第69回費用対効果評価専門部会 出席のご報告

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2025年5月14日の費用対効果部会

 厚生労働省は5月14日、中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東京大学大学院経済学研究科教授)の第69回会合を開催し、当会から当会から池端幸彦副会長が診療側委員として出席した。

 同部会は令和6年度の制度改革案をまとめた2024年1月17日以来の開催となる。冒頭、飯塚部会長が「費用対効果評価専門部会のキックオフとなります。どうぞよろしくお願いします」と挨拶。退任した安川文朗氏に代わる部会長代理に城山英明委員(東大大学院法学政治学研究科教授)を指名した後、「今後の議論の進め方」に入った。

 はじめに厚労省の担当者がこれまでの経緯や政府方針などを説明した上で、「今後の議論の進め方(案)」を提示。「関係業界や費用対効果評価専門組織からの意見聴取も行いつつ、検討項目を整理した上で、議論を深める」との方針が了承された。

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より根本的な方向性も議論を

 今後のスケジュールについて厚労省の担当者は「本日5月14日から改定の進め方についてのご議論をスタートして以降、月1回ぐらいのペースで、専門組織からの意見、関係業界からのヒアリング、個別論点についての議論等々を経て、年末に骨子、年明けに見直し案というかたちで議論を進めていただきたい」と伝えた。
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 質疑で、支払側の高町晃司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「今回も同じように個別事項の議論を機械的に進めていくように思う」と懸念した上で、「より根本的なことや方向性についても議論する時期に来ているように思うので、この点について、ご配慮いただければ幸い」と要望した。

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令和8年度は踏み込んだ見直しを

 同じく支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は平成28年12月の大臣合意(薬価制度の抜本改革に向けた基本方針)に言及。「真に有効な医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図ると記載されている」と指摘し、「費用対効果については、まだまだメリハリが不十分だと認識している」と強調した。
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 その上で、松本委員は「前回の制度改正で引き上げ調整の条件を緩和したことや、認知症治療薬の特例的な取扱いを踏まえ、7ページにある政府方針にも沿う形で、令和8年度は踏み込んだ見直しについて議論させていただきたい」と述べた。

 鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「価格調整の対象範囲のあり方など、令和6年度議論の結論として今後、引き続き議論となっているものもある」とし、「レケンビの取扱いも踏まえた上で、医療保険制度の持続可能性の観点からも、しっかりと議論させていただきたい」と述べた。

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薬価を適切に評価できる仕組みに

 一方、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「2019年4月の本格運用以降、事例を確実に積み重ねている」と同制度の成果を評価した上で、「保険償還の可否に用いない、いったん保険収載した上で価格調整に用いるという薬価制度などを補完する観点から活用するのが大原則であり、今後もこれを守っていくべき」と改めて強調。「あるべき日本型の制度にするために、まずは令和6年度に行われた制度の見直しについて検証を進めることが重要」と述べた。

 その上で、長島委員は「検討にあたり、人材育成の視点もさることながら、より実用的に、つまり特定の研究者しか取り扱えないようなものではなく、費用対効果評価自体の費用対効果も考える時期に来ているのではないか」と指摘した。
 
 森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「現行の費用対効果評価は医療費削減を目的とした制度設計となっており、対象となった医薬品のほとんどで薬価が下がる結果となっている」と懸念。「医薬品などの価値を客観的に評価し、費用と効果のバランスを適切に見極めることが費用対効果評価の本質である」と述べた。

 その上で、森委員は価格調整の対象範囲のあり方に言及。「令和6年度診療報酬改定では、価格引き上げ条件について見直しが行われているが、次期制度改革においては、薬価を適切に評価できる仕組みに見直すことが重要」とし、「例えば市販後の実臨床でのデータは重要で、リアルワールドでのデータを活用した評価を検討すべき」との考えを示した。
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