「大きな課題に関わらせていただいた」── 池端副会長、医療保険部会で退任挨拶

日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は7月3日、厚生労働省の社会保障審議会(社保審)医療保険部会で退任の挨拶を述べ、「大きな課題に関わらせていただき、とても勉強になった」と謝意を示した。
池端副会長は、2018年7月から同部会の委員を務めた。6年間の主な議論を振り返りながら、「できうる限り現場で起こっていることを正確かつ正直にお伝えすることが、私にしかできない使命ではないかということを肝に銘じ、この部会に臨み、発言させていただいた」と語った。
【池端幸彦副会長の発言要旨】
私は2018年、平成30年7月の第113回から今回の第180回まで約60数回、この部会に参加させていただいた。前任の日本慢性期医療協会名誉会長の武久洋三氏の後を受けた形で日本慢性期協会副会長という立場で、この部会に入らせていただいた。2019年に福井県医師会の会長を拝命し、そして後半の4年間は中医協委員も併任させていただいた関係で、その立場からも発言させていただいた。
ただ、私自身は地元の地域密着型の小さな病院の外来、訪問、入院、介護等で今もなお現場で、第一線で働いている医師としての立場を重視して発言してきたつもりである。
これまで多くの重要な議題があった。診療報酬改定の基本方針に関わらせていただいたことはもちろん、高齢者医療の負担のあり方等を含めた医療保険制度改革などで、いろいろご意見をいただいたことが本当に勉強になった。2020年に始まった新型コロナウイルス感染症への対応として会議が全てウェブになったことなど、いろいろな意味で思い出深い。そのほか、本日も議論があった医療DX関係、また不妊治療の保険適用化、薬剤給付の適正化、後発医薬品の利用促進と不安定供給への対応等、本当に大きな課題、大変な課題に関わらせていただいたことは、とても勉強になったと思っている。
ただ、先ほども述べたように、私自身は、この部会では数少ない、地域で働く現役バリバリで医師として働いている立場を大事にしながら、できうる限り現場で起こっていることを正確かつ正直にお伝えすることが、私にしかできない使命ではないかということを肝に銘じ、この部会に臨み、発言させていただいたつもりだ。本日はメモを用意してきたが、実はこれまでのほとんどが読み上げ原稿なしの発言であった。そのため、時には的外れで失礼な発言になってしまったことがあるのではないかと反省している。改めてこの場を借りて、その点についてはお詫び申し上げたい。
さまざまなお立場で医療保険に関わる素晴らしい委員の皆さま方と、いろいろな議論を通じて多くの勉強をさせていただいたことは、私にとって、かけがえのない財産となったことは間違いない。改めて皆さま方に心から感謝を申し上げたい。そしてまた、私のような拙い者の意見を常に真摯に傾聴していただき、とても発言しやすい雰囲気をつくっていただいた田辺部会長にも心から感謝を申し上げたい。さらに、微に入り細に入り、資料作りをはじめ会議運営にご尽力いただいた事務局の皆さま方にも心から感謝を申し上げる。
最後に、今後とも当部会がさらに活発な議論の中で、世界に冠たる我が国の国民皆保険制度をしっかり守り抜いていただけることを切にご祈念申し上げ、私の退任のご挨拶とさせていただきたい。本当に長い間、ありがとうございました。
この日の部会では、前回会合に引き続きマイナ保険証の利用促進が議題となった。今回はマイナ保険証の利用時に生じる主な課題への対応策などを示し、委員の意見を聴いた。池端副会長はメディアの積極的な活用などを提案した。
【池端幸彦副会長】
マイナ保険証の利用促進に向け、多くの課題への対応策について説明していただき感謝を申し上げる。私の経験から、推進策の1つを紹介したい。ヒントになればいいと思うので、少しお話しさせていただく。
一般市民に最も広がりやすいのは口コミ。そして、マスメディアだと思う。私たちの側からプッシュ型でいろいろな情報を流しても、なかなか興味を持っていただけないが、一般誌やテレビのワイドショーなどで取り上げられると興味を持ってくださる。先日、当院が地元の放送局から取材を受けたところ、患者さんから多くの問い合わせがあった。国レベルで放送局にプッシュするのはなかなか難しいと思うが、各自治体とメディアの関係は距離が近く、効果が期待できる。マスコミに取り上げていただくことで、ものすごく広がることがある。私は放送局から取材を受けて、テレビで映像が流れた後、別の放送局からも取材を受けた。目に見えて広がっていく。関心を持ってくれる患者さんが増えたと実感できているので、こういうことを地方レベルで進めていけば広がっていくのではないか。国として、どこまで可能かは別として、こうした取り組みも1つの方法ではないか。
先ほど、伊原局長から職員の出張サービスという素晴らしい取り組みの紹介があった。実は私どもの市でも、マイナンバーカードの出張申請サービスを始めたのだが、これは全ての都道府県や市町村で実施しているのだろうか。このサービスは高齢者の方々には非常にありがたいので、これもとても有効な促進策になると思う。
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【厚労省担当者】
池端先生からご指摘いただいた取り組みは、各自治体における出張申請で、例えば高齢者施設や福祉施設への出張申請といった対応である。昨年8月、12月に福祉施設向けのマニュアルなどを策定させていただく際、総務省における取り組みとして、全国の自治体にそういう出張申請という方法があるということと、さらに出張申請の際の支援事業、それは総務省から全国の自治体に対して行っていただいている。
この出張申請の具体例として、例えば在宅で障害を持っておられる、あるいは難病を持っておられる患者さん、あるいは、そういう支援の必要な在宅の方々に対する対応も出張申請の対象であるということを総務省からも自治体に対してお示しをいただいている。こうした取り組みがあるということを総務省とともに周知していきたいと考えている。
2024年7月4日