「特定看護師の病棟配置は大きな意味を持つ」 ── 次期改定に向け、井川常任理事

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入院医療等の調査・評価分科会_2020年9月10日(TKP新橋カンファレンスセンター新館15階)

 日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は9月10日、令和4年度改定に向けて入院医療に関する調査案を審議した厚生労働省の会議で、特定看護師の配置が令和2年度改定で評価されたことに言及し、「働き方改革を推進する上で特定看護師の病棟配置は非常に大きな意味を持つ」と次期改定での評価に期待を込めた。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和2年度第1回会合をオンライン形式で開催した。

 同分科会の開催は、令和2年度改定に関する報告書をまとめた昨年10月以来、約1年ぶり。今回、4人の委員が交代し、これまで同分科会の委員を務めていた池端幸彦副会長に代わり井川常任理事が新委員に就任し、この日が最初の参加となった。

 井川常任理事は「浅学ではあるが、一生懸命、努めたい。ご指導のほど、よろしくお願い申し上げる」とあいさつした。

 今回の議題は「令和2年度入院医療等の調査について」。令和2年度と3年度に実施する調査案が厚労省から示され、これについて各委員が意見を述べた。
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コロナの影響、「切り分けられないのでは」

 質疑では、調査案について複数の委員から「新型コロナウイルス感染症の影響かどうか、切り分けられないのではないか」との声が上がった。

 厚労省の担当者は「新型コロナウイルス感染症に対応している医療機関であるとか、例えば、コロナの患者数が多い都道府県であるか否かについて調査票上で分別できるようにして、あとの分析に反映できるように調査票の原案を練りたい」と理解を求めた。

 その上で、今後の検討については「調査票の原案を確認いただいて次回の分科会でご議論いただきたい」と説明した。
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DPC病院、「パンドラの箱」を開けかけた

 質疑ではまた、答申書附帯意見に示された「急性期の医療の標準化」に関する議論の進め方に関する意見もあった。

 厚労省の担当者は、同分科会の下部に位置する2つのワーキンググループとの役割分担を説明し、「急性期の標準化については、DPCワーキンググループで議論される内容も多くあるので、その議論の内容を報告し、それを踏まえて議論を深めていただく」と述べた。

 DPCワーキンググループの班長である山本修一委員(千葉大学副学長)は「前回改定の前に、DPCのワーキンググループで、いわば『パンドラの箱』を開きかけた」と振り返り、「いろんなハレーションを起こす危険性があるので、そこは慎重にやりつつ、しっかり対応すべきと考えている」とコメントした。
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中心静脈栄養、「緊急調査を行った経緯がある」

 質疑で、井川常任理事は「前回改定時に中心静脈栄養が大変な議論になり、日本慢性期医療協会としても緊急調査を行った経緯がある」と切り出し、中心静脈栄養に関するDPCデータ(n数=1,027~1,028)が厚労省から示されたことを振り返った。
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2019年10月16日の入院分科会資料「入─1」P37

                 2019年10月16日の入院分科会資料「入─1」P37
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 その上で、井川常任理事は「DPCの『パンドラの箱』には、われわれの療養病床も入っていると思うが、2021年にはかなりの数の療養病床からもデータが回収できる。そうしたデータを活用した調査をしていただきたい」と述べ、精度の高い調査に期待を寄せた。
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特定看護師の配置効果の分析を

 井川常任理事はまた、特定看護師の配置が前回改定で部分的に評価されたことに言及。「麻酔管理料Ⅱの配置要件に反映されて嬉しく思っている」と謝意を示した上で、「医療従事者の働き方改革を推進する上で特定看護師の病棟配置は非常に大きな意味を持つ」と指摘した。

 その上で井川常任理事は、特定看護師の配置を評価した効果について「そうした分析も、この分科会でやっていただけるのか」と質問した。

 厚労省の担当者は「今、そういったことを見るべきだというご意見を頂いたと把握しているので、それらを見ることができる項目がきちんとあるかどうかを改めて、しっかり確認して、次回の調査票原案を示す時に、それらが入るかどうかも併せてご説明をさせていただきたい」と回答した。

 井川常任理事の発言要旨は以下のとおり。

■ 就任のあいさつ
 本分科会の委員を務めていた日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦が中医協委員を務めるにあたり、池端委員に代わり私がこの分科会の委員を拝命させていただいた。
 本来であれば、初参加でもあるため委員の皆さま方に直接ごあいさつすべきところではあるが、今回はWEBでの初参加となった。
 浅学ではあるが、一生懸命、努めたいと思う。どうぞ、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げる。

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■ 令和2年度調査について
 新型コロナウイルスに関する診療報酬への影響は必ず起きてしまう。ただ、事務局がおっしゃるように粛々と診療報酬改定を進めなければならないという事情もある。そういう意味で言えば、前回の診療報酬改定の内容に関する調査は非常に重要であると思う。
 例えば、われわれ療養病床の観点で言うと、前回改定時には中心静脈栄養が大変な議論になり、日本慢性期医療協会としても緊急調査を行った経緯がある。その成果について、何らかの項目をぜひ検証していただきたいと思う。
 また、「排尿自立指導料」が「排尿自立支援加算」となって、新たに地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟も加算の対象となった。こうした点についても、病棟種別の検証をしっかりと行っていかなければならないと考えている。
 先ほど、山本委員からお話が出たが、DPCの中の「パンドラの箱」には、われわれの療養病床も入っているのではないかと思う。
 データ提出加算の範囲が拡大したことによって、2021年にはかなりの数の療養病床からもデータが回収できる状況になる。そのため、急性期と全く同じようにはできないかもしれないが、是非、そうしたデータを活用した調査をしていただきたいと思っている。
 例えば資料42ページに、前回改定時の審議で使われたグラフ(療養病棟における高カロリー輸液の投与状況)がある。中心静脈栄養の論点を示した時の事務局のスライドであるが、この時、既に1,000以上の医療機関からデータが取り出されている。
 われわれ慢性期の療養病床を有する病院は約3,000しかないので、その約3分の1からDPCデータが取れている。そうすると、2021年ごろには、おそらく2,500ぐらいまで増えるかもしれない。そこまで数字が上がってくれば、かなりのデータになると思っている。ぜひ、こうしたデータをご活用いただきたいと思う。
 ところで、私は現在、日本慢性期医療協会で看護師の特定行為研修に携わっている。日慢協は当初よりこの事業に参加しており、現在全国にいる2,000人余りの修了者のうち約1割の222名を輩出している。
 特定行為研修を修了した看護師の病棟配置によって、医師の年間労働時間が短縮したり、医師の指示回数が有意に減るということは、もう既に示されているのだが、なかなか配置に伴うインセンティブがない状況である。
 こうした中、前回の改定で「麻酔管理料Ⅱ」の配置要件に反映されて、嬉しく思っている。医療従事者の働き方改革を推進する上で、特定行為研修を修了した看護師の病棟配置は非常に大きな意味を持つと思っている。
 こうした配置の効果について、例えば特定行為研修を修了した看護師がどの程度、「麻酔管理料Ⅱ」に参画しているか、それによって麻酔医の業務軽減がどの程度なされたかなどの分析も、この分科会で、行っていただけるのかどうかをお聞きしたいと思う。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 特定行為の研修を終えた看護師の件についてだが、今いただいたご意見をふまえて、それらが見られる項目がきちんとあるのかどうかというところを改めて、われわれのほうでもしっかり確認をして、次回の調査票原案のお示しの時に、それらが入るかどうかというところも併せてご説明をさせていただければと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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