医療DXの推進に積極的に取り組む ── 中医協総会で池端副会長

マイナ保険証の利用や電子処方箋の普及に向けた診療報酬上の対応などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「医療DXの推進は病院の効率化にもつながる。積極的に取り組む」との意向を示し、医療DX推進体制整備加算等の見直しに関する改定案を承認した。
厚労省は1月29日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第603回会合を都内で開催し、当会から池端幸彦副会長が診療側委員として出席した。
この日の総会では、福岡資麿厚生労働相から同日諮問された「医療DXに係る診療報酬上の評価の取扱い」について審議し、即日答申した。医療DX推進体制整備加算・在宅医療DX情報活用加算について、マイナ保険証の利用率や電子処方箋の導入の有無によって点数差を付ける。
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答申に先立つ審議では、診療側から「拙速に進めるあまり、医療提供体制に混乱、支障を生じさせてしまっては本末転倒。数字だけを求めて性急に急ぐのではなく、丁寧にきめ細かく環境整備に取り組んでいく必要がある」との意見があった。システム改修の負担や厳しい経営状況などを指摘する声もあった。池端副会長は、自治体の協力や国民の理解を進める必要性などを述べた。
【池端幸彦副会長の発言要旨】
長島委員の意見とほぼ重なるが、病院の代表として一言述べる。病院団体としても、医療DX推進は病院の効率化につながるため、積極的に取り組むことに異論はない。現状としても、その方向で進めている。
しかし、21ページ(電子処方箋の普及状況)に示されているように、電子処方箋の普及は依然として遅れている。薬局における導入率は63.2%と高いが、病院では3.9%にとどまり、1割にも満たない状況である。
その要因は22ページ(医療現場が導入をためらう要因)に示されているように、体制や財務面において様々な課題があり、多くの病院が持ち出しを求められる現状にあるためである。
さらに、院内処方の登録については、令和7年1月にようやくプレ運用が開始されたばかりであり、効率化に向けた取り組みを同時に進められる状況にはない。また、HPKIカードの申し込みに関しても、現在、数カ月も待たされる状況である。別の方法があるとの指摘もあるが、こうした課題が普及の遅れにつながっている。
長島委員も指摘したように、病院側も決して努力を怠っているわけではない。それにもかかわらず、このような数字が示されているのは、現状の課題の大きさを物語っている。したがって、見直し案については、努力している病院に対してブレーキをかけるような措置や、精神的なダメージを与えるような減算措置は避けるべきである。現在、ようやく関係者が一丸となって取り組もうとしている段階であり、慎重な対応を求めたい。
また、本題とは異なるが、すでに様々なメディアでも指摘されているように、病院全体が財務的に極めて厳しい状況にあり、余裕はないのが実情である。この点も考慮し、前向きな見直しを行っていただきたい。
支払側の主張も理解できる。医療機関がメリットを享受するためには、電子処方箋の導入を進めることが重要である。現状では、薬剤情報がタイムリーに共有されていないが、電子処方箋が普及すれば、情報共有の迅速化が期待できる。この点について、医療機関側も十分に理解している。
しかし、電子処方箋の普及が進まない理由が、単に医療機関が導入をためらっているためだと考えるのは適切ではない。長島委員もこの点を強調していたが、私も同じ認識を持っている。病院団体としての立場を離れて県医師会の立場からの意見を述べると、積極的に普及に向けた取り組みを進めている中で、現場の様々な声を耳にする。
例えば、自治体の窓口では、患者が「マイナ保険証になるのですか?」と質問した際に、「紙の保険証はまだ使えるので、慌てる必要はない」と案内する担当者が一定数存在する。この対応の背景には、住民の反発を避ける意図があると考えられる。しかし、電子処方箋の普及には、自治体も含めた関係者全体の協力が不可欠である。
したがって、自治体に対しても、導入促進のための施策を講じるべきである。これはペナルティとは言えないかもしれないが、自治体が積極的に推進できるよう、インセンティブやディスインセンティブを設けることが望ましい。現状のままでは導入が停滞し、一定の利用率を超えない可能性があるため、この点についても検討をお願いしたい。本題とは異なる内容かもしれないが、現場の感覚として述べておきたい。ご理解いただければ幸いである。
2025年1月30日