マイナ保険証、「裾野を広げていく時期」── 中医協総会で池端副会長

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2024年7月3日の総会

 マイナ保険証に関連する加算の要件などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「いかに裾野を広げていくかが大事な時期ではないか」と述べ、高い基準を求める支払側委員に理解を求めた。

 厚労省は7月3日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第591回会合を開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「医療DXの推進に係る診療報酬上の評価について(ヒアリング結果概要等)」と題する資料を提示。ヒアリング結果を踏まえたマイナ保険証の利用上の課題などを紹介した上で、①医療DX推進体制整備加算、②医療情報取得加算──の2項目を中心に意見を聴いた。
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論点P7_医療DX4

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最低限をどこまで上げるか

 2つの論点のうち、①については支払側から「高い基準を設定すべき」との意見があった一方、診療側から「高い水準にすることには断固反対」との意見があった。

 ②については、支払側から「廃止していく方向に進んでいくもの」、「見直しの方向で検討すべき」などの意見があった。これに対し、診療側から「加算の廃止はあり得ない」などの意見があった。

 池端副会長は「平均値ではなく、最低限をどこまで上げるかが要件を考える際の基準になるのではないか」と指摘した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

【池端幸彦副会長】
 診療側の委員がおっしゃったことと重なるかもしれないが、意見を申し上げる。今回のヒアリング結果からもわかるように、正確な情報を把握されていない方も多い。誤解もある。食わず嫌いのところもあるように思う。まさに今は、新しいことに挑戦するための生みの苦しみで、いかに裾野を広げていくかが大事な時期ではないかという気がしている。 
 そういう意味で言えば、例えば、3ページ(ヒアリング結果)。マイナ保険証の利用が進みにくい事例について、「患者の中にはそもそもマイナ保険証の利用登録をしていない人も多い」との意見が紹介されている。そこで質問だが、マイナ保険証の利用登録について、私の理解では、マイナカードを持っていて顔認証付きカードリーダーがあれば、そこで紐付けもできるはずだと思う。この理解でよろしいか、後ほど回答をいただきたい。 
 もし、そうであれば、マイナ保険証を持ってなくても、マイナカードさえ窓口に持ってくれば、そこで紐付けできるはずだと思う。もし私の理解がそれで正しければ、かなり大きな誤解がヒアリングの中でも聞こえてくるということ。まだまだ情報不足ということがあると思う。先ほど、長島委員もおっしゃったように日本医師会としても、また厚生労働省としても、あるいは保険者側からも、どんどん新しい情報をもっと伝えていくべきではないかと思う。
 その上で、医療DX推進体制整備加算の実績要件をどのように設定するか。手前味噌で恐縮だが、都道府県別(医科)で福井県がトップになっている。ただ、トップといっても10.95%。なぜトップになったかと言うと、おそらく福井県は非常に小さい県で、診療所が800から900ぐらいしかない。県医師会では、2年前から全医療機関に声をかけて、マイナ端末を置かないという医療機関には全てヒアリングした。そして、早めに補助金をいただいて端末を置くことができた。それから、毎月の理事会のたびに、マイナ保険証の利用促進を呼び掛けた。これほど言い続けても、せいぜい10%程度なので、大きな都道府県で利用率を大幅に向上させるのは非常に難しいと思う。つまり、マイナ保険証の利用率には地域差がある。北陸などで利用率が高いのは、小さい県であるために指示命令系統が行き渡りやすいからではないか。
 高い水準の要件を設定すると、診療側の皆さんがおっしゃったように脱落してしまうと思う。ちょっと頑張れば手が届くところで、しかも、裾野を広げるためには平均値ではなくて、最低限をどこまで上げるかが要件を考えるときの基準になるのではないか。裾野を広げる必要性を現場の感覚として感じているので、その辺もご留意いただきながら実績要件をご検討いただきたい。

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【厚労省担当者】
 池端委員のご認識のとおり。窓口に設置されている顔認証付きカードリーダーで、マイナンバーカードの健康保険証としての利用登録の手続きを簡便に行っていただくことができる。

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