」を示した上で、「厚生労働省が実施主体となり、活動チームの事務局となる全国組織に対して参加を呼びかけ、意見交換会や合同訓練・研修を通じて災害対応の共通認識の醸成を図ることで、対応の迅速化や標準化などの体制強化を図る」とした上で、「事業の詳細は後日ご案内を申し上げるので各活動チームの皆さまには積極的なご参加をお願いしたい」と協力を求めた。

 その後、約1時間にわたり関係団体から意見聴取。日本医師会の茂松副会長は能登半島地震におけるJMAT(日本医師会災害医療チーム)の活動などを紹介した上で、JMATの組織強化に向けた検討を説明。「研修の充実を図り、各団体の皆さまと平時から顔の見える関係をつくって連絡していきたい」と述べた。

 日本歯科医師会の高橋会長は、能登半島地震におけるJDAT(日本災害歯科支援チーム)の活動実績と課題について説明。「災害に強い歯科医師会として、避難所での災害関連死を防ぐ。誤嚥性肺炎を減らす。既に実績がある災害関連死の減少という面で協力していきたい」と述べた。

 日本薬剤師会の岩月会長は「現在、災害薬事コーディネーターおよび災害医療支援薬剤師の養成に努めている」とした上で、政府が2026年度の設置を目指す防災庁に期待を込め、「平時からの関係団体との連携強化のためにも、ぜひ防災庁に薬剤師の参事官を配置していただきたい」と要望。今後に向けて、「日本医薬品卸売業連合会の方々とも協力しながらスムーズに医薬品を提供できるよう努めたい」と述べた。

 日本看護協会の秋山会長は、能登半島地震における災害支援ナースの活動を振り返り、引き続き養成に努める意向を表明。「現在、養成研修を修了した災害支援ナースは全国で8,408名。今年度も養成研修を実施し、研修修了者のリスト化を進め、災害等発生時に都道府県において迅速に職員が確保できるよう取り組んでいきたい」と述べた。

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受援体制も構築していく

 日本災害リハビリテーション支援協会の栗原正紀代表理事は「東日本大震災以降の活動をもとに現在、完全に組織化をしており、13のリハビリテーション医療関連団体が参画している組織」と挨拶。「能登半島地震においては、われわれの支援の趣旨である被災者・要配慮者の生活不活性発病や災害関連死等の予防も含め、全国から延べ6,000人を超える仲間が支援に駆けつけた」と伝えた。
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JRAT資料

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 その上で、栗原代表理事は「そのプロセスにおいて、いろいろな課題が見えてきた。災害に関する以前からの課題とも言える」とし、①支援団体間の情報共有化、②避難所環境問題:バリアフリー化、③避難所における嚥下障害・低栄養者対策、④2次避難者の孤立化・生活不活発、⑤被災時の迅速な体制づくり──を挙げた。

 このうち④については、「特に1.5次避難所以降の2次避難所に対する手がなかなか伸びなかった。ホテル等の2次避難所における被災者の方々は認知症がひどくなったり、いろいろな孤立化があった」とし、車両などで移動しながら要介護者らを集めてリハビリを提供するなど「モバイルデイケアという企画を設定できたら、いろいろなことに役立つのではないか」と提案した。

 また、⑤については、「都道府県ごとにシミュレーション会議を実施するような体制を推進していただければ非常に有用ではないか。われわれは現在、全国30の道府県と協定を締結しており、残り17都県との締結も進めたいので、厚労省からも助言をいただきたい」と要請した。

 各団体が意見陳述を終え、最後に吉田真次・厚生労働大臣政務官が挨拶。「支援するだけではなく、せっかくの支援を受けられるような受援の体制をこれから構築をしていくということも大切だと感じた」とした上で、「被災者支援の迅速化のために各団体との連携強化に取り組んで、ニーズに沿った支援を行っていきたい」と述べた。

【吉田真次・厚生労働大臣政務官の挨拶】
 厚生労働大臣政務官の吉田真次でございます。本日は、災害対応に係る保健医療福祉関係団体連絡会議、皆さま、お集まりをいただきまして、本当にありがとうございました。
 この規模で、こうした会議を開催するというのは初めてのことでありましたが、各分野で皆さま方から、さまざまな視点でのご報告をいただきまして、改めて皆さま方のこの真摯な取組に心から敬意を表するところでもございます。やはり、この支援をするというだけではなくて、先ほど今もありましたように、せっかくの支援を受けられるような受援、この体制をこれから構築していくということも大切なのだろうと感じたところでもございます。皆さま方からご報告をいただいた内容も踏まえて、厚生労働省では、被災者支援の迅速化のために各団体の皆さま方との連携強化に取り組んで、被災者の皆さま、そして、現場でご尽力をされている方々のニーズに沿った支援を行ってまいります。
 具体的には、これも冒頭ございましたように、平時において関係者間で、このようにして意見交換を行ったり、災害の発生時を想定した合同訓練、研修、そうしたものを実施し、有事においては「D24H」等の情報システムを活用して情報分析、そして現地の保健医療福祉活動チームとの連携、調整、オペレーションに対する助言、こうしたものを行いながら、関係者間の連携強化を支援する体制構築を進めてまいります。
 各団体の皆さま方におかれましては、有事に備えた、この平時からの体制の構築にご協力をいただきますとともに、それぞれが実施をされておられます人材の養成、そして、体制の構築、これらにおいても団体間の連携も意識した取組を進めていただきますように、心からお願いを申し上げるところであります。
 厚生労働省をはじめとする政府と関係団体の皆さまが一体となって、人命と人権を最優先にした被災者支援のために連携強化の取組を加速するべく、より一層のご協力をお願い申し上げまして、本日の総括のご挨拶といたします。皆さま、本日はご協力、本当にありがとうございました。

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