コロナ対応に地域差、「詳しい分析を」 ── 池端副会長、中医協総会で

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年3月10日の中医協総会

 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた診療報酬上の対応策などを審議した会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「一口に『コロナ対応』と言っても、感染拡大地域と、そうではない地域では差が大きい」と指摘し、「特定警戒都道府県とそれ以外など、詳しく分析してはどうか」と提案した。

 厚生労働省は3月10日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第476回会合をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の総会では、コロナの影響を踏まえた今後の対応が議論の中心となった。報告事項として議題に挙げられた「最適使用推進ガイドライン」と「DPC対象病院の合併に係る報告」では発言がなかった。
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経過措置の再延長などを了承

 厚労省は同日の総会に、今月末が期限となっている経過措置などを9月末まで延長する猶予策を提案し、了承された。
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33_【総-2-3】コロナの影響を踏まえた診療報酬上の取扱い_20210310中医協総会

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実績の記録や届出を求める

 厚労省はまた、医療機関の実情を把握するために実績の記録や届出を求めることを提案し、了承を得た。
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34_【総-2-3】コロナの影響を踏まえた診療報酬上の取扱い_20210310中医協総会

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一斉の新基準適用は大きな影響

 この日は、中医協総会の前に入院医療等の調査・評価分科会が開かれた。厚労省は同分科会で、コロナ前後の変化などを分析した結果を提示。委員から「コロナ対応あり・なしだけではなく、より深掘りすべき」などの意見が出た。

 こうした調査結果などを踏まえ、厚労省は総会で経過措置の再延長などを提案。その理由として、「コロナ対応等の違いのみで分布の違いを説明しきれるわけではなく、コロナ補正を講じた場合であっても一斉の新基準適用は医療提供体制に大きな影響を与える可能性がある」との考えを示している。
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32_【総-2-3】コロナの影響を踏まえた診療報酬上の取扱い_20210310中医協総会

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全国の医療機関に影響を与えている

 質疑で、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「今回示された入院分科会の調査結果やNDBデータなどから、コロナの影響は個別の報酬項目や特定の医療機関に限って表れているのではなく、全国の医療機関に影響を与えていることがエビデンスとして示された」と評価した。

 その上で松本委員は「この入院料であれば経過措置をやめてよいとか、特定の医療機関については経過措置を延長する必要はないとか、そういうクリアカットな判断をすることはできない」と強調し、「経過措置の再延長は診療側として賛同したい」と了承した。
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コロナの影響、「理解している」

 こうした診療側の主張に対し、支払側からの反論はなかった。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「この1年の医療機関における大変さは支払側も理解しているし、本当に感謝している」とし、「一律延長はもう今回限りにすべき」と受け入れた。

 同じく支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「コロナ対応等の明確な因果関係は不明なものの、どの医療機関においても一定程度の影響が見て取れることは理解している」とし、「延長することは現状でとりうる最善の策だと理解するので、特段反対する要素はない」と了承した。
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地域差を分析に入れてはどうか

 ただ、実績報告や記録に関する対応案については支払側から多くの注文が付いた。吉森委員は「単純にコロナ対応案あり・なしだけではなく、どのような体制でコロナ対応をしたのかを詳細に記載していただく必要がある」などと要望した。

 池端副会長はこれに理解を示し、「実績をきちんと届出して状況をしっかり把握することが非常に重要」と賛同。特定警戒都道府県とそれ以外との違いを比較した資料に言及し、「地域差を分析に入れてはどうか」と提案した。
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13_【総-2-2】コロナの影響を踏まえた診療報酬の算定状況等_20210310中医協総会

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 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

【池端副会長の発言要旨】
 私も皆さんがおっしゃっているように、34ページの事務局案で、ぜひお願いしたいと思っている。実績をきちんと届出していただき、支払側の吉森委員もおっしゃったように、状況をしっかり把握することが非常に重要であると思う。院内クラスター等で大きな影響を受けている施設もあると思うので、個別に対応するための情報も出していただければありがたい。
 そこで、情報分析の在り方について1つ質問したい。コロナの発生動向に関するデータなどを見ると、都道府県によってかなり差がある。これは周知の事実かと思う。ここをどう見るか。
 私は福井県の医師会で対応させていただいているが、福井はまだ感染が少ない。福井県の場合は原則、全て入院扱いをしている。一方で、東京などの感染拡大地域では自宅待機やホテル療養が基本となっている。そのため、一口に「コロナ対応」と言っても、感染拡大地域と、そうではない比較的安定した地域との対応の差が大きく出ていると思う。
 診療報酬というのは基本的には全国統一の報酬体系なので、地域差を見ることが果たして正しいかどうかは別として、情報として、その辺を見ることを分析の中で入れていただけると、より分かりやすいかなという気もしているが、その辺が可能かどうか。
 コロナの影響による患者数の変化について資料13ページでは、「特定警戒都道府県」と、そうでない所の差が出ている。ただ、これはレセプト件数のみで比較しているので、もう少し詳しい分析をしてはどうか。そうすれば、感染拡大が非常に大きくなった場合に、コロナ患者を診ているかどうかにかかわらず影響が出ることも見えてくる。そういう情報分析の在り方というのは、この中医協で可能なのかどうか、事務局にお伺いしたい。

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【厚労省保険局医療課・井内努課長】
 われわれとしては、現在分かるデータとして、13ページをお示しさせていただいた。ご指摘のあった点について、どのようなことができるのか、これからわれわれのほうでもちょっと調べなければいけない。現時点で、これはできる、これはできないという明確なお答えはできかねるが、今のご指摘を踏まえて、何かできないかということについては事務局内でも検討させていただきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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