「転送先にインセンティブを」── 救急医療で井川副会長

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20250703_入院外来分科会

 救急医療などをテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は、三次救急から転院搬送する場合の評価について「搬送先にはインセンティブが設けられていない。搬送先にも同様の加算が必要」との見解を示した。

 厚労省は7月3日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和7年度第6回会合を開催した。所要により欠席となった当会の井川副会長は救急医療について意見を提出した。
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01スライド_議題

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 この日の会合では、同分科会の作業班からの報告のほか、「急性期入院医療(その2)、「救急医療(その1)」について、資料(入-3)に示された課題を踏まえて議論した。

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救急患者連携搬送料の届出は17%

 議題4(救急医療)では、令和6年度診療報酬改定で地域包括医療病棟とともに新設された救急患者連携搬送料がテーマに挙がった。
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02スライド_P60表紙

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 同搬送料に関する「現状と課題」では、「届け出ていない理由」を指摘したほか、「個別の下り搬送患者の受け入れに対する特別な評価は設けていない」などの課題を挙げた。
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03スライド_P96現状と課題

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 令和6年度調査によると、高度救命救急センターなどの救急医療機関で「救急患者連携搬送料を届け出ている」と回答したのは17%にとどまった。その理由として、「『地域のメディカルコントロール協議会等と協議を行った上で、候補となる保険医療機関のリスト』を作成するという要件の達成が困難であるため」という回答が多かった。
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04スライド_P68抜粋

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 質疑で、牧野憲一委員(旭川赤十字病院特別顧問・名誉院長)はこの点を指摘し、「メディカルコントロール協議会との協議がどの程度必要なのか有効なのかが私にはわからなくて、これ(MC協議会)が開かれないために実は算定できないところもある。こうしたところを改善することで、より算定が増えるのではないか」と述べた。
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05スライド_P62抜粋

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 一方、中野惠委員(健康保険組合連合会参与)は「保険医療機関リストを作成することが難しいという回答があるが、これは連携による搬送の強化ということなので、リストの作成は大事な要素だと思う」と述べた。

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受け手側の評価があってもいい

 中野委員はまた、搬送先の評価に言及。「その他の病棟においては、個別の下り搬送患者の受け入れに対する特別な評価は設けていないということがあるので、医療資源投入量の違いを明らかにするなどして検証していくことが必要ではないか」と提案した。

 令和6年度改定では、地域包括ケア病棟の救急受け入れについて「在宅患者支援病床初期支援加算」の一部が引き上げられた。厚労省の担当者は「救急搬送された患者または救急患者連携搬送料を算定して転送された患者については、その他の場合よりも少し高く評価されるような見直しがなされている」と説明した。
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06スライド_P76抜粋

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 小池創一委員(自治医科大地域医療学センター地域医療政策部門教授)は「救急患者の連携搬送について受け入れ側医療機関への評価というものがあれば、機能分担や連携も一層進むのではないか」とした上で、「その際に送り手側のインセンティブを減らして受け手側のインセンティブを、という議論になってしまうと政策誘導としての目的達成が難しくなる可能性が出てくる」と指摘した。牧野委員も「受け手側のほうの評価がもう少しあってもいいのではないか」と述べた。

 すべての発言が終わり、最後に厚労省の担当者が井川副会長の提出意見を読み上げて閉会した。詳しくは以下のとおり。

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井川副会長の意見

[厚労省保険局医療課・矢野好輝課長補佐]
 事務局でございます。本日欠席の井川委員から本件に関しまして、ご意見が出ておりますので、読み上げをさせていただきます。

 高齢軽症救急患者が三次救急に搬送されるのは、二次救急で不応需となったからで、三次救急に搬送された高齢軽症救急患者を二次に転送させるということに無理があり、一次救急や慢性期病院への転送が必要となります。

 急性期病院の多くは、自院を中心に慢性期病院との病病連携を既に確立していることも多いことから、MC協議会の作成したリストという枠に縛られることなく、自由に使って転院搬送を進めたほうが、より高齢軽症救急患者の入院先のマッチングが進むと考えます。
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07スライド_P68

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 また、救急患者連携搬送料の届出の障害となっている「自院又は連携先医療機関が緊急自動車を保有していないため」について。
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08スライド_P55

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 転送に救急隊の救急自動車を用いることにより、三次救急からの転送が容易になれば、55ページ目に示されている医療機関選定を含めた車内収容から現発までの時間が短縮され、救急隊の救急自動車の回転率が向上し、逆に救急隊の負担が軽減するという可能性もあります。

 また最後に、本加算は搬送元にのみ加算が付きますが、搬送先にはインセンティブが設けられていません。受け手ありきの加算であるため、搬送先にも同様の加算が必要と考えます。

 というご意見がございましたので、ご報告させていただきます。

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