「チーム介護」「チームケア」に重点を ── 介護保険部会で橋本副会長

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2022年5月30日の介護保険部会

 介護保険制度の見直しに向けた検討を進めている厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は在宅医療の充実に関連して意見を述べ、「チーム介護やチームケアに、もう少し重点を置いて考えたほうがいいのではないか」と提案した。

 厚労省は5月30日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)の第94回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本副会長が委員として出席した。

 この日の主なテーマは、前回に引き続き「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」で、今後の医療・介護ニーズの増大に関する追加資料などを示した上で委員の意見を聴いた。

 同部会は今年3月、約1年半ぶりに再開。3月24日の会合では、「介護保険制度をめぐる最近の動向について」と題する資料を踏まえ、各委員が制度全般に関する意見を述べた。続く5月16日会合では、「当面検討を行う論点」が示され、このうち「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」について検討が進められている。
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資料3今後の検討の進め方について(第93回提出資料)_ページ_3

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 前回会合で橋本副会長は「医療と介護の連携強化」について、今回は「在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備」に関連して意見を述べた。

【橋本副会長の発言要旨】
 医療・介護現場の立場から総論的な意見を述べたい。資料にあるように在宅患者数は今後も多くの地域で増加していくことは明らかである。在宅患者には、認知症の人もいるし、ADLが低下したフレイルやサルコペニア、脱水、筋力が低下した人などもいて、そうした方々が多くの地域で今後、増加するということだ。しかし現実には、そういう方々を在宅で家族が介護していくのはもう限界ではないかと思っている。たとえ介護離職が減ったとしても、これらの患者を支えていくことは簡単なことではない。
 病気を抱えながら在宅で暮らす人を支えるためには、どうしたらいいか。現状を見ると、それぞれの職種が別々にアプローチしているところが多いのではないかと思う。現場の感想から言うと、医師や看護師はもちろん、リハビリスタッフ、介護福祉士、管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、専門知識や技術を持ったスタッフがたくさんいるのに、別々にアプローチしているように思う。もちろん、集まって会議をすることはあるが、介護の分野では病院に比べて、まだまだチームでの取り組みが足りないように思う。病院では「チーム医療」と言われてだいぶ進んできた。「チーム介護」や「チームケア」ということに、もう少し重点を置いて考えるのがいいのではないか。
 今後、介護費もだんだん上がってくると思う。予算的な支援がもっともっと欲しいが、今の状況ではなかなか難しい。全く足りていない。マンパワーも不足している。マンパワー不足を改善しようとすると人件費が上がるので予算が足りない。そういう負の循環にならないようにするには、まず患者を良くしなければいけない、効果を出さなければいけない。そのためには、今後は専門知識や技術を持ったスタッフの人たちが1人ひとりバラバラに動くのではなくて、チームでやっていくことも考えていくべきだと思う。それにより、1人ひとりの介護士が施設でも在宅でも、非常に疲弊してしまうことを多少は防げるのではないか。
 「在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備」については、私の理解が違うかもしれないが、在宅にずっといることは、今後は難しくなると思う。施設と在宅を組み合わせて、家の近くの施設に何日間かはいて、そのうち何時間かは自宅に帰れるとか、土日や日中は帰るとか、そういう柔軟な対応をしていくべきである。コロナ禍で鬱になっている人も増えていると思うし、そのフォローもしていかなければいけない。もう少し柔軟に、在宅と施設との間をつなぐことを考えていければいい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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