休止・廃止理由、「把握していない自治体も」── 令和6年度調査の議論で田中常任理事
令和6年度介護報酬改定に関する調査案が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は事業所の休止・廃止理由について「把握していない自治体もある」と指摘し、「継続的に聞き取りをして、それを踏まえて次の施策を検討することが重要」と述べた。
厚生労働省は9月12日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第242回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
厚労省は同日の分科会に「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和6年度調査)の実施一覧」を示した上で、それぞれの調査項目や調査票について説明し、委員の意見を聴いた。本調査案は部会長一任の形で了承された。
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把握していない場合は「不明」
田中常任理事は「資料1-4」(地域の実情や事業所規模等を踏まえた持続的なサービス提供のあり方に関する調査研究事業)について意見を述べた。
本調査では、特に資源が乏しい地域を中心に介護ニーズの状況や介護サービスの提供体制などの情報を収集・分析。「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進及び次期改定に向けた各種関係調査の検討に資する基礎的な情報を収集・分析することを目的とする」としている。
アンケート調査では、事業所・施設調査のほか自治体調査も実施。その中で、事業所の休止・廃止理由も調査する。調査票によると、休止・廃止の理由を把握していない場合は「不明」に計上する。
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【田中志子常任理事の発言要旨】
自治体調査について、資料114ページの「問3」に事業所の休止・廃止理由に関する設問があるが、自治体によっては把握していない場合も考えられる。自治体が事業所に対して丁寧に聞き取りをして休止や廃止を把握しているのか、わからないような状況もあると聞いている。
事業所の休止・廃止は非常に深刻な問題であるので、継続的に聞き取りをしていく必要がある。今後の課題になるが、事業所の休止・廃止理由については、「問3」に挙げられている項目を合わせて、かつ重み付けをしていかなければいけない。何が最も休止・廃止の引き金になったのか、トリガーだったのか。所轄する各自治体に報告しながら休止・廃止するような促しも今後は必要になってくるのではないか。それを踏まえて、また次の施策に向けて手を打っていただくことが重要なのではないか。
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人材確保に向け、職場見学会などを実施
この日の会合では、訪問介護事業への支援について報告があった。厚労省の担当者は「令和7年度概算要求において、訪問介護の人材確保を支援するために必要な経費を新たに計上して概算要求に盛り込んでいる」と伝えた上で、「訪問介護事業への支援強化パッケージ」や「処遇改善加算の更なる取得促進方策」などを示した。
質疑で、自治体の担当者は「都市部で同一建物への集中的な訪問介護によって利益を上げている事業者がある一方、人口減少が深刻な地域で採算性が悪くても貴重な社会資源として役割を果たすべくサービスを提供している事業者もある」と指摘した上で、「地域差に対応する仕組みづくりにも配慮していただきたい」と求めた。
田中常任理事は、都道府県の介護保険部局が主体となる「介護人材確保のための連携協議会」の支援事業について意見を述べた。本事業では、職場見学会や体験会などを実施し、「採用のミスマッチを防止しつつ、地域の特性やニーズに合った介護人材の確保・定着を図る」としている。
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【田中志子常任理事の発言要旨】
他の委員の皆さまと同様に、訪問介護事業への支援は大賛成である。その上で、資料11ページ「介護人材確保のための福祉施策と労働施策の連携体制の強化」について意見を申し上げる。「事業のイメージ図」に多少の検討を加えていただきたい。事業所の支援になるような具体的な指導をお願いしたいと思う。
少人数の事業所の場合、忙しい中から人を出して、この職場説明会や合同面接会に参加できるのだろうか。地方であれば、移動にも時間がかかる。本来であればホームヘルプができる時間帯に、その時間をさいて、そうした人的・時間的な負担が可能なのかについても、ご検討いただきたい。
参加する側にも何らかの具体的な、その場でのインセンティブが必要だと思う。施設見学や職場体験のときにも、同じく人的・時間的な負担が発生する。事業所にそれらを背負わせることがないようにお願いしたい。真に介護事業者が増えるような効果的な財源の使い方が大切であり、ただ単にイベントなどを開催するということで実績を終わらせないでいただきたいと思う。
ところで、先ほどの議論の中で集合住宅に対する意見があった。地方では自宅に住みたくても、年々の暑さの中でエアコンがなく、あるいはエアコンがあっても使いこなせない認知症の方々がいる。本当に命のために集合住宅に避難的な生活の場を移される方もいるので、そういったところにもホームヘルプは必要だと思う。
2024年9月13日